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神経解剖学実習書 第2版 第6刷 解剖学講座顕微解剖学分野 旭川医科大学

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神経解剖学実習書

第2版 第 6 刷

解剖学講座顕微解剖学分野旭川医科大学

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脳実習に臨んで

諸君の目の前にある脳は、故人の生涯にわたって精神の座として君臨してきた。諸君は、いま、この偉大な

脳の神秘を明らかにする機会を得たのである。諸君がこれからの脳実習において、しかるべき成果をあげ得

るか否かは諸君の心掛けしだいで決まる。十分な予備知識を持って注意深く観察するように心掛けよ。実習

に入る前に、下記の項目を精読されたい。

1. 1 個の脳を 6〜 7人で観察する。

2. 実習室における各自の席順は実習室入り口のドアに略図で示してある。

3. 実習中のマナーは解剖実習室で行われる人体解剖実習に準ずる。実習中の飲食、放言、ご遺体に対する

無礼な振る舞いを一切禁じる。

4. 観察中の脳は乾燥しないように必要時以外はカルボール中に保管する。

5. 実習中に出た脳組織片は用意する容器に入れ、実習室内を汚さないように注意する。

6. 実習の終了時に実習で用いた脳盆、解剖器具を第3実習室で洗浄する。その際、脳組織片を下水等に流

さないように注意せよ。

7. 実習時間中に特別な理由なく退室することを禁ずる。実習室に不在な状況が長時間にわたり続く場合、

出席を認めないことがある。

8. 毎回実習開始前、その回の範囲内でプレテストを行う。各テスト問題は各実習における重点項目に関わ

るものである。十分に勉強しておくこと。尚、プレテストの問題はこの実習書の巻末に記載してある。

9. 実習終了後は各自の机の周囲の紙くずなどを始末してから帰ること。

実習実施予定

第1日目 I.脳の外観 〜 II.菱脳と中脳4.中脳の観察

第2日目 II.菱脳と中脳5.小脳を背側面から観察する 〜 III.終脳表面3.左大脳半球 上外側面

第3日目 III.終脳表面3.左大脳半球 島の観察 〜 IV. 終脳内部と間脳2.レンズ核と連合・交連・投射線維の観察

第4日目 IV. 終脳内部と間脳3. 側脳室の観察 〜 5. 終脳断面の観察

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I.  脳の概観

1. 脳の各部を種々の方向から観察し脳の区分を確認する。

前脳Prosencephalon

終脳Telencephalon

上方からみると大脳縦裂により終脳は左右大脳半球に分けられること、

後方からみると終脳と小脳の間に大脳横裂があることを確認せよ。

間脳Diencephalon

視交叉や視床下部の一部しか観察されない。

中脳Mesencephalon

腹側面に大脳脚Pedunculuscerebriが観察される。

菱脳Rhombenecphalon

後脳Metencephalon

橋Pons腹側面の大きな隆起正中に脳底動脈が走る。

小脳Cerebellum

髄脳Myelencephalon

延髄Medullaoblongata脳幹の下端

2. 脳の表面を観察する。

脳の表面にはクモ膜Arachinoideaencephaliが存在する。

※硬膜Duramaterが残存している標本もある。

ク モ 膜 と 脳 実 質 表 面 の 脳 軟 膜Piamaterenchephali の 間 に は ク モ 膜 下 腔Cavum

subarachinoidealesが広がる。

1) クモ膜下槽 Cisternae subarachinoideales の観察

クモ膜下腔には所々で大きく広がっており、これらをクモ膜下槽とよぶ。

a)大脳外側窩槽Cisternafossaelateraliscerebri 外側窩にある。

b)脚間槽Cisternainterpeduncularis 大脳脚間にある。

c)視交叉槽Cisternachiasmatis 視交叉の周囲にある。

d)小脳延髄槽Cisternacerebellomedullaris 小脳と延髄の間にある

 ※ bと cは既に破壊されている標本が多い。

2) 脳の静脈の観察

大脳上外側面でクモ膜下腔にある静脈を観察する。

a)上大脳静脈Vv.cerebrisuperiores 上矢状静脈洞に注ぐ断端を探す。

b)下大脳静脈Vv.cerebriinferiores 前頭葉下面の下矢状静脈洞、後頭葉下面の横静脈洞、側

頭葉下面の海綿及び上錐体静脈洞への断端を探す。

c)浅中大脳静脈V.cerebrimediasuperficialis 外側溝上を走行する。

上記の 3つの静脈を確認した後、上矢状静脈洞と cを結ぶd)上吻合静脈V.anastomotica

superiorと横静脈洞と cを結ぶ下吻合静脈e)V.anastomoticainferior を探す。

f)大大脳静脈V.cerebrimagna 大脳横裂を大きく開いてその奥を探す。

3. 脳の動脈の観察 (1)

脳底部にみられる動脈を観察する。動脈はクモ膜下腔内に存在するので、まず、クモ膜を除去し動脈を剖出する。このとき、脳神経根を破損しないように注意すること。

1) 椎骨動脈 A. vertebralis 系の観察。

延髄の両外側を走行する動脈を探す。これらの動脈を吻側に辿ると 2つの動脈は合流し脳底動

脈A.basilarisとなる。

□ 大脳縦裂

□ 大脳横裂

□ 終脳

□ 間脳

□ 中脳

□ 橋

□ 小脳

□ 延髄

□ クモ膜

□ 軟膜

□ クモ膜下腔

□ 大脳外側槽

□ 脚間槽

□ 視交叉槽

□ 小脳延髄槽

□ 上大脳静脈

□ 下大脳静脈

□ 浅中大脳静脈

□ 上吻合静脈

□ 下吻合静脈

□ 大大脳静脈 

□ 椎骨動脈

□ 脳底動脈

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a)脳底動脈の観察

i) 後大脳動脈A.cerebriposterior

脳底動脈の吻側端は左右に 2分し後大脳動脈となる。

ii) 上小脳動脈A.cerebellisuperior

後大脳動脈のやや尾側から左右に出る動脈を確認する。この動脈を側方に辿ると小脳上面

に達することを確認せよ。

iii) 橋枝Ramiadpontem

上小脳動脈の尾側で数対の短い動脈が橋内部に入り込んで行くのを確認する。

iv) 迷路動脈A.labyrinth( 内耳動脈A.acusticainterna)

橋枝の尾側にある動脈。内耳神経や顔面神経とともに走行することから同定できるが、多

くの標本では確認するのは困難である。

v) 前下小脳動脈A.cerebellarisinferioranterior

迷路動脈の尾側の有対性の動脈。この動脈を側方に辿ると小脳下面の半球部や虫部に達す

るので、迷路動脈と鑑別できる。

b)後下小脳動脈A.cerebelliinferiorposterior

椎骨動脈から外側方に出る動脈を確認する。

c)前脊髄動脈と後脊髄動脈A.spinalisanterioretposterior

椎骨動脈から内側に分枝する動脈を確認する。前脊髄動脈は後脊髄動脈より吻側から分枝

し、左右が合流し前正中裂上を走行することを確認する。

2) 内頚動脈 A. carotis interna 系の観察

視交叉の左右にみられる内頚動脈の断端を確認する。

a)中大脳動脈A.cerebrimedia

内頚動脈を外方に辿ると外側溝に向かって行くことを確認する。

b)前大脳動脈A.cerebrianterior

内頚動脈から前方に出ている枝が大脳内側面に向かうことを確認する。視交叉が確認の妨げ

になるので、尾側方に飜転して視野を確保する。

c)前交通動脈A.communicansanterior

前大脳動脈は大脳内側面に向かう直前に正中でこの動脈により左右が結ばれる。

d)後交通脳動脈A.communicansposterior

内頚動脈から尾側方に向かう枝で、後大脳動脈と連絡することを確認する。

e)前脈絡叢動脈A.chorioideaanterior

後大脳動脈の外側を尾側に向かって走る動脈を確認する。

大脳動脈輪 Circulus arteriosus cerebri (Willis)

後大脳動脈→後交通動脈→中大脳動脈 ( 内頚動脈 ) →前大脳動脈→前交通動脈→ ( 反対側の ) 前

大脳動脈→中大脳動脈(内頚動脈)→後交通動脈→後大脳動脈の様に一周できることを確認する。

大脳動脈輪およびその

周辺の構造をスケッチ

してみよう

□ 後大脳動脈

□ 上小脳動脈

□ 橋枝

□ 迷路動脈

□ 前下小脳動脈

□ 後下小脳動脈

□ 前脊髄動脈

□ 後脊髄動脈

□ 視交叉

□ 内頚動脈

□ 中大脳動脈

□ 前大脳動脈

□ 前交通動脈

□ 後交通動脈

□ 前脈絡叢動脈

□ 大脳動脈輪

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II.  菱脳と中脳1. 脳幹の切断

中脳で脳幹を切断し、脳幹部分と間脳・終脳を分離する。以下の手順で行う。1) 後大脳動脈と上小脳動脈の間で脳底動脈を切断する。2) 大脳横裂を外側から開くようにして、小脳半球の上面に沿ってメスを入れ、両側から中脳大脳

脚を切断する。このとき左右の切断面が上丘と下丘の間を通り、正中矢状面上で合するようになれば理想的である。

※大脳横裂は開き過ぎないようにせよ。中脳にメスを入れる方向がずれて失敗する確率が高くなる。3) 脳幹の切断後、中脳の周囲、橋や小脳の表面にある血管や軟膜を除去する。このとき脳神経

根や脈絡叢を破損しないように注意せよ。

2. 延髄腹側面の観察

1)正中にある前正中裂Fissuramedianaanteriorを確認する。

2)前正中裂の外側にある前外側溝Sulcuslateralisanteriorを確認する。

3)前正中裂と前外側溝の間の隆起が錐体Pyramisである。

4)前正中裂を尾側に辿り浅くなっている部位を探す。ここが錐体交叉Decussatiopyramidumで

ある。

5)前外側溝を上方に辿ると橋との境界部に外転神経根が確認できる。外転神経根から下方に辿る

と舌下神経根が確認できる。

6)前外側溝の上部外側にあるオリーブOlivaを確認し、オリーブの上端に内側から顔面神経根と

内耳神経根を確認する。

7)オリーブの外側にある後外側溝を確認し、吻側から尾側に向かって、舌咽神経、迷走神経、副

神経根を確認する。

※舌咽神経根、迷走神経根、副神経根及び舌下神経根は複数の細い神経根からなっている。

8)延髄の腹側面最外側に小脳へ入り込んで行く下小脳脚Pedunculuscerebellaris inferiorを観

察する。近くに脈絡叢が観察でき、これを内側に辿ると第四脳室外側孔Aperturalateralis

ventriculiquartiに至る。

3. 橋腹側面の観察

1)正中に脳底溝Sulcusbasilarisを探す。これは脳底動脈の通っていた跡である。

2)橋を外側方に辿ると小脳に線維束が入り込んで行くのが確認できる。これが中小脳脚

Pedunculuscerebellarismediusであり、途中に三叉神経根を認める。

4. 中脳の観察

腹側面の観察

1)大脳脚Cruscerebriを観察する。

2) 左右大脳脚の間には脚間窩Fossainterpeduncularis がある。脚間窩の奥には後有孔質

Substantiaperforataposteriorと呼ばれる、細かい血管が脳内に入り込んでいく小孔が多数存

在することを確認せよ。

3)脚間窩付近に動眼神経根を確認し、神経根が上下に走行する大脳脚内側溝Sulcusmedialis

cruriscerebriから出ていることを確認する。

切断面の観察

1) 中脳水道Aquaductuscerebri を内部に確認し、ここより背側にあたる中脳蓋Tectum

□ 前正中裂

□ 前外側溝

□ 錐体

□ 錐体交叉

□ 外転神経根

□ 舌下神経根

□ オリーブ

□ 顔面神経根

□ 内耳神経根

□ 舌咽神経根

□ 迷走神経根

□ 副神経根

□ 下小脳脚

□ 脈絡叢

□ 第四脳室外側孔

□ 脳底溝

□ 中小脳脚

□ 三叉神経根

□ 大脳脚

□ 脚間窩

□ 後有孔質

□ 動眼神経根

□ 大脳脚内側溝

□ 中脳水道

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□ 中脳蓋

□ 中脳被蓋

□ 下丘

□ 滑車神経根

□ 中心灰白質

□ 赤核

□ 黒質

mesencephaliと腹側にある中脳被蓋Tegmentummesencephaliを区別せよ。

2)中脳蓋を背側面から観察すると下丘Colliculusinferiorとその尾側から出る滑車神経根を確認

できる。

※確認しずらい場合は、中脳と小脳の間をすこし押し広げるとよい。

3) 中脳水道の周囲にある中心灰白質Substantiagriseacentralis、中脳蓋を構成する下丘

Colliculusinferior、中脳被蓋にある赤核Nucleusruber、黒質Substantianigraを確認せよ。

中脳横断面をスケッチしてみよう。

5. 小脳を背側面から観察する。

中央の虫部Vermisと左右に広がる小脳半球Hemispheriumcerebelliからなる。

背側面は吻側は上面Faciessuperiorであり、尾側に向かうと急激に角度を変えて下面Facies

inferiorに至る。

下面の中央は陥凹して小脳谷Valleculacerebelliを形成している。

6. 小脳脚と第四脳室の観察

左小脳半球を用い小脳脚を剖出する。

1) 左小脳半球の小脳扁桃 Tonsilla cerebelli をメスの柄を用いて一塊にして取り除く。下小脳脚がより観察しやすくなる。

※余裕のあるグループは扁桃を取り除いた奥を観察すると、第四脳室脈絡組織Telachorioidea

ventriculiquarti、片葉脚Pedunculusfloccli及び下髄帆Vellummedullareinferiusが認めら

れることを確認せよ。これらは第四脳室蓋の尾側部を構成する。

2) 片葉を破壊しないように注意し、橋から中小脳脚に向かって片葉より上方の小脳半球 ( 上面 )をメスの柄を用いて除去する。

3) 中小脳脚の一部をピンセットでつまんで剥がすようにすると、中小脳脚の線維は水平方向に走行することが確認できる。

4) 小脳半球の上面をある程度取り除くと、下丘の下から尾側にのびる線維束である上小脳脚が現れる。左右の上小脳脚の間には上髄帆 Vellum medullare superius という薄い膜が張っていることを確認せよ。

5)上小脳脚を尾側に辿ると、中小脳脚の下方に潜り込んで行くことが確認できる。

6)上小脳脚が中小脳脚の下方に潜り込んで行く部位で、2つの小脳脚の間から中小脳脚に垂直な

線維束が虫部に向かって走行しているのを確認せよ。これが下小脳脚の小脳内における線維束

である。

7)上記の剖出を通じて各小脳脚の線維の走行する方向と投射する小脳の部位及び各小脳脚と脳幹

各部との関係を理解せよ。

□ 虫部

□ 小脳半球

□ 上面

□ 下面

□ 小脳谷

□ 小脳扁桃

□ 第四脳室脈絡組織

□ 片葉脚

□ 下髄帆

□ 中小脳脚の走行

□ 上小脳脚

□ 上髄帆

□ 下小脳脚

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7. 第四脳室脈絡組織 ( 第四脳室蓋 ) の観察

1) 小脳の背側面で正中にメスを入れ、小脳を二分する。このときメスを入れ過ぎて第四脳室底を損傷しないように注意せよ。

2) 左上・中・下小脳脚を脳幹の近くで切断する。最初に上小脳脚を切断すると ( このとき左半分の上髄帆も除去する )、第四脳室内が背側から観察できるので、中・下小脳脚の切断を適当な位置で行うことが簡単になる。切断に際しては片葉と片葉脚は脳幹に残すようにする。

3)上記のように左の小脳を除去すると下記に示す第四脳室蓋の左半分と片葉および片葉脚が背側

から観察できるようになる。

第四脳室脈絡組織 Tela chorioidea ventriculi quarti

第四脳室ヒモTeniaventriculiquarti—これは脈絡組織の付着線を言う。

第四脳室正中口と第四脳室外側口Apertulamedianaetlateralisventriculiquarti

菱形窩の下端と外側端にあたる脈絡組織には孔が空いており第四脳室脈絡組織Plexus

chorioideusventriculiquartiがここから一部出ていることを確認せよ。

※第四脳室脈絡組織は破壊されていることも多く、その場合はこれらの観察は出来ない。

8. 菱形窩 Fossa rhomboidea の観察

右側の上・中・下小脳脚を上記と同様に切断し ( ただし小脳は破壊せず、片葉は小脳側につくようにする ) 脳幹から切り離すと、延髄の背側面と菱形窩 ( 第四脳室底 ) が確認できるようになる。延髄背側面の観察

1)正中にある後正中溝Sulcusmedianusposteriorを確認する。

2) 後正中溝上端の両側の内側と外側に薄束結節Tuberculumnucleigracilis と楔状束結節

Tuberculumnucleicuneatiという 2つの隆起を確認する。

3)楔状束結節の外側に後外側溝Sulcuslateralisposteriorが、楔状束結節と薄束結節の間に後中

間溝Sulcusintermediusposteriorがあることを確認せよ。

菱形窩の観察

1)正中に正中溝Sulcusmedianus、その両外側に弓状に走行する境界溝Sulcuslimitansを確認し、

2つの溝に挟まれた領域が内側隆起Eminentiamedialisを形成することを確認せよ。

2) 正中溝から前外方に走る数本の線を観察せよ。これが第四脳室髄条Striaemedullares

ventriculiquartiである。

※第四脳室髄条の数、走行、明瞭度には個人差が大きい。

3)第四脳室外側口のあった菱形窩の外側端はわずかに陥凹しており第四脳室外側陥凹Recessus

lateralisventriculiquartiと称する。

4)菱形窩中央部の境界溝より外側部は三角形状のたかまりになっており、前庭神経野Area

vestibularisと呼ぶ。

5)菱形窩の下部において内側隆起は尾側に向かうにつれ幅が狭くなり三角形を呈することを確認

せよ。これを舌下神経三角Trigonumnervihypoglossiと呼ぶ。

6)舌下神経三角のすぐ外側にある境界溝を底辺とした三角部を確認せよ。これが迷走神経三角

Trigonumnervivagiである。

7)第四脳室髄条の上方には、内側隆起中に丸み帯びた高まりがである顔面神経丘Colliculus

facialisがあることを確認せよ。

8)青斑Locusceruleusは顔面神経丘の前外側方にやや青色を呈する部位である。

上記の各項目を確認しながら、菱形窩の内部に広がる脳神経核の位置関係を確認・理解するよう

に努めよ。

余裕のあるグループはさらに上窩、下窩、最後野等の部位も確認せよ。

□ 第四脳室脈絡組織

□ 第四脳室ヒモ

□ 第四脳室正中口

□ 第四脳室外側口

□ 後正中溝

□ 薄束結節

□ 楔状束結節

□ 後外側溝

□ 後中間溝

□ 正中溝

□ 境界溝

□ 内側隆起

□ 第四脳室髄条

□ 第四脳室外側陥凹

□ 前庭神経野

□ 舌下神経三角

□ 迷走神経三角

□ 顔面神経丘

□ 青斑

□ 上窩

□ 下窩

□ 最後野

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菱形窩をスケッチし脳神経核の存在部位を考察しよう。

9. 小脳の観察

右の小脳を用いて小脳の形態を観察する。小脳は中央部の虫部vermisと外側の膨大部である小脳半球Hemispherium

cerebelliからなることを確認し、虫部各部位と半球の各小葉が下表のような対応関係にあることを確認せよ。

    虫部Vermis     小脳半球Hemispheriumcerebelli

[ 上面Faciessuperior]

□ 小脳小舌 Lingulacerebelli

□ 中心小葉Lobuluscentralis □ 中心小葉翼 Alalobulicentralis

□ 山頂Clumen □ 四角小葉Lobulusquadrangluaris

         □ 第一裂Fissuraprima

□ 山腹Declive □ 単小葉Lobulussimplex

□ 虫部葉Foliumvermis □ 上半月小葉Lobulussemiluminarissuperior

        □ 水平裂Fissurahorizontalis

[ 下面Faciesinferior]

□ 虫部隆起Tubervermis □ 下半月小葉Lobulussemiluminarisinferior

□ 虫部錐体Pyramisvermis □ 二腹小葉Lobulusbiventer

         □ 第二裂Fissurasecunda

□ 虫部垂Uvulavermis □ 小脳扁桃Tonsillacerebelli

        □ 後外側裂Fissuraposterolateralis

□ 小節Nodulus □ 片葉Flocculus

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III.  終脳表面

1. 終脳の正中矢状断

終脳の観察に入る前に、間脳・中脳上部を含む終脳を下記に示す手順で正中矢状断する。① 前方から後方に向かって前交通動脈、視交叉、漏斗、後大脳動脈、中脳、松果体、大大脳静脈

の順にメスを入れる。② 左右の前頭葉の間を開くようにして脳刀をさしこむ。このとき、左右の大脳半球の内側面を走

る前大脳動脈を切断しないように注意せよ。③ 脳刀を後方に向かってゆっくり引き、左右の大脳半球を切り離す。※このとき、脳刀をノコギリを引くときのように前後に動かしてはいけない。断面が平滑になら

ず大脳半球の内側面を破損する恐れがある。④ 右大脳半球は動脈の観察に、左大脳半球は脳溝と脳回の観察に用いる。※以後、終脳をこわす時は右大脳半球を用いるので注意せよ。

2. 脳の動脈の観察 (2)

今回は臨床的にも重要な終脳の血管である前大脳動脈、中大脳動脈及び後大脳動脈について、こ

れらがどのように終脳に分布しているか観察する。

動脈の枝には皮質に分布する皮質枝Ramicorticalesと脳の内部に入り込んで行く中心枝Rami

centralesの 2 種類があることを理解して、各々の血管の観察をせよ。

1)前大脳動脈A.cerebrianterior

a)前交通動脈の断端を確認せよ。

b)次いで前頭葉下面 ( 眼窩枝Rr.orbitales)、内側面 ( 前頭枝Rr.frontales及び頭頂枝Rr.

parietales) に皮質枝が分布していることを確認せよ。

c)前大脳動脈の起始部から細かい動脈が脳実質内に入り込んで行くことを確認せよ。これが

前大脳動脈の中心枝で anteromedialbranch と呼ばれる。入り込んでいく部位は前有孔質

Substantiaperforataanteriorや終板Laminaterminalisであることもあわせて確認せよ。

2)中大脳動脈A.cerebrimedia

a)後交通動脈を確認する。

b)中大脳動脈は外側方に進み外側窩の内部へ入り込んで行くため、観察を容易にするために側

頭極Polustemporalisと側頭弁蓋の一部を切除する。

c)動脈を外側に辿ると、皮質枝を眼窩面 ( 眼窩枝 ) に出した後、島insulaの表面に分布し、そ

の後外側溝から大脳半球の上外側面に枝を分布させていることを確認せよ。(前頭枝、頭頂枝、

側頭枝Rr.temporales)

d)中心枝は前有孔質の外側部から入り込んでいることを確認せよ。(anterolateralbranch)

※前有孔質から入る中心枝のうち線条体に至る枝を線条体枝Rr.striatiとよぶ。この枝は脳出

血をしばしば起こす枝で臨床上極めて重要である。

e)後交通動脈のやや末梢で後方に向かい大脳脚と鈎uncusの間を走る前脈絡叢動脈A.

chorioideaanteriorを確認する。

3)後大脳動脈A.cerebriposterior

a)皮質枝が側頭葉 (側頭枝Rr.temporales)、後頭葉 (後頭枝Rr.occipitales) 及び内側面後部 (頭

頂後頭枝Rr.parietooccipitales) に分布することを確認せよ。

b) 中心枝は大脳脚脚間窩の後有孔質Substantiaperforataposterior から(posteromedial

branch)および大脳脚から(posterolateralbranch)脳実質に入り込んで行くことを確認せよ。

□ 前交通動脈

□ 前大脳動脈の走行

□ 前大脳動脈中心枝

□ 前有孔質

□ 終板

□ 後交通動脈

□ 外側窩

□ 側頭極

□ 中大脳動脈の走行

□ 前脈絡叢動脈

□ 後大脳動脈の走行

□ 大脳脚脚間窩

□ 後有孔質

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3. 左大脳半球の脳溝と脳回の観察

破壊していない左大脳半球を用いて脳溝と脳回の観察を行う。

左脳半球表面にはクモ膜や血管が残存しており、このままでは十分な観察が行えないのでこれら

を丁寧に除去せよ。このとき脳溝や脳回が破損しないように気をつけよ。

上外側面 Facies superolateralis cerebri葉間溝 Sulcus interlobares

1)外側溝Sulcuslateralisを観察する。

外側溝は大脳外側窩に始まり、その主部は後枝Ramusposteriorとして後上方にすすむ。外

側窩から半球外側面に現れたところで前に向かう前枝R.anteriorと上方に向かう上行枝R.

assendensを出している。

2)中心溝Sulcuscentralisを探す。

中心溝は半球上縁のほぼ中央から前下方に走り、外側溝後枝の近くに終わる。中心溝は半球上

縁からさらに内側面にまで至るので、近くにある中心前溝Sulcusprecentralis及び中心後溝

Sulcuspostcentralisと区別することができる。

※中心溝はしばしば中絶したり、まれに 2本になったりすることがある。

3)頭頂後頭溝Sulcusparietooccipitalis が上外側面に現れている部位を探す。

頭頂後頭溝は内側面でよく観察される脳溝である。内側面でこの溝を後上方に辿ると一部が上

外側面に現れることを確認せよ。

4)後頭前切痕Incisurapreoccipitalisを探す。

外側面の下縁は上に凸の形状をしており、その頂点を後頭前切痕と呼ぶ。

外側溝、中心溝及び頭頂後頭溝を葉間溝とよび、これらの溝と頭頂後頭溝と後頭前切痕を結

ぶラインを用いて、外側面を前頭葉Lobusfrontale、側頭葉Lobustemporale、頭頂葉Lobus

parietale及び後頭葉Lobusoccipitale に分割する。

前頭葉の脳溝と脳回

1)中心前溝は中心溝の前方を中心溝に平行に走る溝で、中心溝と中心前溝との間に中心前回

Gyrusprecentralisがある。

2)中心前溝のさらに前方には中心前溝から前方に走る上下 2本の脳溝、即ち上及び下前頭溝

Sulcusfrontalissuperioretinferiorが観察される。

上前頭溝の上方に上前頭回Gyrusfrontalissuperior、上前頭溝と下前頭溝の間に中前頭回

Gyrusfrontalismedius、下前頭溝の下方に下前頭回Gyrusfrontalisinferiorを認める。

3)下前頭回はさらに外側溝の前枝と上行枝により、前部の眼窩部Parsorbitalis、中部の三角部

Parstriangularis、後部の弁蓋部Parsopercularisの 3 部に分けられることを確認せよ。

頭頂葉の脳溝と脳回

1)中心溝の後方でこれに平行に走行する中心後溝Sulcuspostcentralis を同定し、中心溝と中心

後溝の間に中心後回Gyruspostcentralis があることを確認せよ。

2)頭頂間溝Sulcusintraparietalisを同定する。この溝は中心後溝のなかほどから出て半球上縁に

ほぼ平行に走行する。

3) 頭頂間溝の上方を上頭頂小葉Lobulusparietalissuperior、下方を下頭頂小葉Lobulus

parietalisinferiorと呼ぶ。

4)下頭頂小葉はさらに前部で外側溝の後端を囲む縁上回Gyrussupramarginalisと後部の角回

Gyusangularisに分けられる。

従って頭頂間溝は縁上回と角回の上縁を形成する。

※成書によっては縁上回と角回の上縁とは別の溝であるように記載している。

□ 外側溝 後枝

□ 外側溝 前枝

□ 外側溝 上行枝

□ 中心溝

□ 中心前溝

□ 中心後溝

□ 頭頂後頭溝

□ 後頭前切痕

□ 前頭葉

□ 頭頂葉

□ 側頭葉

□ 後頭葉

□ 中心前回

□ 上前頭溝

□ 下前頭溝

□ 上前頭回

□ 中前頭回

□ 下前頭回

□ 眼窩部

□ 三角部

□ 弁蓋部

□ 中心後回

□ 頭頂間溝

□ 上頭頂小葉

□ 下頭頂小葉

□ 縁上回

□ 角回

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後頭葉の脳溝と脳回

頭頂間溝を後頭葉へ辿るとこれと直交する溝により終わる。これを横後頭溝Sulcusoccipitalis

transversusと呼ぶ。

側頭葉の脳溝と脳回

1)側頭葉の外側面には前後方向に走る 2本の脳溝、即ち上側頭溝と下側頭溝Sulcustemporalis

superioretinferiorが観察される。

2)上記 2本の脳溝により上から上側頭回Gyrustemporalissuperior、中側頭回Gyrustemporalis

及び下側頭回Gyrustemporalisinferiorが区別される。

3)外側溝を押し広げて上側頭回の背側面を観察すると、内側から外側へ向かう数本の横側頭溝

Sulcitemporalestransversiとそれにより形成される横側頭回Gyritemporalestransversiが観

察される。この内側部に聴覚野があると考えられている。

終脳外側面の脳溝と脳回を描き入れてみよう。

島 Insula の観察右大脳半球を用いて島insulaの観察を行う。

1) 島を覆う周囲の外套 ( 弁蓋 Operculum) を取り除く。弁蓋は前頭弁蓋 Operculum frontalis、頭頂弁蓋 Operculum parietalis 及び側頭弁蓋 Operculum temporalis の別がある。このうち側頭弁蓋は既に一部除去しているはずである。

2)弁蓋を取り除くと島の皮質が観察できるようになる。

3)島と周囲の外套との移行部は島の外側縁になっており、( 島 ) 輪状溝Sulcuscircularis insulae

として認められる。従って弁蓋を除去する祭には輪状溝を破壊しない様に注意しなくてはなら

ない。

4)輪状溝は前下端部では欠けており、ここを島限Limeninsulaeと呼ぶ。島限を腹内側方に辿る

と嗅脳に続くことを確認せよ。

5)島表面には後上方から前下方に走る島中心溝Sulcuscentralisinsulaeがあり、これにより後方

の 1〜 2個の長回Gyrilongusinsulaeと前方の 4〜 5個の短回Gyribrevesinsulaeに分かた

れる。

左大脳半球内側面の観察1)外側面でみられた中心溝が内側面まで伸びていることを確認する。

内側面の中心溝を取り囲んでいる脳回が中心傍小葉Lobulusparacentralisである。

2)内側面の中心にはへの字形をした脳梁Corpuscallosumが確認できる。

3)内側面の前方から中央にかけて脳梁と平行に走る脳溝が観察される。これが帯状溝Sulcus

□ 横後頭溝

□ 上側頭溝

□ 下側頭溝

□ 上側頭回

□ 中側頭回

□ 下側頭回

□ 横側頭回

□ 前頭弁蓋

□ 頭頂弁蓋

□ 側頭弁蓋

□ 輪状溝

□ 島限

□ 島中心溝

□ 長回

□ 短回

□ 中心傍小葉

□ 脳梁

□ 帯状溝

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cinguliである。帯状溝と脳梁との間には帯状回Gyruscinguliを認める。

帯状溝は中央部で上方に向かい内側面上縁に終わることに注意せよ。

4)そのため、帯状回の後部の上縁は帯状溝ではなく頭頂下溝Sulcussubparietalisによって形成

されることを確認せよ。

5)内側面後部では後上部から前下方に向かって伸びる深い脳溝である頭頂後頭溝Sulcus

parietooccipitalisが認められる。これにより頭頂葉と後頭葉が境される。

6)鳥距溝Sulcuscalcarinusは頭頂後頭溝の後下方をほぼ水平に走り前方で頭頂後頭溝と合一す

る深い脳溝である。

7)鳥距溝と頭頂後頭溝と後頭葉上縁により三角形の領域ができる。これが楔部Cuneusである。

8)頭頂後頭溝の前方にはこの溝と頭頂下溝、帯状溝縁部及び内側面上縁によって取り囲まれる不

規則な四角形をした領域が確認される。これが楔前部Precuneusである。

終脳内側面および下面の脳溝と脳回を描き入れてみよう。

左大脳半球下面の観察後頭葉と側頭葉の下面

1)下面の外側縁から内側に向かって前後方向に走る 2本の脳溝が観察される。これらは外側から

後頭側頭溝Sulcusoccipitotemporalisと側副溝Sulcuscolateralisである。

2)上記 2つの脳溝により下面に 3つの脳回が外側から外側後頭側頭回Gyrusoccipitotemporalis

lateralis、 内 側 後 頭 側 頭 回Gyrusoccipitotemporalismedialis 海 馬 傍 回Gyrus

parahippocampalisの順に認められる。

3)海馬傍回の内側には著しく深い海馬溝Sulcushippocampiがみられることを確認せよ。

4)海馬傍回は前方に向かうと鈎状に脳回が曲がっている部分で終止する。ここを鈎 (コウ )Uncus

とよび、嗅覚路の一部である。

5)海馬傍回を後方に辿ると、脳回の幅が狭くなる領域 ( 帯状回峡Isthmusgyricinguli) を経て前

方に方向を転じ、帯状回に行き着くことがわかる。

6)脳梁と帯状回との間にも脳溝がありこれを脳梁溝Sulcuscorporiscallosiと呼ぶ。

7)舌状回Gyruslingualisは内側後頭側頭回の後頭葉部分の名称として観察すると見つけやすい。

前頭葉下面

1)嗅索をピンセットでどけるとその下に前後に走る嗅溝Sulcusolfactoriusを観察できる。

2)嗅溝と下面の内側縁の間にある脳回が直回Gyrusrectusである。

3)嗅溝の外側は不規則な脳溝と脳回によって下面が形成されている。各々を眼窩溝Sulci

orbitales及び眼窩回Gyriorbitalesとよぶ。

□ 帯状回

□ 頭頂下溝

□ 頭頂後頭溝

□ 鳥距溝

□ 楔部

□ 楔前部

□ 後頭側頭溝

□ 側副溝

□ 外側後頭側頭回

□ 内側後頭側頭回

□ 海馬傍回

□ 海馬溝

□ 鈎

□ 帯状回峡

□ 脳梁溝

□ 舌状回

□ 嗅溝

□ 直回

□ 眼窩溝

□ 眼窩回

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嗅脳 Rhinencephalon の観察嗅脳を観察する。下記に示す観察を通して嗅脳を構成する大脳皮質各部位と ( 一次 ) 嗅覚路を理

解せよ。

1)嗅脳の先端を観察する。嗅脳の先端はやや膨らんでおりこれを嗅球Bulbusolfactoriusと呼ぶ。

2)嗅球を後方に辿ると嗅索Tractusolfactoriusに続く。

3)嗅索を後方に辿ると内側と外側の 2本の線維束に分かれる。そのため両線維束の後方に三角形

の領域、即ち嗅三角Trigonumolfactoriumができる。嗅三角の後方には前有孔質が続いてい

ることを確認せよ。

4)嗅索から 2本に分かれた線維束は内側を内側嗅条Striaolfactoriamedialis、外側を外側嗅

条Striaolfactorialateralis と呼ぶ。内側嗅条を内側に辿ると、大脳半球内側面の梁下野

Areasubcallosaに至り、外側嗅条を中枢へ辿ると後方に向かい、側頭葉の鈎や嗅内野Area

entorhinalisに至ることを確認せよ。

※内側、外側嗅条の間に中間嗅条Striaolfactoriaintermediaがみられる場合があり、これは後方

に向かい前有孔質に達する。

5)梁下野は大脳半球内側面で脳梁 ( 脳梁吻から脳梁膝 ) の下方に位置する領域で、その尾側で

第三脳室Ventriculustertiusの前壁をつくる終板Laminaterminalisに接する脳回を終板傍回

Gyrusparaterminalisと呼び、前有孔質とともに嗅脳の後部を形成する。

6)脳梁と帯状回の間の脳梁溝を押し広げてみると、脳梁表面に前後方向に走る 2本の線条が観察

できる。これらを灰白層Induseumgriseumと称し、内側縦条Strialongitudinalismedialis及

び外側縦条Strialongitudinalislateralisからなる。

※終脳を正中矢状断したとき必ずしも正確に 2分できているとは限らないので、内側及び外側縦

条がともに観察できない場合がある。次節で帯状回を削ると見やすくなるので、十分に観察で

きない場合はそのときに改めて観察するとよい。

7)灰白層を後方に辿ると脳梁膨大Spleniumcorporiscallosiから方向を変え前方に向かう。この

部位を小帯回Gyrusfasciolarisとよぶ。小帯回は海馬溝の奥深くに進み歯状回Gyrusdentatus

に至る。

□ 嗅球

□ 嗅索

□ 嗅三角

□ 前有孔質

□ 内側嗅条

□ 外側嗅条

□ 梁下野

□ 鈎

□ 嗅内野

□ 第三脳室

□ 終板

□ 終板傍回

□ 灰白層

□ 内側縦条

□ 外側縦条

□ 脳梁膨大

□ 小帯回

□ 歯状回

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IV.  終脳内部と間脳

1. 脳梁 Corpus callosum、透明中隔 Septum pellcidum 及び脳弓 Fornix の観察

右大脳半球内側面において、帯状回、帯状回峡及び海馬傍回の皮質をメスの柄で削り取っていくと、帯状回の内部を前後方向に走る帯状束 Cingulum が現れる。またこのようにすると、灰白層、小帯回、歯状回が観察しやすくなる。1)脳梁Corpuscallosum

脳梁は断面に垂直方向に走る交連線維束であり、前方で先端が鳥のくちばしのように細く

なっている脳梁吻Rostrumcorporiscallosiから始まり、次いで急に方向が変わる脳梁膝Genu

corporiscallosi、脳梁の大部分をつくる脳梁幹Truncuscorporiscallosi及び後端で膨らんでい

る脳梁膨大Spleniumcorporiscallosiの 4 部位に分けられる。

脳梁吻のさらに先には前交連Commissuraanteriorがみられる。前交連は系統発生的に最も古

い交連線維と言われる。

帯状束の線維を削り取って行くと、これに直交するように走る脳梁の線維が出てくる。これを脳梁放線Radiatiocorporiscallosiと呼ぶ。脳梁放線のうち脳梁膝と脳梁膨大を通る線維束は前

者は左右前頭葉を、後者は左右後頭葉を結ぶ線維であり、その形態から前者を小鉗子Forceps

minor、後者を大鉗子Forcepsmajorと呼ぶ。

大鉗子や小鉗子を観察するためには広範に半球内側面の皮質を削り取る必要がある。しかし、特に中央部では削り過ぎると外側面で観察する放線冠 Corona radiata を観察できなくなるので、削り過ぎないように注意しなくてはならない。

2)透明中隔Septumpellcidum

透明中隔は側脳室前角及び中心部の内側壁を構成する薄い膜で、上部は脳梁に、下部は脳弓

に付着している。左右の透明中隔板Laminaseptipellcidiとその間の空隙である透明中隔腔

Cavumseptipellcidiから成る。理想的に正中矢状断されれば透明中隔腔で切断されているは

ずだが、多く場合どちらかによってしまう。そのため右脳半球で観察できない場合は左脳半球

で観察すること。

3)脳弓Fronix

脳弓は間脳の乳頭体Corpusmammillareから海馬Hippocampusに至る線維束である。脳弓は

乳頭体側から順に脳弓柱Collumnafornicis、脳弓体Corpusfornicis、脳弓脚Crusfornicis及

び海馬采Fimbriahippocampiの 4 部に分けられる。

乳頭体に始まる脳弓は視床下部の内部を走行するため脳弓柱の殆どは表面から観察でき

ない。第三脳室Ventriculustertius と側脳室Ventriculuslateralis と結ぶ室間孔Foramen

interventriculareの前方で姿を現わし、直ぐに脳弓体に移項する。脳弓体には透明中隔の下縁

が付着する。脳弓体を尾側に辿ると小帯回の内側で外側に向かう。ここを脳弓脚と呼ぶ。脳弓

脚はさらに前方に走行方向を変え、内側方から観察すると歯状回の深部にある白いヒモ状の構

造に見える部位に到達する。ここが海馬采である。

2. レンズ核と連合・交連・投射線維の観察

1) 右大脳半球外側面において島の周りの皮質を削りとっていくと、初めに連合線維が現れる。a)前頭葉前部から後頭葉にかけて走行する線維束を上縦束Fasciculuslongitudinalissuperiorとよぶ。

b)島の下方で側頭葉と後頭葉にかけて走行する線維束を下縦束Fasciculuslongitudinalis

inferiorとよぶ。

c)島限の皮質下に現れる前頭葉と側頭葉を結ぶ線維束を鈎状束Fasciculusuncinatusとよぶ

d)a、b及びcの 3 線維は離れた皮質部を結ぶ線維であり長線維と言われる。これに対して大

脳皮質直下には隣接する脳回を結ぶ線維がありこれを弓状線維Fibraearcuatacerebriとよ

ばれる。弓状線維は剖出の順序から外側面上縁で観察しやすい。

※帯状束は内側面でみられる連合線維である。もう一度確認せよ。

□ 帯状束

□ 灰白層

□ 歯状回

□ 脳梁

□ 脳梁吻

□ 脳梁膝

□ 脳梁幹

□ 脳梁膨大

□ 前交連

□ 脳梁放線

□ 小鉗子

□ 大鉗子

□ 透明中隔板

□ 透明中隔腔

□ 脳弓

□ 乳頭体

□ 海馬

□ 脳弓柱

□ 脳弓体

□ 脳弓脚

□ 海馬采

□ 上縦束

□ 下縦束

□ 鈎状束

□ 弓状線維

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2) 連合線維をさらに剥がしていくと、島の周りから放射状に線維が走行する投射路が現れてくる。a)この投射路全体を放線冠Coronaradiataと呼び、皮質各部から線維があつまり内包Capsula

interna向かっている。

上縁では交連線維である脳梁放線の線維とかけあわされるので肉眼的には途中までしか追え

ないことに注意せよ。

b)放線冠のうち後頭葉の視覚野領域に投射する線維束を視放線Radiatioopticaと呼ぶ。大変

良く観察できるので、しっかりと確認すること。確認するためには後頭極周辺まで剖出する

必要がある。

c)側頭葉の聴覚野へ投射する線維束を聴放線Radiatioacusticaとよぶ。この線維は内側から外

側に向かう線維なので、今回のような剖出方法でははっきりとは観察されない。

上記の様に一部の線維を除いて比較的容易に観察できるはずである。剖出する際に特に側頭葉

では削り過ぎると側脳室の下角や後角の一部を破損する恐れがあるので、注意せよ。

3) 島周囲の線維を観察した後、島皮質を削っていく。島の皮質下には灰白層である前障Claustrum、その下にある白質の外包Capsulaexterna、さ

らにその下にある大きな卵円形灰白質の塊であるレンズ核Nucleuslentiformis( 厳密に言えば

被殻Putamen) の順で観察できるはずである。

しかし、前障は極めて薄いためほとんど観察できない。

※レンズ核は比較的深い所にあるので、容易に現れない場合でも放線冠が出ているレベルまで ( 或

いはそれ以上に深部まで ) 削れば剖出することは可能である。

3. 側脳室の観察

1)側脳室Ventriculuslateralisの前角Cornuanteriusと中心部Parscentralisの観察。

大脳内側面のおいて、側脳室の天井をつくる脳梁放線を前方は脳梁膝の近くまで、後方は脳梁膨大の近くまで、外側は尾状核 Nucleus caudatus の外側縁の近くまで切除し、側脳室内部が背側から見えるようにする。a)側脳室 ( 前角および中心部 ) の外側壁は尾状核が位置している。尾状核は前方から頭Caput、

体Corpus及び尾Caudaの 3 部に分けられることを確認せよ。

b)側脳室の下面は視床Thalamusにより形成されており、尾状核と視床の境界には分界条

Striaterminalisとよばれる溝が走る。

c)側脳室の内側縁には側脳室脈絡組織Telachorioideaventriculilateralisがある。

d)側脳室脈絡組織は内側では脳弓に付着し、それよりやや外側で視床に付着しており、脈絡

組織を取り去ると付着部位がヒモ状に観察される。そのため前者を脳弓ヒモTeniafornicis、

後者を脈絡ヒモTeniachorioideaと称する。

※ただし、現段階で脈絡組織を取り除いてはいけない。

※実際は脈絡叢などがあるためこのままでは観察するのは難しい。しかし位置関係は把握する

こと。側脳室脈絡組織とは脳弓ヒモと脈絡ヒモの間に張っていることを理解せよ。

e)脈絡ヒモと分界条の間の視床の部位を付着板Laminaaffixaと呼び、視床が発達した高等動

物でよくみられる。

f)脈絡組織の表面には側脳室脈絡叢Plexuschorioideusventriculilateralisがあり、内部に脈絡

叢静脈V.chorioideaが走行することを確認せよ。

g)分界条の直下にこれに沿って視床線条体静脈V.thalamostriataが走行し、側脳室外側壁 ( 尾

状核各部 ) から静脈を集めていることを確認せよ。

2)側脳室の後角Cornuposteriusと下角Cornuinferiusの観察

下記に示す手順で側脳室の後角と下角を剖出する。① 頭頂葉の皮質を切除する。このとき放線冠の線維が内側の尾状核と外側のレンズ核の間を

走行することを確認する。

□ 放線冠

□ 内包

□ 視放線

□ 聴放線

□ 島皮質

□ 前障

□ 外包

□ レンズ核(被殻)

□ 側脳室前角

□ 側脳室中心部

□ 尾状核頭

□ 尾状核体

□ 尾状核尾

□ 視床

□ 分界条

□ 側脳室脈絡組織

□ 脳弓ヒモ

□ 脈絡ヒモ

□ 付着板

□ 側脳室脈絡叢

□ 脈絡叢静脈

□ 視床線条体静脈

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② 側脳室は中心部からは ( 後 ) 外側下方へ向かっている。ゾンデ等で方向を確かめたらメス或いはハサミで後角の外側壁をつくる放線冠を切り開く。

③下角は後角の下端から前方に向かっている。外側壁を構成するレンズ核下方にある放線冠の線維を切り開く。

④ 後角と下角の外側壁を適当に取り払い、各々の内側壁と下壁を十分観察できるようにする。このとき内側壁や下壁を破損しないように注意する。特に下角の内側壁と外側壁は破損しやすいので注意する。

※予め下角の外側壁を取り除いた後、中心部とつなげてもよい。この場合の内側壁と下壁の破損には十分注意する。

上記の剖出が終了した時点で、側脳室の全貌が把握できるようになる。側脳室がレンズ核を取り巻くように存在することを立体的に把握せよ。⑤ 次いで、脳弓を室間孔の近くで切断する。⑥ 切断した脳弓を側脳室と第三脳室の脈絡組織から注意深く切り離しながら後方に反転する。⑦ さらに下前方に向かって側脳室下角の前端あたりまで脳弓を側脳室脈絡組織から分離する。⑧ この段階で脳弓を含む部分と含まない部分は側頭葉下面の鈎付近の脳実質のみでつながっ

ているので、この部位を引きちぎるように取り去る。このとき視索等を破損しないように注意する。

以上の操作により大脳半球を脳弓を欠く部分と脳弓を含む部分の 2 つに分けることができる。

a)脳弓を欠く部分の観察

側脳室の脈絡組織が下角から中心部・前角を通り、室間孔を通過して第三脳室脈絡組織

Telachorioideaventriculitertiiに移行し後方へ向かっていることがわかる。

この脈絡組織内に静脈が存在し、側脳室脈絡組織内には脈絡叢静脈が、第三脳室脈絡組織内

には内大脳静脈Vv.cerebriinternaeが走ることを確認せよ。

室間孔付近では視床線条体静脈が脈絡叢静脈と合流し内大脳静脈となることを確認せよ。

b)脳弓を含む部分の観察

こちらでは脳弓体、脳弓脚、海馬采、脳弓ヒモ及び歯状回がよく観察される。各々の位置関

係などを立体的に把握せよ。

c)側脳室下角の観察

海馬Hippocampus

下角の内側壁は海馬により構成される。海馬の表面は白質で覆われ、これを海馬白板Alveus

hippocampiと呼ぶ。海馬の下角先端部は海馬趾Digitationeshippocampiとよばれる突起が

数個存在し、海馬趾のある部位全体を海馬足Peshippocampiと呼ぶ。

下壁

下壁は側副隆起Eminentiacollateralisと呼ばれる隆起で出来ている。これは側頭葉下面に

ある側副溝Sulcuscollateralisの溝が深いために側脳室では隆起して観察される。

側副隆起の後部は三角形状を呈するので側副三角Trigonumcollateraleと称する。

d)側脳室後角の観察

後角の内側壁上部には前上方から後下方へ向かう数個の膨らみがある。これが後角球

Bulbuscornusposterioris で大鉗子によって側脳室内につくられる隆起である。

内側壁下部にも鳥距Calcaravisと呼ばれる高まりがあり、これは鳥距溝Sulcuscalcaninus

によってつくられる。

□ 室間孔

□ 第三脳室脈絡組織

□ 脈絡叢静脈

□ 内大脳静脈

□ 脳弓各部

□ 歯状回

□ 海馬

□ 海馬白板

□ 海馬趾

□ 海馬足

□ 側副隆起

□ 側副溝

□ 側副三角

□ 後角球

□ 大鉗子

□ 鳥距

□ 鳥距溝

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側脳室各部の壁はどのような構造で形成されているか、下の表にまとめよう。

上壁 下壁 内側壁 外側壁

前角・中心部

下角

後角

4. 間脳の観察

脳弓を欠いた標本を用いて間脳を観察する。

1)第三脳室の観察

第三脳室Ventriculustertiusには現在のところ脈絡組織が残存しているはずである。もう一度

脈絡組織や脈絡叢及び内部に存在する内大脳動脈Vv.cerebri internaeやこれに注ぐ側脳室の

脈絡叢静脈V.chorioidea と視床線条体静脈V.thalamostriataを確認し、全て取り除く。

第三脳室の外側壁中央部には視床下溝Sulcussubthalamicusとよばれる溝が存在し、ここが視

床と視床下部Hypothalamusの境界になっている。

視床には視床間橋Adhesiointerthalamicaという索条の灰白質 ( 神経膠 ) があり、これにより

左右の視床が連絡していることが多い。( 視床間橋が欠ける場合もある。)

第三脳室の前壁は非常に薄い膜で出来ている。これが終板Laminaterminalisである。終板の

下方には視交叉Chiasmaopticumがあり、終板と視交叉の間には小さな陥凹、即ち視交叉陥

凹Recessusopticusがある。視交叉陥凹のやや後方には漏斗があり、漏斗にも第三脳室側に漏

斗陥凹Recessusinfundibuliがみられる。

※漏斗が無い場合が多く、そのため漏斗陥凹はよく観察できない場合が多い。

2)視床下部Hypothalamus の観察

一部 1) で観察しているが、視床下部の観察を行う。視床下部のうち第三脳室の下壁にあたる

と部位には前方より漏斗Infundibulumや乳頭体Corpusmammillareがみられる。乳頭体の前

方で漏斗の周囲にあたる部位は灰白隆起Tubercinereumと呼ばれる。

視交叉を後方に辿ると視索Tractusopticusに移行し、後外側へ向かい中脳近くに到達する。

視索後部では線維束が内側根Radixmedialisと外側根Radixlateralisの二つに分かれている

ことが確認できる。内側根を内方に辿ると上丘腕Brachiumcolliculisuperiorisを介して上丘

colliculussuperiorに向かうことが確認できる。また、外側根は小さな隆起である外側膝状体

Corpusgeniculatumlateraleに至ることが容易に観察される。外側膝状体からは視放線がでて、

視覚野に投射している。視交叉 ( 視神経 ) から視覚野に至る視覚の伝導路について確認せよ。

※内側根は上丘腕に入る前に内側膝状体Corpusgeniculatummedialeに入るように見えるが、

解剖学的には線維連絡はない。

3)視床の観察

今回の標本では室間孔近くに視床前結節Tuberculumanteriusthalamiがみられる。後方には

視床枕Pulvinarという大きな隆起がみられる。各々視床前核と後核を内部におさめている。

第三脳室脈絡組織を取り除いた後には視床髄条Striamedullaristhalamiと呼ばれる線条がみら

れこの部位に第三脳室脈絡組織の付着部位である視床ヒモTeniathalamiがある。

4)視床上部Epithalamus

a)手綱Habenula

視床髄条を後方に辿ると手綱に至る。左右の手綱は松果体Corpuspinealeの前で交叉し手

□ 視床下溝

□ 視床

□ 視床下部

□ 視床間橋

□ 終板

□ 視交叉

□ 視交叉陥凹

□ 漏斗

□ 漏斗陥凹

□ 乳頭体

□ 灰白隆起

□ 視索

□ 内側根

□ 外側根

□ 上丘腕

□ 上丘

□ 外側膝状体

□ 視放線

□ 内側膝状体

□ 視床前結節

□ 視床枕

□ 視床髄条

□ 視床ヒモ

□ 手綱

□ 松果体

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綱交連Commissurahabenularumを形成し、また、その後外側端は三角形状に広がって手

綱三角Trigonumhabenulaeを形成する。手綱三角は大変狭い領域なので注意深く観察せよ。

b)松果体の周囲

松果体Corpuspinealeを矢状断面で観察すると前方は第三脳室が入り込んでいることが観

察される。この部位を松果陥凹Recessuspinealisと呼ぶ。松果陥凹の直ぐ上部にも同様な

陥凹が存在し、これを松果上陥凹Recessussuprapinealisと呼ぶ。

松果体の下部には後交連Commissuraposteriorという交連線維束が走行している。

※視床上部は非常に狭い領域であり、うまく観察できないことも多い。

5)視床後部Metathalamus

外側膝状体と内側膝状体を特に視床後部とよぶことがある。

外側膝状体が視索の外側根を受け、上丘腕を介して上丘と、視放線を介して視覚野とつながっ

ていること、及び内側膝状体が下丘腕Brachiumcolliculi inferiorisを介して下丘Colliculus

inferiorとつながっていることを確認せよ。

5. 終脳の断面の観察

左大脳半球を水平断或いは前頭断した標本を作成し、断面にみられる構造を観察する。

断面の作成各グループはどちらかの切断を行い、近くのグループと共同で観察する。どのグループがどの切断をするかは教官が指定するので説明をよく聞くようにせよ。水平断は前交連の直上と脳梁膨大の直下を通る面で行う。前頭断は前部 ( 前有孔質を通る面 )、中央部 ( 赤核を通る面 ) 及び後部 ( 視床枕を通る面 ) の 3ケ所で行う。何れの場合も脳刀を用い、ノコギリで切る時のように刃を前後させず一気に切断する。

下記に各断面で観察する最低限の項目をあげる。下記以外の部位も名称があげられる構造は全て

観察せよ。

1)水平断面の観察

Cortexcerebri

SulcusetGyrus

Corpusstriatum

Nucleuscaudatus

Nucleuslentiformis

Putamen Globuspallidus

Laminamedullarismedialisetlateralis

Claustrum

Capsulaexterna

Capsulainterna

Radiatiooptica

2)前頭断前部の観察

Ventriculuslateralis(Cornuanterius)

Caputnucleicaudati

Nucleuslentiformis

Claustrum

Capsulaexterna

Corpusamygdaloideum     観察できない場合が多い。

□ 手綱交連

□ 手綱三角

□ 松果陥凹

□ 松果上陥凹

□ 後交連

□ 下丘腕

□ 下丘

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3)前頭断中央部の観察

ここでは大脳皮質から放線冠として集まった投射線維が内包を通り中脳へ下行して行く様子を観察せよ。

Ventriculuslateralis(Parscentralis,Cornuinferius)

CorpusnucleicaudatietCaudanucleicaudati

Thalamus

Capsulainterna

Hippocampus

4)前頭断後部の観察

Ventriculuslateralis(Cornuposterior)

Hippocampus

赤核を通る前頭断面で観察される構造を書き入れてみよう。

外側内側

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水平断面で観察される構造を書き込んでみよう。

これで脳実習を終了する。各人よく復習し、これからの医学の学習におおいに役立てられることを

期待する。

内側外側

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到達目標とプレテスト問題

実習に先立って行うプレテストの問題を下記に提示する。プレテストの内容は当日行われる実習内容の予習であると同

時に、実習の到達目標でもある。各人十分に学習をしておくこと。

 第1回(平成 27年 1月 26 日)課題1. 脳幹の腹側面において、各脳神経根がどのように局在しているのか、模式図を描いて説明しなさい。

課題2. 脳底部に観られる動脈は脳幹の腹側面においてどのように局在しているか。模式図を描いて説明しなさい。

課題3. 中脳の横断面(上丘レベル)ではどのような構造が観察できるか、模式図を描いて説明しなさい。

 第2回(平成 27年1月 28 日)

課題1. 菱形窩の模式図を描き、ここに観られる各種構造を指し示して説明しなさい。

課題2. 菱形窩が観られる状態の脳幹の背側面の模式図を描き、脳神経核の存在部位を記入して示しなさい。

課題3. 終脳外側面における脳溝と脳回について模式図を描いて説明しなさい。

問題4. 小脳の正中矢状断面で観察できる構造について模式図を描いて説明しなさい。

 第3回(平成 27年 2月 2日)

課題1. 終脳内側面および下面における脳溝と脳回について模式図を描いて説明しなさい。

課題2. 嗅脳領域の模式図を描き、説明しなさい。

課題3. 終脳内にみられる代表的な連合線維の走行を示す模式図を描きなさい。

 第4回(平成 27年2月 3日)

課題1. 側脳室中心部における脳弓ひも、脈絡組織、脈絡ひも、付着版、視床線条体静脈の相対的位置関係がわか

る模式図を周辺の構造とともに描き説明しなさい。

課題2. 終脳において、尾状核頭および尾、被殻、淡蒼球、視床が同時に観られる水平断面の模式図を描き、他に

観察されうる構造を書き入れて説明しなさい。

課題3. 終脳の尾状核頭および尾、被殻、淡蒼球、視床と脳幹の赤核が同時に観られる前額断面の模式図を描き、

他に観察されうる構造を書き入れて説明しなさい。

問題4. 第三脳室外側壁およびその近傍で観察できる構造について模式図を描いて説明しなさい。