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28 機 械 設 計 はじめに まず,今回取り上げる EinScan シリーズのメー カー SHINING3D 社について紹介する。同社は, 2004年に設立され,2014年中国のシンセン株に上 場,現在約 600 名の社員を抱える大企業である。 中国のトップワン 3D ツールの会社として,3D ビジネスシステムを構築している。最先端の 3D スキャナ,3D プリンター,3D サービス,3D オン ラインプラットフォームを有するメーカーとして 全世界へ販路を広げている。主な取引先は,inteladidasAUTODESKHaierPanasonicNISSAN など。中国国内の 3D 関連企業では規模が最大(年 間売上高 80 億円)である。 EinScan の概要 EinScan シリーズは,「EinScan-Pro」, EinScan-Pro +」,「EinScan-SE」,「EinScan-SPの 4 機種をラインアップしている(図1)。コスト パフォーマンスが非常に高いのが最大の特徴。 3D スキャナ市場で同等の性能を持つ 3D スキャナ と比較すると,1/5ほどの価格で購入できる(図2)。 価格は安価だが,性能はプロ仕様の精度(スキャ ン精度 0.05 mm)で,誰でも簡単に操作できる。 EinScan-SE/SP は,卓上型の低価格 3D スキャ ナである。スキャン精度は 0.03 mm,スキャン範 囲は30~700 mm,スキャン速度は 1 分(SE は2分)。 また,EinScan シリーズに共通することだが,世 界初の白光 LED を光源としている。 EinScan-Pro は,ハンディでの使用から卓上で のスキャンなどさまざまな形態で使えるのが特徴。 手で持って使用すること(ハンディ式)はもちろん, 三脚・ターンテーブルを使用したオートマティッ クスキャン(固定式)も可能である。大小さまざま なサイズに対応し,対象物によってスキャンモー ドが選択できるため,汎用性に優れ幅広い用途に 使用できる。また,オプションのカラー取得モジ ュールを使用することでフルカラーでのスキャニ ングにも対応している。ファイル出力は STL OBJ など 5 種類のファイル形式に対応しており, スキャンしたデータをそのまま 3D プリンターで 造形することも可能である。スキャン精度は 0.05 mm,スキャン範囲は 30~4,000 mm解説 4 プロ仕様で使える,初めての 低価格 3D スキャナ EinScan 日本 3D プリンター 柳 佳男 *やなぎ よしお:海外業務部 図1 EinScan シリーズ

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28 機 械 設 計

はじめに

 まず,今回取り上げるEinScanシリーズのメーカーSHINING3D社について紹介する。同社は,2004年に設立され,2014年中国のシンセン株に上場,現在約600名の社員を抱える大企業である。中国のトップワン3Dツールの会社として,3Dのビジネスシステムを構築している。最先端の3Dスキャナ,3Dプリンター,3Dサービス,3Dオンラインプラットフォームを有するメーカーとして全世界へ販路を広げている。主な取引先は,intel,adidas,AUTODESK,Haier,Panasonic,NISSAN

など。中国国内の3D関連企業では規模が最大(年間売上高80億円)である。

EinScanの概要

  EinScan シ リ ー ズ は,「EinScan-Pro」,「EinScan-Pro+」,「EinScan-SE」,「EinScan-SP」の4機種をラインアップしている(図1)。コストパフォーマンスが非常に高いのが最大の特徴。3Dスキャナ市場で同等の性能を持つ3Dスキャナと比較すると,1/5ほどの価格で購入できる(図2)。価格は安価だが,性能はプロ仕様の精度(スキャン精度0.05 mm)で,誰でも簡単に操作できる。 EinScan-SE/SPは,卓上型の低価格3Dスキャナである。スキャン精度は0.03 mm,スキャン範囲は30~700 mm,スキャン速度は1分(SEは2分)。また,EinScanシリーズに共通することだが,世界初の白光LEDを光源としている。 EinScan-Proは,ハンディでの使用から卓上でのスキャンなどさまざまな形態で使えるのが特徴。手で持って使用すること(ハンディ式)はもちろん,三脚・ターンテーブルを使用したオートマティックスキャン(固定式)も可能である。大小さまざまなサイズに対応し,対象物によってスキャンモードが選択できるため,汎用性に優れ幅広い用途に使用できる。また,オプションのカラー取得モジュールを使用することでフルカラーでのスキャニングにも対応している。ファイル出力はSTLやOBJなど5種類のファイル形式に対応しており,スキャンしたデータをそのまま3Dプリンターで造形することも可能である。スキャン精度は0.05 mm,スキャン範囲は30~4,000 mm。

解説4

プロ仕様で使える,初めての低価格3DスキャナEinScan

日本3Dプリンター 柳 佳男*

*やなぎ よしお:海外業務部

図1 EinScanシリーズ

29第 62 巻 第 8 号(2018 年 7 月号)

特集設計の可能性を広げる IT技術活用の現在

 EinScan-Pro+は,同シリーズの中でも最高レベルの精度(0.05 mm)と広いスキャンエリア(最大4 m)を誇る。EinScan-Proと同様の機能に加え,EinScan-Pro+は,毎秒55万ポイントの点で対象物を認識するため,非常に高スピードでスキャンできる。 上述したように,「EinScan-Pro」「EinScan-Pro+」は,ハンディ式・固定式両方に対応しており,幅広い用途で使用できるが,用途に合せて下記の4種類からスキャン方式を選択する必要がある。 1. HDスキャンモード(ハンディ):スキャンの

対象物にマーカーを貼り,マーカーで位置合せを行うスキャン方式。大きなものを高精度にスキャンする場合に最適。

 2. スピードスキャンモード(ハンディ):HDスキャンよりも精度は落ちるが,スキャンス

ピードが早く,カラースキャンも可能。また対象物の特徴を見てスキャンするので,マーカーを貼る必要がない。

 3. オートスキャンモード(固定):ターンテーブルを使用した自動スキャンモードであり,ボタン1つでスキャンすることが可能。ターンテーブルマーカーを基準に位置合せを行う。また対象物の向きを変えて追加スキャンした後に自動でデータの位置を合せるため,精細なスキャンが可能。

 4. フリースキャンモード(固定):ターンテーブルに乗らない大きいサイズのスキャンの場合に使用する。1ショットずつスキャンしていく。こちらもソフトのほうでスキャンデータの自動位置合せが可能。

図2 3Dスキャナ市場でのポジション(上:ハンディ式,下:固定式)

ハンディスキャン値段

値段

500万円

300万円

100万円

10万円

100万円

10万円

性能

性能

1,000万円

200万円

Comparisonchart

商品名

スキャン方式

解像度スキャン速度スキャン範囲タイプ価格

EinScan‒ProEinScan‒Pro+

Structuredlight/linelaser0.1‒0.3mm

10‒15fps

30‒4000mm

ハンディ/固定909,000円

A社3Dスキャナ

Structured light

0.03mm

1,000,000点/秒

40,000,000mesh/1GBRAMハンディのみ3,900,000円

B社3Dスキャナ

Line laser

0.1mm

550,000点/秒

50‒3000mm

ハンディのみ5,900,000円

Comparisonchart

商品名

解像度

スキャン速度

スキャンサイズ

価格

EinScan‒SEEinScan‒SP

0.1mm0.03mm

約3分

700×700mm

198,000円498,000円

EinScan‒ProEinScan‒Pro+

0.05mm

2秒/ショット

30‒4000mm

1,000,000円

C社3Dスキャナ

0.5mm

約12分

203×203mm

72,014円149,800円

D社3Dスキャナ

0.06mm

124×120mm

2,000,000円

30 機 械 設 計

EinScanの使用プロセス

 EinScanの使用方法は,上述している通り,初心者でも扱えるほど簡単である。 今回は「EinScan-Pro+」を例に挙げて説明する(基本的な使用方法は,全シリーズ共通)。操作プロセスは以下の図3の通りである。

 1.キャリブレーション 初めてEinScanソフトウェアを起動する際,使用するスキャナを選択すると自動的にキャリブレーション画面に入る(次回以降は毎回キャリブレーションする必要はない。精度が悪いと感じた際や,大きな移動が生じた場合などに行う)。 スキャナから十字線が照射されるので,付属のキャリブレーションボードを使用し,スキャナを上から下へ(垂直)ボードの中央にある白い枠に照

図3 操作プロセス

保存

メッシュ化

スキャン完了

スキャン編集

スキャン開始

明るさを調整

カラー,解像度を選択解像度を選択

プロジェクト設定

Rapidスキャン

HDスキャン

スキャン編集

スキャン開始

1回転ショット数設定

明るさを調整

HDR設定

角度,距離を調整

位置合せ方式選択

カラー選択

プロジェクト設定

オートスキャン

フリースキャン

スキャンモード選択

キャリブレーション

デバイスの選択

31第 62 巻 第 8 号(2018 年 7 月号)

特集設計の可能性を広げる IT技術活用の現在

射しながら,移動する(図4)。十字線がなるべく白い枠からはみ出さないようにするとより早く綺麗にキャリブレーションが可能。 横に動画と一緒に日本語での説明が出る。画面ガイドに従い,キャリブレーションボードに同梱のキャリブレーションスタンドを装着して向きを変える。5方向の撮影がすべて終了すると計算を行う。画面の進捗を示すバーが100%になるとカメラのキャリブレーションが完了。 キャリブレーションを行う途中,周りの光の環境が変わると,ホワイトバランスに影響が出る場合がある。以下の場合はホワイトバランスのキャリブレーションの必要がある。初期設定・長時間の未使用・輸送時に強い振動を受けた場合・スキャン中に位置合せがうまくいかない場合・スキャンが不完全で品質が良くない場合・光の環境が変わり,カラースキャンを行う場合など。 2.スキャン方式の選択 EinScanソフトウェアにて「固定スキャン」を選択すると,「フリースキャン」と「オートスキャン」の選択画面に入る。オートスキャンは,大きさが200×200×200 mm以下の対象物の場合に使用する。フリースキャン(ターンテーブルなし)は対象物の重量が5 kg以上,あるいは200×200×200 mmより大きい場合に使用する。 3.スキャン前の調整 (1)スキャン距離 スキャンを開始する前に,スキャンと対象物の距離を350~450 mmの間に調整する。物体に照射された十字がハッキリと映っている状態が,最適

なスキャン距離となる。 (2)明るさ調整 カメラビューボードの下に明るさ調整バーがある。調整バーを使用し,ビューボードに表示するスキャン対象物がはっきり認識されるまで調整する。明るすぎる場合は赤く表示され,暗すぎる場合は黒く表示される。適切な明るさは赤い部分が少しあるくらいとなる(図5)。 4.固定スキャン開始 オートスキャンではターンテーブル1回転がスキャンの単位で,1回転すると次の操作が可能になる。1回の回転ではすべてスキャンすることは

暗すぎ(×)適切( )明るすぎ(×)

図5 明るさ調整

図4 キャリブレーションの様子