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公 務 職 場 に お け る パ ワ ー ・ ハ ラ ス メ ン ト 防 止 対 策 検 討 会 報 告 令和2年1月14日 公務職場におけるパワー・ハラスメント 防止対策検討会

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公 務 職 場 に お け る パ ワ ー ・ ハ ラ ス メ ン ト

防 止 対 策 検 討 会 報 告

令和2年1月14日

公務職場におけるパワー・ハラスメント

防止対策検討会

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目 次

Ⅰ はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

Ⅱ 現状と基本的考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

Ⅲ パワー・ハラスメントの概念 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

Ⅳ 職員の責務 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

Ⅴ 未然防止のための勤務体制や職場環境の整備 ・・・8

Ⅵ 研修の実施 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

Ⅶ 各府省庁における相談体制の整備 ・・・・・・・・・・・・・・10

Ⅷ 職員の救済と再発防止 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11

Ⅸ 人事院による苦情処理・職員の救済 ・・・・・・・・・・・・14

Ⅹ おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

(別紙1)

(別紙2)

委員名簿

開催経過

参考資料

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1

Ⅰ はじめに

本検討会は、人事院事務総局職員福祉局長からの依頼に基づき、平成 31 年

3月以降、一般職国家公務員が従事する公務の職場における新たなパワー・ハ

ラスメント防止対策について幅広く検討を行ってきた。

この間、民間労働法制においては、令和元年5月に、パワー・ハラスメント

防止対策の法制化が盛り込まれた女性活躍推進法等改正案が成立し、労働施

策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する

法律(昭和 41 年法律第 132 号。以下「労働施策総合推進法」という。)におい

て、事業主に対しパワー・ハラスメント防止のための雇用管理上の措置を講じ

ることが義務付けられ、令和2年6月から施行されることとなった。これを受

けて、令和2年1月には、事業主が適切かつ有効な実施を図るために必要な事

項を定めた「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因す

る問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(以下「民間指針」

という。)が告示される予定である。

また、令和元年6月には、国際労働機関(ILO)において、仕事の世界に

おける暴力及びハラスメントに関する条約が採択された。

本検討会においては、上記民間労働法制の検討状況や措置内容等も踏まえ

ながら、複数の省庁及び職員団体からヒアリングを行い当事者の問題意識も

把握した上で、これまでの公務の取組や公務の特殊性を考慮しつつパワー・ハ

ラスメントの防止対策について検討を重ねてきたところであり、その結果を

以下のように取りまとめる。

Ⅱ 現状と基本的考え方

1 公務におけるパワー・ハラスメントをめぐる現状

人事院に寄せられる一般職国家公務員(以下「職員」という。)からの苦

情相談(人事院規則 13―5(職員からの苦情相談)に定める職員からの勤

務条件その他の人事管理に関する苦情の申出及び相談をいう。以下同じ。)

の事案数を見ると、パワー・ハラスメントを理由とする相談が、平成 25 年

度以降一貫して増加し、平成 30 年度においては、979 事案中 230 事案とな

っており、理由の中で最も多くを占めている。

また、人事院が本府省に勤務する行政職俸給表(一)が適用される 30 代

職員を対象として平成 29 年度に実施した意識調査の結果によると、2割を

超える職員が過去数年間で上司からパワー・ハラスメントと感じる言動を受

けたことがあると回答している。

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一方で、上記調査と同時に実施した、同俸給表が適用される本府省課長級

職員を対象とした意識調査の結果によると、4割を超える課長級職員が過去

数年間において部下に指導すべき場面で指導をちゅうちょしたことがある

と回答しており、その理由を見ると、かえってやる気をなくす不安、人間関

係に悪影響を及ぼす不安、ハラスメントと受け止められる不安など、全体と

して部下の受け止めを気にしてちゅうちょしたとする回答が多くなってい

る。また、30 代職員が自身の部下に行う指導についても、おおむね同様の結

果となっている。

本検討会が行った職員団体からのヒアリングにおいても、職員団体による

調査の結果として、役職段階にかかわりなくパワー・ハラスメントに関する

問題が生じていることや、逆に、パワー・ハラスメントを恐れる余り管理職

が部下を指導すべき場面でも指導できていないとの指摘について報告され

たところである。

このように、公務においてもパワー・ハラスメントに関する様々な問題が

生じている現状にある。

2 パワー・ハラスメントの防止に当たっての基本的考え方

パワー・ハラスメントは、その言動を受ける職員に精神的又は身体的苦痛

を与え、職員の人格や尊厳を害するのみならず、当該言動を見聞きしている

周囲の職員にも精神的苦痛を与え、これら職員の勤務環境を害するものであ

る。したがって、パワー・ハラスメントは、人権に関わるものとして、職員

の利益の保護の観点から、防止されなければならない。

さらに、公務の職場にこのようなパワー・ハラスメントがあることが原因

で有為な人材が集まらず、また、指導をちゅうちょして人材の育成が十分に

できなければ、国民に質の高い行政サービスを持続的に提供することはでき

ない。公務の職場は国民に行政サービスを提供するために運営されているこ

とからすれば、より一層、そこで勤務する職員がその能力を最大限に発揮で

きる職場であることが期待される。その意味で、公務の職場は、パワー・ハ

ラスメントの防止が十分に図られる必要があるだけでなく、パワー・ハラス

メントの防止について、模範となる職場であるべきである。

しかしながら、これまでもパワー・ハラスメントの防止に関しては、人事

院により啓発資料の配布や講演会の実施などの取組はなされてきたものの、

前記1からも分かるとおり、更なる取組が必要であるというべき状況にある。

このような状況に対処するために、本検討会としては、パワー・ハラスメン

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ト防止対策として、各府省庁の長や職員の責務等を明確に規定するなど、法

令による新たな実効的な枠組みを設けるべきとの結論に達したところであ

る。すなわち、民間事業主のパワー・ハラスメント防止対策については法律

上の規定が設けられたこと、セクシュアル・ハラスメントの防止については

人事院規則 10―10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)を制定している

ことに鑑みると、公務におけるパワー・ハラスメントの防止についても、新

たな人事院規則を制定すべきものと考えられる。

この点、民間労働法制では、労働施策総合推進法に基づき厚生労働大臣が

民間指針を定めることとなっている。民間指針では、事業主が講ずべき措置

の内容として、「事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発」、「相談に応

じ、適切に対応するために必要な体制の整備」、「パワーハラスメントに係る

事後の迅速かつ適切な対応」及びこれらの措置と併せて講ずべき措置につい

て定めている。

一方、公務におけるパワー・ハラスメント防止対策としては、人事院規則

において、公務全体の方針としてパワー・ハラスメントを行ってはならない

ことを規定するとともに、研修その他の方法により周知・啓発すること、相

談体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応(職員の救済と再発防止)など、

民間の事業主に相当する各府省庁の長及び専門機関・第三者機関として人事

院が措置すべき事項等を規定すべきものと考えられる。人事院規則において

規定されるべき点や、その他関連して取り組むべき事項の具体的内容は、以

下のとおりである。

Ⅲ パワー・ハラスメントの概念

1 総論

民間指針では、職場のパワー・ハラスメントは「職場において行われる①

優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超

えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの」と定義されている。

公務についてもパワー・ハラスメントが国家公務員の勤務に関わる問題で

あることを踏まえれば、民間労働法制の考え方も参考としながら公務におけ

るパワー・ハラスメントの概念を検討すべきである。パワー・ハラスメント

は、当該言動を受けた職員の人格や尊厳を害するのみならず、職員の心身の

健康を害し、パワー・ハラスメントに耐えきれずに職員が休職・退職せざる

を得なくなることもあり、さらには命に関わる重大な事態をもたらすことも

あることも考慮しなければならない。さらに、当該言動を直接に受けた職員

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のみならず、同じ職場で働く者の環境を害する問題であることを認識すべき

である。

本検討会としては、パワー・ハラスメント問題の重要性に鑑み、パワー・

ハラスメントの予防を重視し、かつ、職員にパワー・ハラスメント防止の責

務を規範として課すことを念頭に、公務においては、「職務に関する優越的

な関係を背景として行われる、職員に精神的又は身体的苦痛を与え、職員の

人格や尊厳を害する、あるいは、職員の勤務環境を害することとなるような、

業務上必要かつ相当な範囲を超える言動」をパワー・ハラスメントと捉え、

その旨を人事院規則において定めるべきではないかとの結論に至った。詳細

は以下のとおりである。

2 「職務に関する優越的な関係」について

「職務に関する優越的な関係を背景として行われる」言動とは、当該言動

を受ける職員が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が

高い関係を背景として行われるものをいい、例えば、以下のもの等が含まれ

る。

・ 職務上の地位が上位の職員による言動

・ 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や

豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行

を行うことが困難な状況下でなされるもの

・ 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶すること

が困難であるもの

・ 他府省庁の職員による言動で、当該言動を行う職員の所属部局の権限

(査定、審査、監査、承認等)の関係で、当該職員の了解を得なければ業

務の円滑な遂行を行うことが困難な状況下でなされるもの

・ 職員が担当する行政サービスの利用者等による言動で、当該行政サービ

スをめぐるそれまでの経緯やその場の状況により、その対応を打ち切りづ

らい中でなされるもの

なお、このように、パワー・ハラスメントは、行為者と受け手の関係性に

着目した概念であり、言動が行われる場所や時間は問わないものである。

3 「職員に精神的又は身体的苦痛を与え、職員の人格や尊厳を害する、ある

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いは、職員の勤務環境を害すること」について

その言動を直接に向けられた職員に精神的又は身体的苦痛を与え、その

人格や尊厳を害する言動は、パワー・ハラスメントに該当する。これは、社

会一般においてもあってはならない言動と判断されるものであり、個別の

職場の風土によって許容されるものではなく、懲戒処分に付され得るもの

である。加えて、職員に精神的又は身体的苦痛を与える言動は、当該職員の

能力発揮に悪影響を及ぼすのみならず、職員の勤務環境を害する言動でも

あり、パワー・ハラスメントに該当する。

4 「業務上必要かつ相当な範囲」について

「業務上必要かつ相当な範囲を超える」言動とは、社会通念に照らし、当

該言動が明らかに業務上必要性がない又はその態様が相当でないものをい

い、例えば、以下のもの等が含まれる。

・ 業務上明らかに必要のない言動

・ 業務の目的を大きく逸脱した言動

・ 業務の目的を達成するための手段として不適当な言動

・ 当該行為の回数・時間、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照

らして許容される範囲を超える言動

・ 行政サービスの利用者等からの言動で、当該言動を受ける職員の所属す

る府省庁の業務の範囲や程度を明らかに超える要求をするもの

「業務上必要かつ相当な範囲を超える」言動であるか否かは、個々の具体

的状況(言動の目的、当該言動を受けた職員の問題行動の有無や内容・程度

を含む当該言動が行われた経緯や状況、業務の内容・性質、当該言動の態様・

頻度・継続性、職員の属性や心身の状況、行為者との関係性等)を踏まえて

総合的に判断されるべきものである。例えば、一瞬のちゅうちょが人命に関

わる場面では、厳しい指示・指導を行うことはパワー・ハラスメントには当

たらない場合もあり得るが、そのような場面が生じることがある職種であ

っても、そのような切迫性がない場面における言動については、その場面に

おける「業務上必要かつ相当な範囲」を超えたかどうかの判断を行うことに

なる。

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Ⅳ 職員の責務

1 パワー・ハラスメントの禁止

パワー・ハラスメントを防止するためには、職員一人一人が、パワー・ハ

ラスメントが、職員に精神的又は身体的苦痛を与え、職員の人格や尊厳を害

するもの、あるいは、職員の勤務環境を害するものであることを理解し、互

いの人格を尊重し、自らがパワー・ハラスメントを行わないようにしなけれ

ばならない。

このようなパワー・ハラスメント防止のための職員の責務を明確にするた

め、パワー・ハラスメントを行ってはならないことを職員の責務として人事

院規則上明確にすべきである。

特に、パワー・ハラスメントによって重大な事態が生じるようなことは絶

対にあってはならず、パワー・ハラスメントの態様等によっては国家公務員

法上の懲戒処分に付されることがあることを職員に明示すべきである。この

点、本検討会が行った省庁からのヒアリングにおいて、パワー・ハラスメン

トについて、どのような場合にどのような懲戒処分とするのが適当なのかを

示してほしい旨の要望があった。したがって、態様等によっては懲戒処分に

付されることがあることをより明確に示す上でも、人事院において、代表的

な事例における標準的な懲戒処分の種類を標準例として掲げた「懲戒処分の

指針」を改正し、パワー・ハラスメントに関する標準例を追記することが適

当である。

パワー・ハラスメントの防止は、職員の利益の保護の問題であるが、職務

上、職員以外の者に接する場合にも、職員がその者にパワー・ハラスメント

に類する言動を行うべきでないことは当然である。この点、民間指針におい

ても、事業主は、雇用する労働者が、労働者以外の者に対する言動について

も必要な注意を払うよう配慮することが望ましい旨が示されている。行政は

国民に対して法律に基づく権限を行使する中で、公務の信用を確保しなけれ

ばならないことから、職員以外の者に対して暴言を吐くようなパワー・ハラ

スメントに類する言動があってはならないことは、より一層徹底されなけれ

ばならない。そのため、職員以外の者に対する言動についても、その態様等

によっては、国家公務員法第 99 条が禁止する信用失墜行為等に該当し、懲

戒処分に付されることがあることを職員に明示すべきである。なお、これに

該当するような言動は被害を受けた者からの苦情等によって判明すること

が多いと考えられることから、そのような苦情等があった場合には、各府省

庁の長は、職員の服務に関わる問題として、適切に対応する必要がある。

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2 立場に応じた責務及び役割

管理又は監督の地位にある職員は、自らが行為者にならないのはもちろん

のこと、後記Ⅶ記載の相談員と同様、自らもパワー・ハラスメントに関する

相談の第一次窓口の役割を担うことを自覚し、パワー・ハラスメントが生じ

た場合には、行為者に言動を止めさせ、被害者を救済するなど、迅速かつ適

切に対処しなければならない。なお、人事評価においては、ハラスメントの

防止は組織を統率し部下を指導するに当たって当然に留意すべき要素であ

るとして、ハラスメントの防止が評価に適切に反映される運用が求められて

いる。したがって、いかに高い業績を残したとしても、その過程において部

下をパワー・ハラスメントにより追い詰めている者については、高く評価さ

れてはならないと考える。

また、職務に関する優越的な関係を背景とするパワー・ハラスメントは、

職務上の上下関係において生じることが多いと考えられるが、公務組織にお

いて、部下を指導し育成することは上司の役割の一つであり、上司は、パワ

ー・ハラスメントになるかもしれないことを理由に指導を怠ることはあって

はならず、自信をもって指導に当たるためにも、パワー・ハラスメントとは

何かを深く理解することが求められる。

一方、管理又は監督の地位にある職員以外の者であっても、職場の構成員

として、パワー・ハラスメントが生じていると認識した場合には、黙認した

りすることなく、パワー・ハラスメントを止めさせるよう努めるべきである。

また、職務遂行に関して指導を受ける側の立場の職員も、パワー・ハラス

メントを招かないよう、コミュニケーションを適切に取り、職員としての自

覚に欠ける言動をしないよう努めるべきである。

3 職員が認識すべき事項

職員が前記1及び2の責務を果たす上では、パワー・ハラスメントを生じ

させないための基本的な心構えや、パワー・ハラスメントになり得る言動、

自分が受けている言動がパワー・ハラスメントではないかと考える場合に望

まれる対応等について、あらかじめ認識しておくべきであり、人事院は、職

員が認識すべき事項について指針を示すべきである。指針に盛り込むことが

考えられる内容を参考として示せば、別紙1のとおりである。

なお、上記のパワー・ハラスメントになり得る言動の例に関連して、民間

指針では、「相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うこと」や

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「労働者の性的指向・性自認」について「当該労働者の了解を得ずに他の労

働者に暴露すること」が挙げられている。一方、パワー・ハラスメントとい

うためには「職務に関する優越的な関係」を背景とする言動である必要があ

るところ、公務においては、従前より、性的指向や性自認に関する偏見に基

づく言動は「性的な言動」に含まれるものとして、この問題をセクシュアル・

ハラスメントとして捉え、対策を講じてきている。「性的指向や性自認に関

する偏見に基づく言動」は関係性にかかわりなく許されないものであること

から、この問題にはセクシュアル・ハラスメントの防止の枠組みで対処する

方が職員の保護に資すると考えられるが、パワー・ハラスメントにも該当す

る場合には、パワー・ハラスメントとしても対応をとることになると考えら

れる。

Ⅴ 未然防止のための勤務体制や職場環境の整備

パワー・ハラスメントは、そうした言動がなされないように未然に防止する

ことが肝要であり、そのためには、後記Ⅵ記載の研修等により、そのための知

識や心構えを修得させることが重要である。あわせて、パワー・ハラスメント

が生じにくい勤務体制や職場環境を整備することも重要である。

特に、業務過多や人員不足は、精神的余裕のなさやコミュニケーション不足

を生み、パワー・ハラスメント発生の温床となるものである。各府省庁の長は、

引き続き業務の合理化等の働き方改革に取り組むとともに、業務量に応じた人

員の確保を早急に進めるべきであり、それが可能となるよう、政府全体として

取組を進める必要がある。

また、ストレスチェックや多面観察の活用などにより、日頃からパワー・ハ

ラスメントの兆候を早期に探知し、初期段階で対応していくことも重要である。

Ⅵ 研修の実施

1 パワー・ハラスメント防止研修の基本的考え方

パワー・ハラスメントを防止する上では、パワー・ハラスメントが、職員

に精神的又は身体的苦痛を与え、職員の人格や尊厳を害するもの、あるいは、

職員の勤務環境を害するものであることを理解させ、その防止に係る認識

を深めるための研修等が重要であり、各府省庁の長は、広く職員に対して研

修等を実施する必要がある。特に、パワー・ハラスメントは、職務に関する

優越的な関係性の下で生じるものであり、幹部職員のパワー・ハラスメント

が部下に連鎖する場合も多いことから、トップマネジメントを行う幹部職

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員が受講する必要性がより一層高いといえる。

また、パワー・ハラスメントについては、幹部職員に限らず、職位によっ

て特に留意すべき内容が異なるため、各府省庁の長は、採用者に加え、昇任

した者を対象とする研修を重点的に実施すべきである。

なお、本提言を踏まえて、今後、採用者と昇任した者に重点を置いて新た

な研修が実施されるとしても、制度導入時には、全ての職員を対象として研

修を実施することが必要と考えられる。

2 パワー・ハラスメント防止研修の内容等

研修の内容としては、第一に、パワー・ハラスメントの概念等の基本的知

識を身に付ける必要がある。その上で、公務には様々な職種・職域があり、

パワー・ハラスメントが生じやすい要因や生じやすい場面、留意すべき点等

については、それぞれの特徴があると考えられることから、共通して修得す

べき知識だけでなく、各職種等における具体的場面を想定した実践的な内容

を提供することが望ましい。

加えて、部下を指導する立場にある職員が、マネジメント能力や部下の性

格・能力を見極めて指導するスキルを身に付けることは、パワー・ハラスメ

ント防止と人材育成を両立していくために重要であり、パワー・ハラスメン

トを生じさせないための指導やコミュニケーションのスキルについて学べ

るようにすることが求められる。また、前記Ⅳ2記載のとおり、管理又は監

督の地位にある職員は、相談の第一次窓口の役割を担うことから、相談対応

の基本を身に付けることも求められる。

3 人事院の役割

職員一人一人に対する研修の実施は、各府省庁の長が行うものであるが、

人事院は、各府省庁において効果的な研修が実施されるよう、研修の方法に

関する人事院の専門的知見を活用して、研修リソースを提供したり、各府省

庁において研修に当たる職員を対象に研修の実施・指導方法等に関する研

修を実施したりするなど、各府省庁を支援すべきである。また、ハラスメン

トの防止は、国民に公務の能率的運営を保障することの基盤の一つとして

職員が全体の奉仕者として自覚すべきものでもあることから、人事院が既

に実施している研修のカリキュラムにパワー・ハラスメントの防止に資す

る内容を取り入れることも考えられる。

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Ⅶ 各府省庁における相談体制の整備

1 基本的考え方

パワー・ハラスメントについては、問題が深刻化する前に職員が相談でき

るよう、各府省庁の長は、相談体制を整備すべきである。具体的には、既に

制度化され各府省庁において整備されているセクシュアル・ハラスメントの

相談体制と同様に、本省及び管区機関においては複数の相談員を置くこと、

少なくとも1名は課の長に指導できる地位にあるものを置くこと、相談者の

希望する性の相談員が同席できるような体制整備に努めること、他のハラス

メントも含めて一元的に相談を受けることができるような体制整備に努め

ることが適当であると考えられる。

2 相談員の役割と課題

パワー・ハラスメントは業務上の指導の際の言動から生じることが多いも

のであることから、パワー・ハラスメントの相談に応じる際には、業務上必

要な指導なのか、必要かつ相当な範囲を超えたパワー・ハラスメントなのか

の見極めが必要となる。特に業務上の指導の必要性・相当性を超えたか否か

の判断には、業務の内容やマネジメントについての理解に加えて丁寧な事実

確認が必要であり、パワー・ハラスメントに該当するかどうかの判断はセク

シュアル・ハラスメント以上に難しく、相談員の専門性の向上や相談員が適

切に対応できる体制整備が重要な課題となる。

そのため、パワー・ハラスメント相談員は、第一次窓口としてまずは相談

者からの相談を聴くという役割を担いつつ、相談者以外の者から事実を確認

する必要がある事案においては、相談者の意向に応じて、人事当局に案件を

つないだり、必要に応じて人事当局と共に問題解決に当たることを基本にす

べきと考えられる。

その上で、相談員を支援するため、相談対応や必要な指導とパワー・ハラ

スメントを見極めるスキルを向上させる研修等に参加させることが有益と

考えられる。また、各府省庁の実情に応じて、相談員としての対応について

相談できる外部アドバイザーを活用することも一案と考えられる。

なお、既に各府省庁において配置されているセクシュアル・ハラスメント

相談員の多くは兼任であり、かつ、人事異動により2、3年で相談員が交代

することが多いところ、パワー・ハラスメント相談員についても、公務組織

の実情を踏まえれば同様の状況になると考えられる。このことを前提とする

と、個々の相談員の専門性向上には限界もあるため、第一次窓口である相談

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員から事案を受け継いだり、相談員と連携して対応したりする立場にある人

事当局の専門性を組織的に向上させる観点から、人事当局における対応の知

見の蓄積や人員増を含めた体制の強化がより重要になると考えられる。

3 相談員が留意すべき事項

パワー・ハラスメントに関して悩みを有する職員が安心して相談員に相

談できるためには、相談員が、知り得た秘密を厳守するのはもちろんのこと、

適切に対応するための苦情相談の事務の進め方をあらかじめ理解しておく

ことが求められる。そのため、人事院は、相談員が苦情相談に対応するに当

たり留意すべき事項について指針を示すべきである。指針に盛り込むこと

が考えられる内容を参考として示せば、別紙2のとおりである。

Ⅷ 職員の救済と再発防止

1 各府省庁における基本的対応

職員からパワー・ハラスメントに関する相談があった場合には、まずは相

談者の話を丁寧に聴くことが肝要である。相談者が精神的又は身体的苦痛を

訴えており、明らかにパワー・ハラスメントに該当すると思料される事案に

おいては、行為者や当事者以外の者からのヒアリングを実施して事実確認を

迅速かつ適切に行う必要がある。その結果、パワー・ハラスメントが生じて

いると判断した場合には、当該職員を救済する適切な措置を迅速にとり、行

為者に対しては、再発防止の指導を行うとともに、言動の態様に応じて懲戒

処分等の必要な対応を行う。

一方、相談者から相談される事案の中には、その内容が事実であるとして

もパワー・ハラスメントに該当するかどうか判断が難しい事案もあると考え

られる。そのような事案においては、ハラスメント該当性を判断することに

拘泥するのではなく、相談者がハラスメントを受けたと認識している事態の

解消を目指した対応を行うことが望ましい。例えば、相談者と行為者の間の

コミュニケーションや認識のズレが原因である場合には、相談があった事実

を行為者に知らせ注意すれば、行為者が行動を改め、問題が解消されること

も少なくない。相談者自身の行動に問題があったなど、行為者から反論があ

る場合にも、過去の事実関係を厳格に確認し、いずれの言い分が正しいのか

を判定するという態度ではなく、相談者及び行為者それぞれの主張を聴いて、

双方の認識のギャップを埋めつつ、相談者がハラスメントと認識する事態を

将来に向けて解消するために、当事者双方の採るべき対応について確認する

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12

等の対応が考えられる。こうした当事者間の認識のズレを埋めつつ、将来に

向けて採るべき方策について当事者双方が共通認識に到達することが困難

な場合には、当事者以外の者からのヒアリングを実施するなど、段階的に対

応を進めることが望ましい。このような対応の過程で、パワー・ハラスメン

トが生じていると判断した場合には、上記同様、相談者を救済する適切な措

置を迅速にとり、行為者に対して必要な対応を行わねばならない。

また、いずれのケースにおいても、行為者から事実を確認する際には、公

平かつ丁寧に聴取することが必要である。

以上のような枠組みを実効的なものとするための前提として、各府省庁の

長は、職員がパワー・ハラスメントに関して相談したことや調査に協力した

こと等を理由に不利益(勤務条件に関する不利益のほか、誹謗ひ ぼ う

・中傷を受け

ることなどの不利益を含む。)を受けることがないようにしなければならず、

また、不利益を受けないことを職員に周知する必要がある。

なお、パワー・ハラスメントは、ハラスメント該当性の判断が困難なもの

も多く、公務能率の維持・向上のため勤務環境をより良くする観点からは、

パワー・ハラスメントと断定できるものに限定することなく、幅広く対応し

ていく必要がある。その上で、各府省庁において、職員の保護・育成、円滑

な職務遂行等の観点から、職場の実情に応じて対応を重ねながら、パワー・

ハラスメントの範囲についての各職場間での認識の共有を図っていくこと

も有効と考えられる。

2 行為者の所属に応じた対応

⑴ 公務の場合、職員を守るためだけではなく、職員がその能力を十分に発

揮できる勤務環境を保持することによって国民に質の高い行政サービス

を提供するためにも、パワー・ハラスメントを防止する必要性が認められ

るものである。

公務におけるパワー・ハラスメントは、同一府省庁の職員間で生じるも

のが多いと考えられるが、職務によっては、他府省庁の職員や行政サービ

スの相手方その他の職員以外の者との関係において問題が生じる場合も

あると考えられる。職員の人格や尊厳、勤務環境を害する言動から職員を

守る必要があることは、行為者が職員でないことによって変わるもので

はない。この点について、民間労働法制においては、労働施策総合推進法

第 30 条の2により事業主に措置義務が課せられているのは、当該事業主

の従業員が当該事業主の従業員等からパワー・ハラスメントを受けた場

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合であり、他の事業主の従業員等から受ける言動に対する措置義務は課

せられていない。しかし、民間指針においては、他の事業主が雇用する労

働者や顧客等からの著しい迷惑行為についても相談体制を整備すること

などが、事業主が行うことが望ましい取組として示されている。

公務においては、職員の人格や尊厳、勤務環境を害する言動は、当該言

動の行為者の所属にかかわらずパワー・ハラスメントと捉えた上で、各府

省庁の長には、いずれの場合も被害者を救済する責務を課すべきである。

⑵ 具体的には、行為者がパワー・ハラスメントに関する相談を行った者

と同一府省庁に所属する職員である場合は、前記1に沿って対応するこ

とになる。

行為者が他府省庁に所属する職員である場合は、相談者が所属する府

省庁の長は、当該行為者が所属する他府省庁の長に連絡して、行為者であ

る職員に対する調査を要請し、共同して確認を進めていくことになる。そ

の結果、パワー・ハラスメントが生じていると判明した場合には、その態

様に応じて、相談者の所属府省庁の長は、当該他府省庁の長に対して、そ

の行為者である職員に対する指導や懲戒処分等の対応を求めるとともに、

自らは相談者を救済するための適切な措置をとることが必要になる。国

家公務員法制では、他府省庁の職員も国家公務員法の適用を受ける一般

職国家公務員であり、相談者の所属府省庁の長には、行為者が所属する他

府省庁の長と連携して、相談者の救済、行為者への対応に当たらせること

が適当と考えられる。

一方、行為者が職員以外の者である場合については、各府省庁の長は当

該者に直接指導等を行うことができる権限を当然に有するものではない

ことから、各府省庁の長に対して職員でない行為者やその所属組織等に

対して働きかける法的責務を直ちに課すことができるわけではない。し

かし、本検討会が行った省庁及び職員団体からのヒアリングにおいても、

長時間にわたって不合理なクレームを言われ続けて拘束される、行政サ

ービスの相手方から暴行や暴言を受ける等の事例が報告されており、深

刻な事例も発生していると認められる。現実にこのような問題が生じて

いることを前提に、職員以外の者による言動からも職員を守るべき責務

を課すべきであり、各府省庁の長は、当該行為者への応対の負担が担当す

る職員個人に偏らないよう、組織全体として対応することが求められる。

例えば、上司等が同席したり、代わりに対応したりするほか、暴行や暴言

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については組織として法的措置も含めて毅き

然として対応する、応じる必

要のない過度な要求、理不尽な主張を長時間にわたり執拗よう

に繰り返すよ

うな苦情については対応を打ち切るといった措置を組織として行うこと

も検討されるべきである。

Ⅸ 人事院による苦情処理・職員の救済

1 基本的考え方

人事院においては、職員からの苦情処理・職員の救済について、既に苦情

相談(人事院が、相談内容に応じて、制度説明・アドバイスを行ったり、各

府省庁に事実確認を求めるなどして問題の解決を図る手続)及び行政措置要

求をはじめとする公平審査(職員から要求や申立てがあった場合、人事院が

調査等を実施し、判定等の形で判断を示し、必要な場合には、当該判定等に

より職員を救済し又は各府省庁に改善措置の実行を求める手続)が整備され

ている。パワー・ハラスメントに関しての職員の救済は、第一義的には、各

府省庁における対応が基本であるが、パワー・ハラスメントについては、所

属府省庁の上司、相談員、人事当局に相談しにくい場合があり、また、これ

らへの相談では解決しない場合等に対応するためにも、引き続き人事院が適

切に苦情処理・救済機能を果たす必要がある。

その際、問題の迅速な解決という観点からは、手続にのっとって人事院が

慎重に調査を進めていく公平審査よりも、まずは苦情相談を活用することが

考えられるため、これまで以上に、職員が人事院に苦情相談をしやすくなる

ような工夫が求められる。

2 各府省庁と人事院の役割

パワー・ハラスメントは職務遂行との関連で生じるものが多く、そうした

事案の調査については、職務遂行の実情を理解していなければ困難である。

そのため、人事院が受けた苦情相談の解決に当たっては、まずは人事院の依

頼に基づき職務遂行の実情を把握している各府省庁において必要な事実確

認を行い、報告を受けた人事院は事案の解決の必要に応じて各府省庁に追加

の対応を求めるなど、両者がその役割に応じて適切に対応すべきである。

この点、本検討会が行った職員団体からのヒアリングでは、職員が各府省

庁から苦情を取り下げるように説き伏せられることのないよう人事院が最

初から介入してほしいという意見があった一方、現場解決を基本として人事

院には総括的に関わってほしいという意見があった。人事院が介在する形で

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15

各府省庁が事実確認を行うことにより、両面の効果が期待できると考えられ

る。

そして、以上のような人事院への苦情相談の枠組みを通した各府省庁の対

応では相談者が納得できる解決に至らない場合には、人事院から相談者に対

し、人事院が主体的に調査・判断を行う公平審査について積極的に教示すべ

きと考えられる。

Ⅹ おわりに

以上のように、本検討会報告は、パワー・ハラスメントを未然に防止し、パ

ワー・ハラスメントが生じている場合には、そうした事態を迅速かつ適切に解

消するために、各府省庁の長や職員がどのような責務を負うべきであり、公務

においてどのような対策をとる必要があるのかを取りまとめたものである。

パワー・ハラスメントについては、従前から、業務上必要な指導との線引き

が難しい等の課題が指摘されてきたが、公務職場は、国民のために存在する職

場であるからこそ、より一層、ハラスメントがなく、そこに勤務する職員がそ

の能力を最大限発揮できる勤務環境でなければならず、かつ、業務上必要な指

導が適切になされることにより、職員の育成が継続的に図られる必要がある。

人事院においては、本提言を踏まえ、パワー・ハラスメント防止のための枠

組みを適切に設けるとともに、各府省庁の取組について継続的に助言、指導し

ていくことを期待したい。その他関係各機関においても、これまで以上に、積

極的にパワー・ハラスメント防止対策に取り組んでいただきたい。そして、何

より全ての職員一人一人が、「パワー・ハラスメントを行ってはならない」と

いう責務を深く自覚し、より良い勤務環境の実現に貢献するとともに、職務上

職員以外の者に接する際にも、全体の奉仕者にふさわしい言動を行うよう強く

望むものである。

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1

(別紙1)

パワー・ハラスメントをなくすために職員が認識すべき事項についての指針

について盛り込むことが考えられる内容

第1 パワー・ハラスメントを生じさせず円滑な業務運営を行うために職員

が認識すべき事項

1 基本的な心構え

職員は、パワー・ハラスメントに関する次の事項について十分認識しな

ければならない。

一 パワー・ハラスメントは、職員に精神的又は身体的苦痛を与え、職

員の人格や尊厳を害するもの、あるいは、職員の勤務環境を害するも

のであることを理解し、互いの人格を尊重し、パワー・ハラスメント

を行ってはならないこと。

二 業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導につい

てはパワー・ハラスメントに該当しないこと。一方、業務指示等の内容

が適切であっても、その手段や態様等が適切でないものは、パワー・ハ

ラスメントになり得ること。

三 部下の指導・育成は、上司の役割であること。また、指導に当たって

は、相手の性格や能力を充分見極めた上で行うことが求められるととも

に、言動の受け止め方は世代や個人によって異なる可能性があることに

留意する必要があること。

四 自らの仕事への取組や日頃の振る舞いを顧みながら、他の職員と能

動的にコミュニケーションをとること。

五 職員以外の者に対してもパワー・ハラスメントに類する言動を行っ

てはならないこと。

2 パワー・ハラスメントになり得る言動

パワー・ハラスメントになり得る言動として、例えば、次のようなもの

がある。

一 暴力・傷害

ア 書類で頭を叩く。

イ 部下を殴ったり、蹴ったりする。

ウ 相手に物を投げつける。

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2

二 暴言・名誉毀損・侮辱

ア 人格を否定するような罵詈り

雑言を浴びせる。

イ 他の職員の前で無能なやつだと言ったり、土下座をさせたりする。

ウ 相手を罵倒・侮辱するような内容の電子メール等を複数の職員

宛てに送信する。

三 執拗よう

な非難

ア 改善点を具体的に指示することなく、何日間にもわたって繰り返

し文書の書き直しを命じる。

イ 長時間厳しく叱責し続ける。

四 威圧的な行為

ア 部下達の前で、書類を何度も激しく机に叩き付ける。

イ 自分の意に沿った発言をするまで怒鳴り続けたり、自分のミスを

有無を言わさず部下に責任転嫁したりする。

五 実現不可能・無駄な業務の強要

ア これまで分担して行ってきた大量の業務を未経験の部下に全部押

しつけ、期限内にすべて処理するよう厳命する。

イ 緊急性がないにもかかわらず、毎週のように土曜日や日曜日に出

勤することを命じる。

ウ 部下に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせ

る。

六 仕事を与えない・隔離・仲間外し・無視

ア 気に入らない部下に仕事をさせない。

イ 気に入らない部下を無視し、会議にも参加させない。

ウ 課員全員に送付する業務連絡のメールを特定の職員にだけ送付し

ない。

エ 意に沿わない職員を他の職員から隔離する。

七 個の侵害

ア 個人に委ねられるべき私生活に関する事柄について、仕事上の不

利益を示唆して干渉する。

イ 他人に知られたくない職員本人や家族の個人情報を言いふらす。

(注)上記の言動に該当しなければパワー・ハラスメントとならないという

趣旨に理解されてはならない。

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3

3 懲戒処分

パワー・ハラスメントは懲戒処分に付されることがある。職員以外の者

に対し、パワー・ハラスメントに類する言動を行ったときも、信用失墜行

為、国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行などに該当して、懲戒処

分に付されることがある。

第2 職場の構成員として良好な勤務環境を確保するために認識すべき事項

勤務環境はその構成員である職員の協力の下に形成される部分が大きい

ことから、パワー・ハラスメントがなされることを防ぐため、職員は、次の

事項について、積極的に意を用いるように努めなければならない。

1 パワー・ハラスメントについて問題提起する職員をいわゆるトラブル

メーカーと見て真摯に取り上げないこと、あるいはパワー・ハラスメント

に関する問題を当事者間の個人的な問題として片付けることがあっては

ならないこと。

職場におけるミーティングを活用することなどにより解決することが

できる問題については、問題提起を契機として、良好な勤務環境の確保の

ために皆で取り組むことを日頃から心掛けることが必要である。

2 職場からパワー・ハラスメントに関する問題の加害者や被害者を出さ

ないようにするために、周囲に対する気配りをし、必要な行動をとること。

具体的には、次の事項について十分留意して必要な行動をとる必要が

ある。

一 パワー・ハラスメントやパワー・ハラスメントに当たるおそれがある

行為が見受けられる場合は、職場の同僚として注意を促すこと。

二 被害を受けていることを見聞きした場合には、声をかけて相談に乗

ること。

3 パワー・ハラスメントを直接に向けられていない者も気持ちよく勤務

できる環境をつくるために、パワー・ハラスメントと思われる状況につい

て上司等に相談するなどの方法をとることをためらわないこと。

第3 自分が受けている言動がパワー・ハラスメントではないかと考える場

合において職員に望まれる事項

職員は、自分が受けている言動がパワー・ハラスメントではないかと考え

る場合には、その被害を深刻にしないために、次の事項について認識してお

くことが望まれる。

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4

1 一人で抱え込まずに、相談窓口や信頼できる人等に相談すること

問題を自分一人で抱え込まずに、職場の同僚や知人等身近な信頼できる

人に相談することが大切である。各職場内において解決することが困難な

場合には、内部又は外部の相談機関に相談する方法を考える。なお、相談

するに当たっては、パワー・ハラスメントであると考えられる言動が行わ

れた日時、内容等について記録しておくことが望ましい。

2 当事者間の認識の相違を解消するためのコミュニケーション

パワー・ハラスメントは、相手に自覚がないことも多く、よかれと思っ

ての言動であることもある。相手に自分の受け止めを伝えたり、相手の真

意を確認したりするなど、話し合い認識の違いを埋めることで事態の深刻

化を防ぎ、解決がもたらされることがあることに留意すべきである。

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1

(別紙2)

パワー・ハラスメントに関する苦情相談に対応するに当たり留意すべき事項

についての指針について盛り込むことが考えられる内容

第1 基本的な心構え

職員からの苦情相談に対応するに当たっては、相談員は次の事項に留意

する必要がある。

1 被害者を含む当事者にとって適切かつ効果的な対応は何かという視

点を常に持つこと。

2 事態を悪化させないために、迅速な対応を心掛けること。

3 関係者のプライバシーや名誉その他の人権を尊重するとともに、知り

得た秘密を厳守すること。

第2 苦情相談の事務の進め方

1 苦情相談を受ける際の相談員の体制等

一 苦情相談を受ける際には、原則として2人の相談員で対応するこ

と。

二 苦情相談を受けるに当たっては、苦情相談を行う職員(以下「相談

者」という。)の希望する性の相談員が同席するよう努めること。

三 相談員は、苦情相談に適切に対応するために、相互に連携し、協

力すること。

四 実際に苦情相談を受けるに当たっては、その内容を相談員以外の者

に見聞きされないよう周りから遮断した場所で行うこと。

2 相談者から事実関係等を聴取するに当たり留意すべき事項

相談者から事実関係等を聴取するに当たっては、次の事項に留意する

必要がある。

一 相談者の求めるものを把握すること。

将来の言動の抑止等、今後も発生が見込まれる言動への対応を求め

るものであるのか、又は喪失した利益の回復、謝罪要求等過去にあっ

た言動に対する対応を求めるものであるのかについて把握する。

二 どの程度の緊急性があるのかについて把握すること。

相談者の心身の状態等に鑑み、苦情相談への対応に当たりどの程度

の緊急性があるのかを把握する。

三 相談者の主張等に真摯に耳を傾け丁寧に話を聴くこと。

特に相談者が被害者の場合、パワー・ハラスメントを受けた心理的

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2

な影響から必ずしも理路整然と話すとは限らない。むしろ脱線するこ

とも十分想定されるが、事実関係を把握することは極めて重要である

ので、忍耐強く聴くよう努める。また、相談員自身の評価を差し挟む

ことはせず、相談者の心情に配慮し、その主張等を丁寧に聴き、相談

者が認識する事実関係を把握することが必要である。

四 事実関係については、次の事項を把握すること。

⑴ 当事者(被害者及び行為者とされる職員)間の関係

⑵ 問題とされる言動が、いつ、どこで、どのように行われたか。

⑶ 相談者は、行為者とされる職員に対してどのような対応をとっ

たか。

⑷ 監督者等に対する相談を行っているか。

なお、これらの事実を確認する場合、相談者が主張する内容につい

ては、当事者のみが知り得るものか、又は他に目撃者はいるのかを把

握する。

五 聴取した事実関係等を相談者に確認すること。

聞き間違えの修正並びに聞き漏らした事項及び言い忘れた事項の

補充ができるので、聴取事項を書面で示したり、復唱するなどして

相談者に確認する。

六 聴取した事実関係等については、必ず記録にしてとっておくととも

に、当該記録を厳重に管理すること。

3 行為者とされる職員からの事実関係等の聴取

一 相談者の相談内容が具体的対応を求めるものであれば、以後は相談

者の了解を確実に得た上で人事当局と連携して対応する。

二 原則として、行為者とされる職員から事実関係等を聴取する必要が

ある。ただし、パワー・ハラスメントが比較的軽微又は行為者に改善

の余地があるもののパワー・ハラスメントとまではいえないようなも

のであり、対応に緊急性はない場合などは、監督者の観察、指導によ

る対応が適当な場合も考えられるので、その都度適切な方法を選択し

て対応する。

三 行為者とされる者から事実関係等を聴取する場合には、行為者とさ

れる者に対して十分な弁明の機会を与える。

四 行為者とされる者から事実関係等を聴取するに当たっては、その主

張に真摯に耳を傾け丁寧に話を聴く、聴取した事実関係等を行為者と

される者に確認するなど、相談者から事実関係等を聴取する際の留意

事項を参考にし、適切に対応する。

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3

4 第三者からの事実関係等の聴取

パワー・ハラスメントについて当事者間で事実関係に関する主張に不

一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合などは、第

三者から事実関係等を聴取することも必要である。

この場合、相談者から事実関係等を聴取する際の留意事項を参考に

し、適切に対応する。

5 相談者に対する説明

苦情相談に関し、具体的にとられた対応については、相談者に説明す

る。

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公務職場におけるパワ-・ハラスメント防止対策検討会 委員名簿

(五十音順・敬称略)

(座長)荒木あ ら き

尚たか

志し

東京大学大学院法学政治学研究科教授

稲いな

尾お

和泉い ず み

株式会社クオレ・シー・キューブ執行役員

(座長代理)鵜う

養かい

幸雄ゆ き お

立命館大学政策科学部教授

金子か ね こ

雅まさ

臣おみ

一般社団法人職場のハラスメント研究所代表理事

神吉か ん き

知ち

郁子か こ

立教大学法学部国際ビジネス法学科准教授

権けん

丈じょう

英子え い こ

亜細亜大学副学長・経済学部教授

柳原やなぎはら

里り

枝子え こ

株式会社ハートセラピー代表取締役

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公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会

開催経過

○ 第1回〔平成31年3月11日(月)15:00~17:00〕

・公務におけるパワハラ防止に関する取組等の現状

・民間における検討状況

・各回で取り上げる論点と各委員の問題意識・意見交換

○ 第2回〔令和元年6月10日(月)13:30~15:30〕

・各府省及び職員団体からのヒアリング

・ヒアリングを踏まえた意見交換

○ 第3回〔令和元年6月26日(水)13:30~15:30〕

・パワハラの定義

・意見交換

○ 第4回〔令和元年7月29日(月)15:00~17:00〕

・研修の在り方

・相談体制

・意見交換

○ 第5回〔令和元年10月8日(火)10:00~12:00〕

・問題発生時の対応方法

・人事評価、ストレスチェックなど関連制度の活用

・職員、相談員が留意すべき事項

・その他関連事項

・意見交換

○ 第6回〔令和元年11月5日(火)10:00~12:00〕

・これまでの議論の総括

・意見交換

○ 第7回〔令和元年12月9日(月)10:00~12:00〕

・検討会報告書案に関する意見交換

○ 第8回〔令和元年12月17日(火)10:00~12:00〕

・検討会報告書案に関する意見交換

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参考資料 目次

1.報道資料 公務職場におけるパワー・ハラスメント

防止対策検討会の開催について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

2.パワー・ハラスメントを理由とする苦情相談事案数

の推移 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

3.平成 29 年度人事院年次報告書 第 1 編 第2部

次世代の行政の中核を担う 30 代職員の育成と公務全体

の活性化【抜粋】 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

4.「パワー・ハラスメント」を起こさないために注意す

べき言動例について(通知)(抄)・・・・・・・・・・・・・・・・・7

5.人事院によるパワー・ハラスメント防止のための取組

・・・・・・・・・・・・・・・・・15

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平成31年3月12日

公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会の開催について

1.開催の趣旨

人事院では、パワー・ハラスメント(以下「パワハラ」という。)の防止のため、これまでも「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」の配付等により周知啓発を図ってきたところです。しかしながら、職員意識調査の結果によると、依然として、上司からパワハラを受けたと感じる職員が一定数存在しており、職員の勤労意欲の向上や心身の健康、良好な勤務環境を実現するために、さらなる防止策を検討する必要があること等から、平成30年8月の給与勧告時報告で、「民間におけるパワハラ対策に関する議論等も注視しつつ、検討会を設けるなどして外部有識者の意見も聴きながら、公務におけるパワハラ対策を検討する」としたところです。民間においてもパワハラ対策が進められており、これらの状況を踏まえ、

公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策について検討を行うため、有識者によって構成する検討会を開催することといたしました。

2.委員

学識経験者7名(別紙)(略)により構成します。

3.スケジュール

第1回検討会を3月11日(月)に開催しました。来年度にかけて検討を行い、報告書を取りまとめる予定としています。第1回の議事概要については、後日、資料とともに人事院ホームページ

に掲載することとしています。

以 上

- 1-

J1804006
テキスト ボックス
参考資料1
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パワー・ハラスメントを理由とする苦情相談事案数の推移

735

783

884

773

680

661

599

706

726

754

823

979

7386

118

111

96

148

125

148

169

181

184

230

050100

150

200

250

300

350

400

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

19年度20年度21年度22年度23年度24年度25年度26年度27年度28年度29年度30年度

全体

パワハラ

(件数・パワハラ)

平成

(件数・全体)

参考資料2

(「国家公務員苦情相談の概要」(人事院月報記事)より作成)

- 2-

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参考資料3

平成 29 年度人事院年次報告書 第1編 第2部

次世代の行政の中核を担う 30 代職員の育成と公務全体の活性化【抜粋】

第2章第2節 30代職員へのアンケート調査等

(5)上司の指導・育成等関係

ウ 上司から受けた厳しい指導等

過去数年間で上司から受けた厳しい指導の中での言動についてみると、約 6 割の 30 代職員が「理不

尽な指示をされた」「大声で叱責された」「能力を否定された」「机を叩くなど感情的な言動をされた」

「人格を否定する発言をされた」「長時間叱責された」のいずれかを挙げている。

役職段階別にみると、役職段階が高いほど、このような言動を受けたと回答する職員の割合が高くな

っている〔図 11 -8〕。

また、これらの言動を受けたとする 30 代職員のうち、それらを「パワー・ハラスメントと感じた」

とする者が 38.3%、「パワー・ハラスメントとまでは言わないが、不満を感じた」とする者が 56.9%と

なっている〔図 11 -9〕。

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一方、管理職員側の意識を課長級職員調査でみると、約 4割の課長級職員が、部下に指導すべき場面

で指導を躊躇したことが「ある」と回答しており〔図 11 -10〕、躊躇した理由として、「ハラスメント

と受け止められないか不安があった」(24.3%)のほか、「部下がかえってやる気をなくす不安があっ

た」(65.9%)、「人間関係に悪影響を及ぼす不安があった」(28.0%)など、全体として部下の受け止め

を気にして指導を躊躇したとする回答が多くなっている〔図 11 -11〕。

30 代職員自身の部下への指導についても、約 4割の 30 代職員が、部下に指導すべき場面で指導を

躊躇したことが「ある」と回答しており〔図 11 -13〕、躊躇した理由としては、「部下がかえってや

る気をなくす不安があった」(60.8%)が最も多く、「人間関係に悪影響を及ぼす不安があった」

(41.3%)も多数となっている。また、それほど多くはないものの「ハラスメントと受け止められな

いか不安があった」(18.2%)と回答した者も一定数いた〔図 11 -14〕。

なお、30代職員に係る部下への指導については、30 代職員の約半数がそもそも部下を有していな

いことにも留意する必要がある〔図 11 -12〕。

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参考資料4

職 職 - 1

平成22年1月8日

各府省人事担当課長 殿

人事院事務総局

職員福祉局職員福祉課長

「パワー・ハラスメント」を起こさないために注意すべき言動例に

ついて(通知)

いわゆる「パワー・ハラスメント」問題については、最近、社会的に関心が高

まっていますが、公務においても、人事院に寄せられている「パワー・ハラスメ

ント」に関する苦情相談の件数が増加している状況にあることから、裁判例や苦

情相談事例等を参考に、別添のとおり「 パワー・ハラスメント」を起こさない「

ために注意すべき言動例」を作成しましたので、職員に周知するとともに、その

防止に努めてください。

以 上

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「パワー・ハラスメント」を起こさないために注意すべき言動例

〔はじめに〕

① 「パワー・ハラスメント」については、法令上の定義はありませんが、一般

に「職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて、継続的に人

格と尊厳を侵害する言動を行い、それを受けた就業者の働く環境を悪化させ、

あるいは雇用について不安を与えること」を指すといわれています。

なお、業務上の指導等ではあるが、その手段や態様等が適切でないものも、

本来の業務の範疇を超えている場合に含まれると考えられます。

② 「 パワー・ハラスメント」を起こさないために注意すべき言動例」において「

は、上記のような事実上の定義や裁判例等を参考に、その言動について6つの

パターンに分類し、それぞれのパターンごとに 「パワー・ハラスメント」に該、

当し得るケース及び「パワー・ハラスメント」を起こさないために上司として

心得るべきポイントを記載しています。

ただし、上司の言動が実際に「パワー・ハラスメント」に該当するかどうか

は、当該言動が継続して行われているものかどうか、当該言動が行われること

となった原因、当該言動が行われた状況等をも踏まえて判断する必要があり、

ここにある言動のすべてが直ちに「パワー・ハラスメント」に該当するとは限

らない点は注意が必要です。

なお、6つに分類したパターンは便宜的に設けたものであり、実際の「パワ

ー・ハラスメント」は、各パターンが重複している場合等もあり得るものと考

えられます。

③ 「パワー・ハラスメント」は、職場内秩序を乱し、各組織の正常な業務運営

の障害となり得るとともに、殊に、上司から部下への不用意な言動によって、

職員の勤労意欲を減退させ、ひいては精神的な障害に陥る職員を発生させる要

因にもなり得るものです。

管理監督者は、この言動例等を参考にしながら 「パワー・ハラスメント」に、

ついて十分問題意識を持つとともに、自ら「パワー・ハラスメント」を起こさ

ないのはもちろんのこと、職場において「パワー・ハラスメント」が起きてい

ないかどうか日常的に注意することが重要です。

また、人事担当部局においても、必要に応じてその防止について注意喚起す

るとともに 「パワー・ハラスメント」に関する職員からの苦情相談について適、

切に処理するなどの対応が必要です。

(別添)

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パターン①

暴言

~人格の否定にならないような叱り方をしていますか?~

【事例1】

上司Aは、部下に対して、間違いをすると 「こんな間違いをするやつ、

は死んでしまえ 「おまえは給料泥棒だ」などと暴言を吐く。部下が謝っ」、

ても許してくれず、むしろ「存在が目障りだ。おまえがいるだけで皆が迷

惑している」など、暴言を吐き続けることもある。

【事例2】

上司Bは、普段からおとなしいある部下の性格を何かにつけて面白おか

しく取り上げ 「君はネクラだ 「もっと明るい顔をしろ」などと言って、 」、

いる。この間もその部下が会議でプレゼンをしたとき、何度か資料の読み

間違いなどをしたことについて、発表の方法等を指導せずに 「君のプレ、

ゼンが下手なのは、暗い性格のせいだ。何とかしろ」などと言った。

-「パワー・ハラスメント」を起こさないためのポイントー

・ 部下に暴言を吐くことは、職場の内外を問わず、懇親会の席などざっ

くばらんな雰囲気の場でも、許されるものではありません。

・ 厳しく叱ることも部下を指導する上で時には必要ですが、その場合も

言葉を選んで、適切に対応することが必要です。

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パターン②

執拗な非難

~部下にうまく助言・指導していますか?~

【事例3】

上司Cは、ある部下の作った資料に誤字があることを見つけたが、その

部下は過去にも誤字等のミスをしたことがあったため 「なぜこのような、

ミスをしたのか。反省文を書くように」と言った。そこで、その部下がミ

スをした理由や今後十分に注意すること等を記載した反省文を作って提出

したところ、Cは 「内容が物足りない。もっと丁寧な反省文を書いて署、

名・押印しろ」などと言って三日間にわたって何度も書き直しを命じ、指

示どおりの反省文を提出させた。

【事例4】

上司Dは些細なミスに対して執拗に非難する。この前も、班内会議で使

う資料にページがついていなかったことについて、資料を作成した部下に

対し 「お前は小学生か 「仕事のやり方が本当に下手だ」などと皆の前、 」、

で起立させたまま、大声で長時間叱責し続けた。

-「パワー・ハラスメント」を起こさないためのポイントー

・ 部下は上司に対して、正面きって反論しづらい立場にあることを理解

し、ミスには、必要な範囲で、具体的かつ的確に指導することに心がけ

ることが必要です。

・ 部下の立場も考えて、できる限り人前で叱らないようにするなどの配

慮も必要です。

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パターン③

威圧的な行為

~セルフコントロールができていますか?~

【事例5】

上司Eは部下の意見が気に入らなかったりすると、しょっちゅう、椅子

を蹴飛ばしたり、書類を投げつけたりする。この間も、部下の目の前で、

分厚いファイルを何度も激しく机に叩き付けていた。職員は皆萎縮して、

仕事の相談ができる雰囲気ではなく、仕事が全然進まない。

【事例6】

上司Fは、職員の業務上の意見に対し、自分の意向と違う時は意に沿っ

た発言をするまで怒鳴り続け、また、自分自身にミスがあると有無を言わ

さず部下に責任を転嫁する。そうした言動が原因で体調を崩した部下が入

院することとなったため、その部下がそれを報告したところ 「おまえの、

日ごろの健康管理が悪いからだ。そんなことで休むな」と怒鳴られてしま

った。

-「パワー・ハラスメント」を起こさないためのポイント-

・ 業務に関する言動であっても、その内容や態様等が威圧的にならない

よう注意してください。

・ 仕事に対する姿勢や日常の振る舞いが「パワー・ハラスメント」の土

壌となることがあります。

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パターン④

実現不可能・無駄な業務の強要

~明らかに無理・無駄な業務を指示していませんか?~

【事例7】

上司Gは、職場に異動してきたばかりの係員の部下に対し、正当な理由

もなく、これまで3名で行ってきた大量の申請書の処理業務を未経験のそ

の部下に全部押しつけ、期限内にすべて処理するよう厳命した。このよう

な状況が続き、申請書の処理が滞留したため、その部下が「私にはもう無

理だ」と訴えると 「おまえに能力がないからだ。期限内に一人で処理し、

ろ」と激しく責め、聞き入れなかった。

【事例8】

上司Hは部下に対して、毎週のように土曜日や日曜日に出勤することを

命じ、自らも出勤し、部下の作った書類のチェックや打ち合わせなどをす

る。そのような勤務はHの係だけであり、仕事の内容も翌週の平日にでき

るようなものなのだが、意見を言うと 「出勤の必要があるかどうかは自、

分が判断する」と言うだけである。

-「パワー・ハラスメント」を起こさないためのポイント-

・ 明らかに実現不可能な業務や自分の趣味による無駄な仕事の強要は、

言うまでもなく許されません。

・ 部下に対し、非常に大きな負担をかける業務などを命じる場合には、

必要に応じ、部下にその理由を説明するなどフォローが必要です。

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パターン⑤

仕事を与えない

~部下の好き嫌いなく仕事を与えていますか?~

【事例9】

上司Iは、ある部下について仕事ができない人間だと決めつけ、何の説

明もなく役職に見合った業務を全く与えず、班内の回覧物も回さない。こ

の間も、その部下が何か仕事を与えてくれるよう相談したら、自分の机に

たまたま置いてあった書類を手に取って「これでもコピーしておけ」と命

じただけであった。

【事例10】

上司Jの職場は残業が多いことから、先月、ある部下が業務改善に関す

る提案を自主的に作成して提出したところ 「要らないことをするな」と、

。 、 、「 」 、突き返された それ以降 Jは あいつとは相性が合わない と言って

その部下に仕事を与えなくなり、本来の仕事すら他の同僚にさせるように

なった。

-「パワー・ハラスメント」を起こさないためのポイント-

・ 部下には差別なくその能力や役職等に見合った仕事を与える必要があ

り、合理的な理由なく仕事を与えないことは許されません。

・ 業務上の意見を言ったことなどを理由に、仕事を与えないなどのペナ

ルティを科すのは権限の濫用に該当します。

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パターン⑥

仕事以外の事柄の強要

~私生活に権限を持ち込んでいませんか?~

【事例11】

、 、上司Kは部下に対して 毎日のように昼休みに弁当を買いに行かせたり

週末には家の掃除をさせたりする。皆嫌がっているのだが、断ると、怒鳴

ったり、仕事上のペナルティをちらつかせるので言いなりになっている。

【事例12】

上司Lは、ある部下が自分の住んでいるマンションよりも良い物件を賃

借していることをねたみ、その部下に対し 「上司より立派なマンション、

に住むとは何事だ」とか「もっと安いところに住まないと地方に異動させ

るぞ」などと言い続けたので、その部下はやむを得ず、別の安い物件に転

居した。

-「パワー・ハラスメント」を起こさないためのポイント-

・ 部下に私事を命じるのは明らかに不適当な命令です。

・ 部下に対して合理的な理由がないのに、仕事以外のことに執拗に干渉

しない態度が必要です。

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参考資料5

人事院によるパワー・ハラスメント防止のための取組

「パワー・ハラスメント」を起こさないために注意すべき言動例について

(通知 (平成22年1月8日付け職職-1 職員福祉課長)の発出)

・ パワー・ハラスメントの防止に役立てることを目的に、裁判例や苦情相談事例等

を参考に「 パワー・ハラスメント」を起こさないために注意すべき言動例」を作成「

し、各府省に対して、職員に周知するとともにその防止に努めるよう通知。

パワー・ハラスメント防止ハンドブックの作成(平成27年7月)

・ 職員一人ひとりがパワー・ハラスメントの防止等についてより一層認識し、パワ

ー・ハラスメントを受けた場合には、一人で悩まずに相談できるように、パワー・

ハラスメントの概念、なり得る言動、相談例、相談先等を紹介するハンドブックを

作成し、配布。

パワー・ハラスメント防止シンポジウムの開催(平成28年12月)

職員一人ひとりが、パワー・ハラスメントに関する基本的な知識を持ち、相手を・

尊重するとともに、パワー・ハラスメントの加害者にならないように留意し、日頃か

らパワー・ハラスメントのない職場づくりに努めていくことが重要であることから、

各府省の幹部職員や人事担当者の、職員のパワー・ハラスメント防止に関する意識を

啓発するため、シンポジウムを平成28年12月7日に開催。

人事院地方事務局(所)におけるハラスメント防止講演会の開催

国家公務員ハラスメント防止週間(毎年12月)における周知用資料の作

成・配付

パワー・ハラスメントを含めたハラスメント防止に関するリーフレットの作

成・配付

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