平成 28 年度 欧州超短期派遣プログラム(フランス・パリ) 報告書 · 2017....

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平成 28 年度 欧州超短期派遣プログラム(フランス・パリ) 報告書 平成 29 3 東京工業大学 グローバル人材育成推進支援室

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平成 28 年度

欧州超短期派遣プログラム(フランス・パリ)

報告書

平成 29年 3月

東京工業大学

グローバル人材育成推進支援室

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目次

1.海外派遣プログラムの目的..........................................4

2.参加学生の紹介と研修日程

2-1.派遣プログラム日程..........................................5

2-2.参加学生の紹介..............................................6

3.フランスの概要...................................................7

4.訪問先の詳細

4-1.キュリー博物館について.......................................9

4-2.科学技術博物館について......................................10

4-3.シテ科学技術博物館について..................................12

4-4.パリ第六大学について

4-4-1.キャンパスの概要......................................15

4-4-2.講義(Lecture)の概要...................................16

4-4-3.学生交流..............................................19

4-5.アールゼメティエについて

4-5-1.キャンパスの概要......................................20

4-5-2.講義(Lecture)の概要...................................22

4-5-3.研究室見学............................................23

4-5-4.図書館訪問............................................24

4-6.OECD について

4-6-1.OECD の概要...........................................25

4-6-2.オフィス見学..........................................26

4-6-3.その他...............................................27

4-7.Dassault Systemsについて

4-7-1.Dassault Systems の概要................................28

4-7-2.企業見学..............................................28

4-7-3.Dassault Systems が求める人材、採用プロセス..............29

4-7-4.東工大の発表..........................................30

5.その他

5-1.食事......................................................31

5-2.街の様子...................................................33

5-3.その他.....................................................34

6.所感............................................................36

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1.海外派遣プログラムの目的

本プログラムは、3,4 年生の参加については、グローバル理工人育成コースの下記の 4つ

のプログラムのうち、4)実践型海外派遣プログラムの一環として実施された。

1) 国際意識醸成プログラム: 国際的な視点から多面的に考えられる能力、グローバ

ルな活躍への意欲を養う。

2) 英語力・コミュニケーション力強化プログラム: 海外の大学等で勉学するのに必

要な英語力・コミュニケーション力を養う。

3) 技術を用いた国際協力実践プログラム: 国や文化の違いを超えて協働できる能

力や複合的な課題について、制約条件を考慮しつつ本質を見極めて解決策を提示

できる能力を養う。

4) 実践型海外派遣プログラム: 自らの専門性を基礎として、海外での危機管理も含

めて主体的に行動できる能力を養う。

グローバル理工人育成コースにおける 4) の実践型海外派遣プログラムのねらいは、1)

〜3)のプログラム履修後に学生を海外へ派遣し、現在まで育成された能力を活用し、自身

の今後の研究やキャリア形成の参考となるような経験を積むことであり、コースの集大成

として位置づけられている。

実践型海外派遣プログラムは下記の 4 つの能力の育成を目指すものである。

1) 自らの専門性を基礎として、異なる環境においても生活でき、業務をこなす力を

持ち、窮地を乗り切るための判断力、危機管理能力を含めて自らの意思で行動す

るための基礎的な能力を身につけている。

2) 異文化理解が進み、相手の考えを理解して自分の考えを説明できるコミュニケー

ション能力、語学力、表現力を身につけている。

3) 海外の様々な場において、実践的能力と科学技術者としての倫理を身につけ、チ

ームワークと協調性を実践し、課題発見・問題解決能力を発揮して、新興国にお

ける科学技術分野で活躍するための基礎的な能力を身につけている。

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2.参加学生の紹介と研修日程

2-1.派遣プログラム日程

行動 内容 宿泊

2/28(火) 10:50 東京(羽田)発 JAL45 便 パリ (Hotel Mercure

Paris Gobelins

Place d’Italie)

15:35 パリ(シャルル・ドゴール)着

3/1(水) パリ第六大学 講義

3/2(木) パリ第六大学 講義

研究室見学

3/3(金) AM Dassault Systems 企業紹介・見学

PM パリ第六大学 学生交流

3/4(土) 科学技術博物館 見学

3/5(日) シテ科学産業博物館 見学

3/6(月) アール・ゼ・メティエ 大学紹介・学生交流

講義・研究室見学

3/7(火) AM アール・ゼ・メティエ 研究室見学

PM OECD 日本政府代表部 OECD 概要紹介・質疑応答

3/8(水) キュリー博物館 見学

3/9(木) 19:00 パリ(シャルル・ドゴール)発 JAL46 便 機中

3/10(金) 14:55 東京(羽田)着

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2-2.参加学生の紹介

氏名 専攻 学年 性別

石浦 史也 制御システム工学科 B4 M

仁科 薫 建築学科 B3 F

日野 真由子 機械知能システム学科 B3 F

牧野 晴人 化学科 B3 M

松沢 純平 機械宇宙学科 B3 M

朝倉 めぐみ 機械科学科 B2 F

飯野 翼 生命工学科 B2 M

大崎 実紗 制御システム工学科 B2 F

杉崎 嵐 情報科学科 B2 M

杉崎 麻里亜 経営システム工学科 B2 F

河合 亜美 第 3 類 B1 F

Fig.2 集合写真

(左から 高本さん,河合,仁科,朝倉,杉崎,牧野,杉崎,石浦,飯野,松沢,大崎,日野,太田先生)

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3.フランスの概要

(執筆担当:河合 亜美)

フランス共和国は、西ヨーロッパに位置する。日本からの時差は-8 時間である。フラン

スの概要は図 3.1 の通りである。GDP はアメリカ、中国、日本、ドイツ、イギリスに次ぐ

世界第 6 位である。農業用地が国土の約 6 割、EU 農用地面積全体の 16%を占めており、

西ヨーロッパ最大の農業大国である。また、農産物輸出額は米国、オランダ、ドイツ、ブ

ラジルに次ぐ世界第 5 位で、農産物の輸出大国でもある。主要農産物は、小麦、大麦、と

うもろこし等の穀物、てんさい等。加工品では、ワイン(輸出額世界第 1 位(2013 年))、

チーズ(同 3 位)等である。 工業は、宇宙・航空産業、原子力産業、化学産業が盛んであ

る。観光客到着数世界第 1 位、世界遺産登録数世界第 4 位と、観光業も栄えている。

首都であるパリは特別市で、人口は 225 万人、面積は 105.4km2である。シテ島を中心に

時計回りに割り振られた 20 の行政区により構成される。市内をセーヌ川が貫いており、セ

ーヌ川の北側は右岸、東側は右岸と呼ばれる。シュリー橋からイエナ橋までの 8km の川岸

は、中州であるシテ島とサン・ルイ島、および区域内に架かる橋も含め、世界遺産に登録

されている。

Fig.3.1 フランス共和国の位置

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Table.3 フランス共和国の概要

人口 6,633 万人

面積 54 万 4000km2

通貨 ユーロ (€1=¥114 2016/10/10 付為替相場)

宗教 カトリック、イスラム教、プロテスタント、ユダヤ教

政治体制 共和制

参考文献

・ 外務省「フランス基礎データ」

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/france/data.html#section1

・ 農林水産省「フランスの農林水産業概況」

http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/k_gaikyo/fra.html

・ フランス観光開発機構「パリのセーヌ河岸」http://jp.france.fr/ja/news/42748

・ Google Map https://www.google.co.jp/maps/place/フランス

/@45.8632093,-6.7670347,5z/data=!3m1!4b1!4m5!3m4!1s0xd54a02933785731:0x6bf

d3f96c747d9f7!8m2!3d46.227638!4d2.213749

Fig.3.2 パリ市の行政区の配置

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4.訪問先の詳細

4-1.キュリー博物館について

(執筆担当:飯野 翼)

キュリー研究所はパリ第六大学の研究所が集まる Campus Curie 地区の一区画を成す。

その研究所のわずかな敷地を占めるキュリー博物館を訪問した。博物館にはキュリー夫人

を中心としたキュリー一家の功績や社会への影響、実験装置に居室などが展示・説明され

ていた。説明はフランス語と英語が併記された一般人向けのものであり、実験装置につい

ては化学的な原理の詳細はほとんど記載されていない。見学するときは、キュリー一家の

偉業と歴史を感じることを第一に考えるべきであろう。

また、昨年度の超短期派遣報告書によると、博物館館員

の方から実験装置の詳細なメカニズムについて説明を受け

ることができるとされていたが、今回私が “Could you

explain the mechanism of that device?”と尋ねたら “It’s

too difficult.”と返され、説明書きにあるような簡単な内容

しか話していただけなかった。館員さんにも、詳細な知識

を持っている方といない方がいるようなので、どのような

説明を受けることができるかは訪れたときの運次第なのだ

ろう。

見学時、地元の学生と思われる子供たちが先生に連れら

れて来ていたり、入口近くにある来館記念ノートにはキ

ュリー夫人への多くの賛辞や感謝がコメン

トされていたり、さらには博物館運営のため

の募金箱には多くの寄付がされていたりと、

キュリー一家がいかに愛されているかが実

感できた。また、博物館近くのパンテオン地

下にあるキュリー夫妻の棺には、他の偉人に

比べて多くの花束が手向けられていた。世の

中に数多くの偉大な発見・発明をもたらした

キュリー一家について、その歴史を含めて心

の底から知りたいと考えるならば、どちらも

一度は訪れることを勧めたい。

来館記念ノート(右)と募金箱(左)

見学に来ていた地元の学生たち

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πの部屋入口 講義の様子

4-2.科学技術博物館について

(執筆担当:杉崎 嵐)

パリ8区、誰もが知る凱旋門とシャンゼリゼ

通り、そこから数分の科学技術博物館へと足を

運んだ。1900 年のパリ万国博覧会のために作

られた美術館グランパレ、その一部として

1937 年に国際見本市のために建てられたのが

科学技術博物館である。

案内はほぼフランス語なので英語のガイド

をつけて入場すると、週末のためか親子連れで

賑わっていた。館内の展示は生物、宇宙、科学、

物理などといったように分類されていた。また至る所に実験スペース、講義と実演などが

設けられており、様々な形式で我々と科学がより密接となって楽しめることも子供人気の

ひとつなのだろう。兎にも角にも、日本にある一般的な科学館などとは一線を画した雰囲

気であったので、その様子を皆さんにお伝えしたい。

日本では数学の展示などは極めて珍しいが、この科学技術博物館には数学のブースもあ

り、今回取り上げるπの部屋はその中のひとつである。有名なオイラーの等式に迎えられ

円状の部屋に入ると、壁一面に円周率、数学者、数学の歴史がびっしりと。またこの部屋

には黒板があって、授業を受けることもできる。私が訪れたときは親子3人で授業を受け

ており、強い印象を受けたのと同時に、長い歴史において欧州で数多くの数学者が誕生し

た理由のほんの一部が垣間見えたように感じた。

科学技術博物館の外観

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化学の実演の様子 単体の元素表

化学といえば実験を思い浮かべる人も多いだろう。左の写真はまさにその実験が行われ

ている様子である。また、次の写真は我々がよく目にする元素記号表であるが、各元素の

単体が展示されている。そしてそのほとんどは普

段目にすることのないものである。そのため、こ

のような展示は化学に疎い私でさえも目を光らせ

られるようなものばかりであった。

さらに、日本の博物館ではあまり見られなか

った光景が、こちらのアリの行動の様子を観察

できる展示だ。生物を扱う展示はあまり馴染み

のないものであったが、こちらの博物館ではア

リをはじめとした生物の展示ブースがある。中

でもアリの展示は豊富で、こちらのような巣穴

を観察するもの以外にも、繁殖の様子を観察で

きるものなど、興味を惹かれる展示が数多くあ

った。

今回ここで紹介したのはほんの一部ではあるが、我々が持つ博物館に対するイメージと

は対照的に、展示以外にも楽しめる工夫が数多く施されていた。私は今まで、博物館とい

うのは展示物を能動的に見たり触ったりして楽しむものだと思っていたが、実演や授業な

どで受動的に楽しむこともできることを、今回の体験を通じて知ることができた。

また、前提知識がなくとも老若男女問わずに楽しめることも、日本のそれとは大きく異

なるものであった。

アリの展示

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4-3.シテ科学技術博物館について

(執筆担当:松沢 純平)

○基本情報

(アクセス)メトロ 7 号線 Porte de la Villette 駅 地上に出てすぐ

(開館日・時間)月曜休館、火~土 10:00~18:00、日 10:00~19:00

(入館料)常設展示+プラネタリウム 12 ユーロ(25 歳以下は 9 ユーロ)

2 枚まとめ買いで 16 ユーロ、3 枚まとめ買いで 24 ユーロ

○展示と感想

我々は土曜日の昼から 2 時間ほどかけて常設展示を一周見て回った。もし時間があれば、

一つ一つの展示の説明を詳しく読んだり、プラネタリウムや別料金のシアターに行ったり

と、じっくり一日滞在しても十分楽しめそうなラインナップの博物館であった。常設展示

は数学・宇宙論・地球科学・物理学・生命科学・環境などのカテゴリーごとにエリアが分

かれていて、それぞれに直観的でわかりやすい図解や映像、実験装置などが用意されてい

る。フランス語での説明に加え、一部英語での説明も併記されているので、展示の内容や

背景にある理論は、理解しながら体感することができる。

土曜日ということもあり、家族連れが多く来場しているのも印象的であった。父親が子

供に展示について説明しているような場面もよく見られた。展示は子供にもわかりやすい

ようクイズ仕立てなどになっているものの、背景にある理論は理系の大学生が見ても「な

るほど!」となるような本格的なものが多い。特に数学の展示では、方程式や言葉を多用

せず、実験や工学への応用で数学的な性質を示す展示が多数あり、フランスの、理学の上

に工学が成り立っている、という教育方針を反映しているように感じた。

シテ科学技術博物館の正面入り口 シテ科学技術博物館の内装

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特に印象に残った展示をいくつか紹介したい。1 つ目は、ピタゴラスの定理に関する展示

である。これは数学の部屋の入口に展示されていて、一番最初に目に入った。写真に示し

たように三角形の各辺の長さを一辺とする正方形が三角形についており、中に入っている

黄色い液体がその面積を表し、𝑎𝑎2 + 𝑏𝑏2 = 𝑐𝑐2の公式を面積の足し算として成り立つことを証

明している。これには訪れた 3 人ともいたく感心してしまい、しばらく展示の前で記念撮

影してしまうほどであった。

2 つ目は、最速降下曲線に関する展示である。ある高さからボールを転がしたとき、直線

の坂(写真中赤の坂)より、下に凸の曲線で描かれる曲線(写真中青の坂)を通る方が速

く下に到達するという。我々は解析力学の授業この曲線が存在していることは知っていた

が、実際にボールを転がす装置は見たことがなかったため、こちらの展示にも非常に感動

した。

○展示以外の施設について

シテ科学技術博物館には、展示以外にもレストランやカフェなども併設されている。ま

た、ミュージアムショップもあり、品ぞろえが大変充実している。科学実験の体験ができ

る子供用キットや、展示が用意されている分野の専門書、科学者のイラストが入ったグッ

ズや科学雑貨まで幅広い。

また、科学博物館らしい遊び心にあふれた募金箱も設置されていた。写真に示したが、

ブラックホールの重力場のようになっていて、中心に向かって回転しながらコインが吸い

こまれていく様子を観察できる。一緒に行ったメンバーは「このデザインだとつい募金し

てしまう」と言いながら、いろいろな種類のコインを入れて落ち方の違いを観察していた。

ピタゴラスの定理に関する展示 最速降下曲線に関する展示

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日ごろから数学や理科に親しんでいる東工大生なら思わず食いついてしまうような展示

がたくさんある。科学の楽しさを再確認できる、ぜひ訪れてほしい博物館だ。

ミュージアムショップの商品 コインが吸いこまれる募金箱

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4-4.パリ第六大学について

4-4-1.キャンパスの概要

(執筆担当:大崎 実紗)

1)UPMC の概要

パリ第 6 大学とは、13 の独立した大学群から成るパリ大学のうちの一つであり、理学・

工学・医学を専門としている。また、本大学は通称 UPMC(Pierre and Marie Curie

University)と呼ばれている。UPMCはフランス全域に計18個のキャンパスを持っており、

我々が訪問したのは Jussieu キャンパスであった。

2)Jussieu キャンパスの概要

本キャンパスはメトロの Jussieu 駅を出てすぐのところにあり、裏はセーヌ川に面して

いる。

近くには動物園や植物園などが併設され

ている公園や、また徒歩圏内に観光地と

して有名なリュクサンブール庭園などが

あり、昼食を食べる場所には困ることの

ない立地であった。キャンパス内の建物

も近代的で、とても過ごしやすく快適で

ある。建物はそれぞれ 0 階部分が連絡通

路のようになっていて雨が降っていても

濡れることなく建物間を移動できる。

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4-4-2.講義(Lecture)の概要

(執筆担当:石浦 史也)

UPMC では 3 つの講義を受けた。1つは Dr.J.Pulpytel による Design of Experience に

関する講義である。Design of Experience は実験計画法のことであり、効率のよい実験方

法を設計(デザイン)し、結果を適切に解析することを目的とする統計学の応用分野であ

る。2 つ目は F.Arefi-Khonsari 教授によるプラズマに関する講義である。プラズマに関す

る基礎知識および、プラズマ用いた研究をいくつか紹介していただいた。3 つ目は蒸留に関

する演習の講義で UPMC の学生に混じって講義を受けさせていただいた。しかしフランス

語での講義であり日本人学生はUPMCの講義の雰囲気を体験できたものの理解はできなか

った。そのため講義内容の詳細は不明なため本レポートでは省略する。

① Design of Experience に関する講義

本講義は Dr.J.Pulpytel に担当していただいた。今回の留学に参加した学生の中には

Design of Experience について知らない学生が多かったため、まず概要をわかりやすく説

明していただいた。図1に示すようにいくつかの因子(Factor)があり、それぞれのパラ

メータを操作することで因子がどのように関係しているかはわからないが(Black Box)、

ある一定の結果(Result)が出てくる。Factor の値や Result の値はわかるが、Black Box が

何であるかを直接観測することが出来ない場合、Factor のパラメータを操作し Result の変

化を見ることで最適な Result を得る必要がある。Design of Experience ではこの時の手法

を研究する学問である。

図 1 :Design of Experience のイメージ図

最適な Result を得るための手法には様々な方法があるが、まず誰もが一番に思いつくの

は OFAT(One factor at a time)ではないだろうか。この方法では一度に一つのパラメー

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タを操作していくことで最適な Result を見つける手法だ。この方法は Factor の数が少な

い場合やパラメータの操作できる範囲が少ない場合には有効であるが、Factor の数が多い

場合やパラメータの操作できる範囲が広い場合には必要な実験数が膨大になり、実験数を

減らすと最適な Result を見つけられない可能性がある。そこで今回の講義では OFTA より

も少ない試行回数で最適に近い Result を見つける方法として SIMPLEX 法や Multi Move

法などを教わった。これらの方法はいまだに研究されているものであり、AI などにも応用

されている。最後に講義の様子を図 2 に示す。

図 2 講義の様子(Design of Experience)

②プラズマに関する講義

本講義は F.Arefi-Khonsari 教授に担当していただいた。講義のはじめにプラズマに関す

る基礎的なことを教えていただいた。プラズマは固体・液体・気体とは異なる第 4 の状態

であり、気体を構成する分子が電離し陽イオンと電子が分かれて運動している。身近で観

測できるプラズマの例としては、雷やオーロラがあげられる。私たちの身の回りで使用さ

れているプラズマには減圧状態で極板間に電圧をかけてやること発生させているものが多

くあり、それらはスパッタや反応性イオンエッチング(RIE)といった形で使用されている。

基礎的な講義の後にプラズマに利用した F.Arefi-Khonsari 教授の研究についていくつか紹

介してくださった。1つはプラズマを利用して表面に数マイクロの凹凸を作ることにより

蓮の葉のように水滴をはじくような表面を作成する研究である。これは表面に数マイクロ

の凹凸を作ったことで水滴と表面の間に空気の層が作成され水滴が表面に接触しないため

である。もう1つはプラズマによって作成されたマイクロ層により薬を一定ずつ浸透させ

る薄膜の研究である。これは常に一定の量を浸透させることが出来るため、薬を過剰に摂

取することがなくなる。これの応用例として薄膜と抗がん剤を組み合わせたパッチの研究

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を紹介していただいた。このパッチをマウスの癌腫瘍に張り付けたところ癌腫瘍の大きさ

が小さくなったというものであった。最後に講義の様子を図 3 に示す。

図 3 講義の様子(プラズマ)

③研究室見学について

2 日目の午後に講義をしていただいた F.Arefi-Khonsari 教授の研究室および電気系の研

究室を見学させていただいた。その様子を図 4 に示す。午前中の講義で教わった薄膜を整

形する機械などを見学させていただいた。研究室には走査型電子顕微鏡などものあり、東

工大と同様の設備が整っているように感じられた。電気系の研究室ではドクターの人たち

の研究を紹介していただいた。電圧によって体積の変化する物質や腐食の抑制などが研究

されていた。

図 4 研究室見学の様子

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4-4-3.学生交流

(執筆担当:大崎 実紗)

UPMC を訪問した中で、現地の学生と交流することができる機会も設けていただいた。

はじめに大学側のスタッフに UPMC の教育体制などについて説明してもらったあと、東工

大について説明するプレゼンを行った。その後は自由に学生と交流する時間となり、それ

ぞれの学生が隣に座っている現地学生などと英語でコミュニケーションをとった。学生交

流の場に来てくれた学生たちは日本に興味のある学生たちが多くすぐに仲良くなることが

できた。そこで連絡先を交換してくれた学生とはその後何度もおすすめのレストランに連

れて行ってもらい、とても有意義な交流であった。

学生交流の様子

交流後連れて行ってもらったバーでの写真

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4-5.アールゼメティエについて

4-5-1.キャンパスの概要

(執筆担当:朝倉 めぐみ)

1)アールゼメティエの概要

アールゼメティエ(Arts et Métiers Paris Tech/フ

ランス国立高等工芸学校)はフランスのグランゼコー

ル(Les Grandes Écoles)である。グランゼコールとは 19 世紀初頭に設立されたフランス独

自の高等教育機関で、工学系、経営系、高等師範学校、国立獣医大学などがある。工学系

グランゼコールはフランスに 200 以上あり、終了時に公布されるエンジニア資格は国家資

格で、修士レベルに相当するため、取得後は博士課程へ進学することができる。グランゼ

コールへの入学は難しく、高校卒業後、2 年間の準備期間を経て、厳しい入学試験に合格

した者だけが 3 年間の Diplôma へ進むことができる。数学、物理、電気、コンピュータ

サイエンス、工学などの分野を学ぶことができる。学生たちは 1 学期間海外へ留学するこ

とと 28 週間インターンシップを行うことが必要である。

アールゼメティエは 237 年の歴史を持ち、学生数は 5800 人と東工大に比べて少ない。

教員は 400 人、職員は 600 人であり、学生数に対して比較的多くの方が働いているといえ

る。フランス全土に Paris、Lille、Cluny など 8 つのキャンパスと 3 つの研究機関を持っ

ている。キャンパスに依らず同じ授業を受講できるため、住んでいる地域に合わせてどこ

のキャンパスに通ってもよい。ただし英語の授業を開講しているのは Paris であり、Paris

では授業が行われていない学年もある。15 の研究所では、エネルギー、交通、医療、住居

環境、未来技術などに関する研究を行っている。アールゼメティエは準備期間において 2

位、エンジニアのための学校として 4 位である。特にフランス国内で有名なグランゼコー

ルである。

2)留学生のための活動

アールゼメティエには 1182 人の留学生がおり、留学生がフランスで、そしてアールゼ

メティエで、充実した学校生活を送れるように支援する活動が多く行われている。例えば、

9 月に新学期が始まるため、その前の 8 月末に Cluny で Integration week が 1 週間ある。

様々な国の学生が集まって、学生同士交流をしたり、ホームステイをしたりする。授業開

始の 3 日前にはコースやテスト日程、キャンパス、フランスでの生活についての面談をし

たり、1 年前に来た先輩の経験談などを聞くことができたりする。International Day も

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あり、約 20 か国の学生がおよそ 100 人参加し、自分の国についてフランス語で発表する。

学期中も 1 週間に一度、何語を話してもよい Café Langues が開かれている。Countrires

Day や Photography Competition などもある。

Master of Science in Mechanical, Energy & Industrial Engineering は 3 年間の

bachelor に続く 2 年間のコースで、5 つの分野、23 のコースに分かれており、その内 8

つのコースでは英語での授業が行われる。このコースの概要を紹介していただいた。毎週

レベルごとに分かれてフランス語の授業を受け、フランスの文化に触れながら、英語で専

門的な分野を学ぶことができる。

3)学生交流

学生連盟(Union des élève,UE)の学生に活動の紹介をしていただいた。UE はヨーロッ

パの学生団体であり 3500 人のメンバーがいる。各キャンパスで行われ、4000 人以上の学

生が参加する Gala parties やFolum Arts et Métiers、スキーのイベントの Ski aux Arts、

スポーツなどの支援を受けている企業の説明会であるGrands UAIsなどを開催している。

杉崎くん、仁科さん、牧野くん、石浦さんが東工大の概要やそれぞれの学習・研究分野に

ついて発表を行った。

筑波大学大学院からアールゼメティエに留学中の日本人学生である原田多鶴さんがど

のような研究を行っているかなどを発表してくださった。

2 日目の最初には様々な国の留学生が集まってくださり、それぞれ出身国に分かれて、

どのようなプログラムに参加しているのか、アールゼメティエで学ぶことの良い点、アー

ルゼメティエを選んだ理由、どのようにフランス語を習得したかなどを話してくださった。

フランス語教師である Juliaがとてもフレンドリーで留学生のフランス語の授業を見学さ

せてくださった.学生は Le Monde を読んで興味を持った記事について、自分の意見をフ

ランス語で発表していた。

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4-5-2.講義(Lecture)の概要

(執筆担当:杉崎 麻里亜)

風力タービン(Wind Turbine)に関する講義を聴講した。風力タービンとは風の運動エ

ネルギーを、他の形態の機械エネルギーへ変換する装置のことである。仮に風速 Vで均一

に風が吹いているとすると、この風が物体に衝突した時、衝突した部分の風速は Vよりも

小さくなる。この時失われた運動エネルギーを、風力タービンを使うことで機械エネルギ

ーへと変換するのである。風の計量にレーザー計測を行い、動いた距離と時間から速度ベ

クトルを求める。最新の風力タービンでは、渦の回転を利用したものが考えられているの

だという。渦の回転を利用することにより、無音かつ低コストを実現できる。このように、

風力タービンのエネルギー変換の効率を良くするための研究をされており、それを実用的

な風力タービンにするということである。専門的でとても難しい内容であり、質問がいく

つか飛び交う中で徐々に理解を深めていった。その後、実際の風力タービンの特性を解析

する実験装置を見学させていただいた。実験装置のスケールの大きさに驚いた。

講義の様子 実験装置の見学

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4-5-3.研究室見学

1)1日目(PIMM,DynFLuid)

(執筆担当:朝倉 めぐみ)

最初に PIMM(Process and Engineering in

Mechanics and Materials)の研究室を見学させて

いただいた。押出成形 (extrusion)と射出成型

(injection)を行う機械があり、射出成型を行う機械

で、面に多くの貫通穴が開いたガスのタンクを作っ

ていた。ガスタンクは高圧に耐えられなければなら

ない。射出成型の機械でタンクを回転させ続けるこ

とで、遠心力を用いて空洞を作ることができるとの

ことであった。レーザー光を当てることで分布荷重

が分かる引張試験機も見学した。

次に DynFLuid(Fluid Dynamics Laboratory)を

訪問した。まずキャビテーションに関する大きなパ

イプを見た。沸騰後に小さい泡が現れるキャビテー

ションという現象が起こると、気泡が壊れてかい食

が起こる場合がある。また、有機体のランキンサイ

クルによって電力を生み出す全長約 5mの装置も見

学した。水だと沸点が 100℃だが、ある有機物質の

液体を用いることで沸点が 25℃程度に下がり低い

圧力でもサイクルを回せるそうだ。

Massouh 先生の研究室では、自動車の風洞実験

に関するビデオを見せていただいた。よどみ点の様

子が見られた。研究室の方にお話を伺った。

2)2日目

(執筆担当:杉崎 麻里亜)

2日目は機械デザイン系と医療機械系の研究室に訪問させていただいた。機械デザイン

系では、一見普通のスニーカーが『右に曲がる、左に曲がる、仲間が近くにいる』などを

スニーカーが特定の色に光ることで信号を送ることができるものや、ある部屋で日焼け止

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めを塗った際の感度を普段の状態から真夏のビーチにいるときまでシミュレーションで

きるという部屋があった。また、医療機械系では、立ったまま全方向から撮れるレントゲ

ンや、部屋中にカメラがあり動きを分析できる部屋、遠隔手術を行う機械などがあった。

これから、手術は遠隔ロボットで行われるようになるだろうという話はよく聞いたことが

あるが、どこか非現実的でかなり先の未来のことだと思っていたので、実際に機械を見た

時かなり驚いた。この日は最新の機械を多く見させていただき、

近未来に来たようなとても刺激的でかなり興奮しました。

4-5-4.図書館訪問

(執筆担当:杉崎 麻里亜)

図書館に案内していただいた。芸術の国ならでは、図書館の壁には絵画がいくつも掛け

てあった。奥のミーティング室に通され、図書館の説明を受け、その後エッフェル塔の設

計図を見せていただいた。とて

も分厚い貴重な本で私たちは

手を触れてはいけなかったが、

設計図から設計初期から完成

までの様子、予算など細かく書

いてあった。メンバーは皆エッ

フェル塔をすでに登ってきた

ので、設計図も想像しやすく、

完成までの様子がとても細か

く描写されていたので、興味深

く本をのぞき込んでいた。

シミュレーションを行う部屋 最新の医療機械 動きを分析する部屋

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4-6.OECDについて

(執筆担当:牧野 晴人)

4-6-1.OECDの概要

1)沿革

第二次世界大戦ののち、当時のアメリカの国務長官ジョージ・マーシャルは、被災した

欧州諸国のための復興援助計画であるマーシャルプランを提案し、推進した。それに連動

する形で、1948 年に欧州経済協力機構(OEEC : Organization for European Economic

Co-operation)がパリに設立された。その後欧州経済は復興していき、1961 年には欧州と北

米が対等のパートナーとして OEEC は発展的に改組され、新たに経済協力開発機構

(OECD : Organization for Economic Co-operation and Development)が設立された。この

過程で行われたヨーロッパ域内諸国間での関税の引き下げなどは、今日の EU に先立つ概

念とも言える。

2)基本情報

本部事務局はパリ 16 区、旧ラ・ミュエット宮殿に置かれている。現加盟国は OEEC の

ヨーロッパ 16 カ国にドイツ、スペイン、アメリカ、カナダを加えた 20 カ国であり、日本

は設立直後の 1964 年 4 月 28 日に加盟した。現在は 35 カ国が加盟している。また、OECD

はフランス語で表記すると OCDÉ(Organisation de Cooperation et de Développement

Économiques)となる。

OECD 設立条約第一条によると、OECD の目的は、「経済成長」「開発」「貿易」の3つ

としており、世界経済の発展、世界貿易の拡大に寄与するものとなっている。これを「税」

「教育」「環境」「貿易」の面から達成するべく、先進国の 2500 人のスタッフが活躍してい

る。これが OECD の「世界のシンクタンク」としての機能である。

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4-6-2.オフィス見学

OECD に到着後、入る前にパスポートとあらかじめ

送られてきていた入場に必要なメールを見せた。さら

に中では金属探知機による検査も行われたが、メンバ

ー全員が引っかかるほどの細かな検査であった。ここ

で OECD のセキュリティの万全さが伺える。これでや

っと受付までたどり着き、入館証を受け取ることがで

きた。

オフィス内部は現代的な装いであった。職員の説明

を聞きつつ、会議室まで案内された。会議室には加盟

国各国の札が設置されており、私は REPUBLIQUE

SLOVAQUE の席に着いた。質問があるときはこの札

を立てるそうだ。この会議室では OECD の概要に関す

るプレゼンを聞き、その後邦人職員との意見交換をお

こなった。

プレゼンの内容は、OECD の沿革、基礎データ、そ

して業績の一部を紹介、といったような流れであった。

沿革や基礎データは事前学習で調べてあったものの、

業績に関しては知らないものも多かった。紹介を受け

たものは世界共通テストの PISA、Engaging Citizens、

Better Life Index、Regional Well-Being、PIAAC な

どであった。

今回は最も印象に残った Regional Well-Being に関

して少し紹介する。これは、世界のある地域のHousing、

Life satisfaction、Access to services、Civic Engagement、Education、Jobs、Community、

Environment、Income、Health、Safety の 11 項目を評価し、点数をつけたものである。

この調査結果はインターネットで公開されており、さらに選択した都市の well-being と似

ている別の都市まで表示してくれるなどの機能もある。この機能の実演には派遣メンバー

も感動していた。

このプレゼンの後、邦人職員である白井さん、松原さん、加藤さんの3人と意見交換を

する機会をいただいた。彼らは OECD で働くことの大変さやもどかしさ、コミュニケーシ

ョンツールである英語に対してどのような姿勢だったかなどを話してくださった。OECD

OECD の外観

OECD の内装

プレゼンの様子

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は社会分析をした上でそれを良くするための提案を

行うため、実行までは行わない。ここにもどかしさが

あったり、その過程の中に面白みを感じていると聞い

た。英語に至っては、相当な努力こそあったものの、

英語に対しては苦労こそしたもののそこまでネガテ

ィブな姿勢も取っていなかったこともわかった。

最後に、中庭に出て、シャトーを見せてもらい、さ

らに理事会会議場や交流会会場といったようなスペ

ースも見せていただいた。会議場には先ほどの会議

室と同様、加盟国各国の札があった。また、購入に

は至らなかったが、OECD の会議にも使われるよう

な調査資料の一部が一般にも販売されていること

の紹介もいただいた。

4-6-3.その他

意見交換会の前後に、引率してくださった邦人職員さんにも話を伺ったが、そこでの会

話が特に自分の印象に残っている。OECD はアカデミックな研究をするところではなく、

あくまで社会を見て状況分析をする、例えば環境汚染であれば化学物質の毒性などを調査

する。初めは「経済」とつくため自分の専攻は関係ないだろうと踏んでいたが、それは覆

され、文理の融合域で活動する組織なのだと感じさせられた。

また、OECD に出願する際のモチベーションも伺った。出願に関しては邦人職員との意

見交換会でも話題に上ったのだが、OECD の募集は狭き門で、「必ず OECD で働くぞ」と

いう意識は持たず、「通ればいいな」くらいのスタンスであったことも話してくださった。

今回参加してくださった職員は、大学での専攻は

それぞれ法学、物理学、環境科学とバラバラであっ

たことからわかるように、OECD では様々なバック

グラウンドを持った職員たちが働いている。これを

読んでいるあなたも、一見 OECD がやっていること

と関係のない分野を学んでいるかもしれないが必ず

どこかにつながりはあるだろう。これを読んでいる

あなたも、学んだことを活かす一つの選択肢として

OECD という進路も考えてみてほしい。

シャトーの外観

理事会会議場

加盟国各国旗前にて

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4-7.Dassault Systemsについて

4-7-1.Dassault Systemsの概要

(執筆担当:日野 真由子)

Dassault Systems は「3Dexperience」をスローガンに 3D モデリングソフトや解析ソフ

ト等を開発している企業である。設計ソフトやシミュレーションソフト、データ管理等が

複合されてもたらされる持続可能なイノベーションを提供することを目標としている。今

回訪問したフランス本社はパリの郊外に位置し、洗練された雰囲気の会社であった。

Dassault Systems の代表的なソフトとして設計ソフトである CATIA や SOLIDWORKS、

シミュレーションソフトである SIMULIA がある。1 つのライセンスで、複数のソフトを使

った連携が可能となっている。例えばデザイン Experience の例では船上レストランを設計

し、さらに人の流れのシミュレーションまでできる。ソフト単体の販売だけでなく、複数

のソフトをパッケージ化した販売も行っている。現在 12 産業に渡った開発と 140 ヵ国の取

引先があり、これらのソフトウェアはトヨタやボーイング社のようなたくさんの企業に使

用されている。東工大の機械系でもライセンスを持っており SOLIDWORKS を用いた授業

が開講されている。

4-7-2.企業見学

(執筆担当:日野 真由子)

企業では Learning ラボと VR(バーチャルリアリティー)センターを見学した。Learning

ラボでは実際にソフトがどのような場面で使われているのかを見学することができた。例

えばロボットとソフトを連携させたものなどがあった。以下の写真はその様子である。右

のスクリーンに映っているのはロボットの手先の軌道を指定するプログラムで、左側のロ

ボットがそれに沿って動いていた。動いているアームを手で押さえつけても人の手を傷つ

けないようコンプライアンス制御も実装されていた。他にもライセンスを持っていればソ

フトをインストールしなくても web 上で作業できるサービスもあった。

またバーチャルリアリティーを用いた開発にも力を入れていた。3D メガネとセンサーの

ついたペンを使うと、パソコン上で設計したものが実際に存在するかのように扱えるシス

テムを体験できた。この分野についての見学は VR センターでもっと大規模なものを体験す

ることができた。壁 3 面と天井、床に映し出された車の映像を特殊なメガネで見ると車が

目の前にあるように感じられた。メガネの位置をセンサーで見ているため、車に乗り込ん

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で本当に運転できそうな精巧さであった。

4-7-3.Dassault Systemsが求める人材、採用プロセス

(執筆担当:松沢 純平)

Dassault Systems は、「世界で最も持続可能性のある企業」ランキング 2 位、現在 15000

人近くの人材を抱えるソフトウェア開発会社である。2021 年には 28000 人規模を目指して

いて、ヨーロッパ以外の人材も多く働いている。社内でも多く掲示されているのを見るこ

とができる標語、「IF WE」の考え方を持った人材を募集しているという。「IF WE」とは、

「もし私たちが〇〇できるなら、〇〇を解決できるのに」というように、どのように顧客

を手助けできるか常に考える Dassault Systems のマインドセットである。

採用プロセスとして特筆すべき点は、インターンシップを重視していることである。フラ

ンスに限ってみれば、インターンに参加した学生の 34%が入社を果たしている。インター

ンは 6 ヶ月で、その間にプロジェクトをこなし、Dassault Systems のミッションに合う人

材を採用するとのことだ。インターンの募集や採用の情報は「Dassault systems career」

のホームページ(https://careers.3ds.com/)に掲載されており、動画もあるので、興味があ

ればチェックして欲しい。

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4-7-4.東工大の発表

(執筆担当:松沢 純平)

東工大の発表は、Dassault Systems の製品を使用したことがある機械系 3 学科の 3 人(日

野、松沢、朝倉)が担当した。本学の機械系の授業では「SOLID WORKS」という 3 次元

CAD・シミュレーションソフトを使用しているので、各学年でどのように活用されている

かをまとめた発表とし、発表は基本情報に続き、大きく 5 つの章に分かれる。

1 章は、1 年の授業「機械工学系リテラシー」における活用である。「SOLID WORKS」

に慣れるためにカメラのモデルを作成し、後半は固有振動数のシミュレーションのコンテ

ストを行うことを紹介した。2 章は、2 年の製図の授業における活用である。ギアボックス

の設計を「SOLID WORKS」を用いて行うことで、本格的な 3 次元 CAD の使用法を学ぶ

ことを紹介した。3 章は、3 年の「機械システム開発プロジェクト」における活用である。

設計の段階で「SOLID WORKS」を使用した機械の紹介と、ユーザーの声を紹介した。4

章は、研究室やサークルでの活用である。ロボコンに出場するサークルについてと、そこ

で「SOLID WORKS」を活用してみたいということを伝えることができた。5 章は、東工

大生の就職についてである。ものづくり精神を持った人材が求められており、その育成に

「SOLID WORKS」を用いた授業が効果的であるということを伝えることができた。

発表を聞いていた Dassault Systems のスタッフは数名で、現地のスタッフの方はロボット

などがスライドに表示されると写真を撮られていた。自分が使用した製品について、開発

会社の本社で発表をするという機会は非常に貴重であり、良い経験となった。

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5.その他

(執筆担当:仁科 薫)

5-1.食事

フランスは美食の国と名高く、フレンチは世界三大料理のひとつに含まれている。滞在

中に出会った食べ物はどれも非常に美味しく、見た目も素敵なものだった。フランス料理

というとどれも敷居の高いイメージがあったが、気軽に入れるお店や軽食系も充実してい

て、様々な食事を楽しむことが出来た。

≪朝食≫

ホテルでの食事はビュッフェ形式で、パンオショコラやクロワッサンをはじめとしたパ

ン、ハムやチーズ、ヨーグルトやフルーツなどを自由に楽しめた。フランスでは、コーヒ

ーはエスプレッソが主流のようだった。また、パンオショコラとクロワッサンはダッソー

や大学の訪問の際にコーヒーなどと一緒に用意されていたり、どこのパン屋にもおいてあ

ったりと、現地でよく食べられているようだった。

≪昼食≫

昼食はサンドイッチなどの軽食を買って食べることが多かったが、手ごろなカフェに入

って食事をとったり大学の学食で食べたりもした。モンマルトルを訪れた際に立ち寄った

カフェではフランスの伝統的な料理だという牛肉の煮込みのプレートをおすすめされたが、

ソースの味がとても美味しいものだった。サンドイッチがバゲット丸々一本だったり、ア

ールゼメティエの学食も盛り付けてくれる量が多かったりと、全体的にボリュームのある

ことが多かった。

アールゼメティエの学食 牛肉の煮込みのプレート

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≪夕食≫

夕食は現地の学生にお店に連れて行ってもらったり、自分たちでレストランに入ったり

した。観光で帰りが遅くなった時はデパートやスーパーで夕食を買って帰ることもあった。

レストランでは前菜やメイン、デザートを組み合わせてコース仕立てにするのが基本だが、

どれかが抜けていてもあまり問題はないようだった。前菜ではテリーヌや有名なエスカル

ゴ、メインは肉や魚から様々なものを選べた。エスカルゴは特別な形のトングで殻を押さ

えて中身をくりだして食べた。また、アリゴーというマッシュポテトにチーズを合わせた

付け合わせのようなものは、一皿にのせられてくる量が多くて食べきるのが多少大変では

あったがとても美味しいものだった。

≪チーズ≫

フランスは比較的温暖な気候でチーズの生産に適していて、世界 3000 種のチーズのうち

400 種以上がフランス原産と言われている。パリのチーズ専門店では日本ではなかなか見か

けない 40 ヶ月熟成のコンテチーズに出会えたり、チーズのキッシュはお店によって味に個

性があったりと、滞在中に様々なチーズを楽しんだ。

≪スイーツ≫

パリは有名なパティスリーやショコラティエが多く、豊富な種類のスイーツを目で楽し

んだり味わって楽しんだりした。パリのスイーツといえばだれもが思い浮かべるマカロン

は、店によって味のバリエーションが異なり、同じフレーバーでも店ごとに個性があって

食べ比べをすると常に新しい発見があった。おすすめは塩キャラメル味のマカロンなので

ぜひ試してもらいたい。店の内装もそれぞれが個性的で見ていて楽しく、チョコレートで

作られたノートルダム大聖堂やヴィーナス像を飾っている店まであった。フランス映画の

「アメリ」で有名なカフェで食べたクレームブリュレは、スパイスが効いているめずらし

いものだった。また、フレンチのコースをとった際に食べた ile Flottante(浮島という意味)

というデザートは、カスタードソースの上にメレンゲを浮かべてカラメルソースをかけた

アリゴー エスカルゴ

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もので、軽い口当たりでとても美味しく、滞在中に食べたスイーツのなかでも特に気に入

ったものだった。

5-2.街の様子

建物に使用できる色や建物の高さに制限があるパリは、歴史的建造物と自然に馴染むよ

うな統一感のある街並みが美しかった。歴史的な風情を十分に残した街で人々が現代の生

活を営み、現代的な設備や店が浮くことなく絶妙に調和していて非常に興味深かった。ま

た、歴史的建造物を利用した商業施設も多く、歴史の過程が大切に今と融合する形で受け

継がれているのが素晴らしいと感じた。エッフェル塔や凱旋門などの高い場所からパリを

見下ろすと、教会などの建築が点々と頭を出していて、観光名所としても有名な場所をす

ぐに見つけることが出来た。

街中にはごみ箱やごみ袋が沢山設置されており、聞いていたほどゴミが路上に捨てられ

ているような印象は受けなかった。しかし、塀や壁、メトロの地下トンネルの内壁に至る

まで、様々な場所にされていたスプレーの落書きが目についた。また、パリの人々は歩行

者用の信号にはあまりとらわれないようで、車が来なければ信号が赤でもそのまま渡って

おり、自分達もパリに行って数日後にはその感覚になれてしまった。

Ile Flottante 「アメリ」のクレームブリュレ

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パリは店じまいの時間が早く、遅い時間までやっているのはレストランやバーのような

店だけであった。閉店時間前でもすでに店じまいをしている店や休日には営業していない

店も多く、営業時間はきちんと守り 24 時間営業のコンビニなどもある日本とは違った感覚

で、多少の不便はあったが新鮮だった。商業施設にとっては一番の稼ぎ時の日曜日にどこ

のデパートも休業しているという驚くべき営業感覚だったが、休日はきちんと休むために

ある日なのだなと改めて考えるきっかけともなった。また、日本と違い夜に看板のネオン

や店の灯りが少ないので、ライトアップされた建造物や街灯に照らされた石造りの街並み

が美しい夜景となっていた。

5-3.その他

≪世界遺産≫

パリを左岸と右岸に分けるセーヌ川は、流域の歴史的な建造物も含めた河岸一帯が世界

遺産に登録されている。ルーヴル美術館やノートルダム大聖堂、エッフェル塔など観光地

としても有名な歴史的建造物が多く、セーヌ川に架かっている橋はひとつひとつ個性のあ

るデザインであった。ナイトクルーズでは河岸の夜景やいくつもの橋を間近から楽しめ、

道を歩きながら体感するパリの街とはまた違ったロマンチックさがあった。

セーヌ川から見たエッフェル塔 ノートルダム大聖堂

パリの信号機 スプレーの落書き 街中にあるごみ袋

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≪交通≫

移動には主にメトロを利用した。メトロの車内には日本のよう

につり革はなく、電車のドアの前の真ん中に立っているポールを

手でつかんで乗っていた。メトロのドアは手動で開閉する形式で、

電車が完全に止まる前にドアが開いたり、車内が混雑していると

きはドア付近の人が降りる人のためにドアのロックを開けたりす

るなどしていた。日曜日にはやっていない路線もあることを知ら

ず、移動にかなりの時間をとられてしまったこともあった。入構

のチケットやゲート部分の管理が日本に比べて雑で、ゲートを飛

び越えて構内に入る人を何度か見かけた。

また、街のいたるところに velib と呼ばれるレンタサイクルの駐輪場を見かけた。これは

好きな場所から乗った自転車を目的地の近くの駐輪場に停めて、借りた場所に返しに戻ら

なくて済むというものだが、使いたい場所に自転車が一台も残っていなかったり、反対に

停めたい駐輪場が満車であったり、自転車が故障していて使えなかったりというトラブル

も多いとのことだった。

≪言語≫

フランス人は英語を好んで使わないと聞いていたがそのようなことはあまり感じず、観

光客相手だからかもしれないが英語で話しかけてくれたり説明してくれたりする人が多か

った。レストランによってはメニューに英語表記のないところもあり、自分たちで調べな

がらメニューを予想したり店員さんに英語で解説してもらったりすることもあった。ただ、

簡単な挨拶はフランス語ですると向こうの人たちの対応も明るく、一度レジで挨拶を忘れ

てしまった際には終始無言で対応されたので、挨拶を大切にしている風潮を感じた。

メトロの入口

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6.所感

1年生

フランスでの 11 日間は、自分の価値観を変える、とても充実したものでした。大学・企

業見学を通して工学を学ぶ環境を見ることができただけでなく、フランスで工学を学ぶ学

生と知り合えたことが、何より刺激になりました。知り合った学生たちは、パリのレスト

ランを案内してくれたり、観光名所についてアドバイスをくれたり、おすすめのカヌレを

くれたりと、私たちがパリを楽しめるようにとても親切にサポートしてくれました。学生

交流を通して、パリの人の優しさを感じることができました。お互いに英語が母語でない

ため、コミュニケーションはスムーズにいきませんでしたが、国際交流の楽しさを改めて

感じ、外国語を勉強するモチベーションが上がりました。同じく工学を先攻する学生同士

だったため、自分の専門や将来したいこと、英語の学習法についても話がはずみました。

皆英語を流暢に話していて、海外留学・インターンシップにも積極的に挑戦しようとして

いました。非英語圏に住んでいながら国際的なエンジニアを目指す姿は、日本に住む私に、

とても参考になりました。今回の派遣で感じたことを活かし、語学・専門の学習に励み、

将来の長期留学も検討していきたいと思います。プログラムに関わっていただきました全

ての方に御礼申し上げます。

(河合 亜美)

2年生

来年度の秋にフランスへの派遣交換留学を考えている私は,今回のプログラムを通して,

ずっと憧れてきたフランスはどのような国なのか,フランスの大学やグランゼコールはど

のようであるか,学習が 3 年目のフランス語はどの程度通用するのかを知りたいと考えて

いた.

重厚感のある建物が並ぶパリの街並みは大変美しかった.どんな建物や建造物も精巧に

つくられ,内部には開放的な空間が広がっていた.一方で街はあまりきれいではなかった.

地下鉄があまり整備されていなかったこと,地下鉄内や駅で演奏している人が多かったこ

とは驚きだった.またフランス人がとても友好的で,レストランの席の間隔が非常に狭く,

知らない隣の人に話しかけることに驚いたが,素敵だと思った.何をするにも文化や習慣

の違いを実感した 11 日間であった.特に学生交流で知り合った現地の学生に多くのことを

教えてもらった.

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アールゼメティエには本当に多くの留学生がいた.また日本と違ってフランスには様々

なナショナリティーを持った人が多く,いろいろな国をバックグラウンドに持った人が一

緒に学び研究している環境が魅力的であった.フランスに留学したいという思いが強くな

った.

フランス語で簡単な会話をできたことは大変嬉しかった.だがフランス語のみならず英

語の語学力の不足をひしひしと感じた.企業や大学を訪問して英語で話を伺ったが,理解

できなかった部分が想像以上に多かった.特に研究室訪問では,専門的な分野を英語で理

解することの難しさを感じた.日本語でも理解することが難しい内容を英語力不足がゆえ

に更にわからなかったことが悔しかった.もっと勉強しようと思った.質問をする際にも,

自分が考えていることを十分に相手に伝えられず,相手の答えも十分に理解できなかった

ことが非常に残念だ.フランスの企業や観光地で働いている人や,大学教授は英語を流暢

に話す人が多く,観光地では特に私たちにフランス語が通じない様子を見てすぐに英語に

変えてくれたことに刺激を受けた.また一方でフランス語なまりの英語を話す人も多く,

教科書通りでない英語を聞き取れるようになる必要性を感じた.

ダッソーシステムズと OECD の訪問は新たな可能性の発見が多く刺激的であった.今ま

でインターンシップや就職について深く考えてこなかったが,ダッソーシステムズのよう

な企業でインターンシップをしてみたいという思いや,国際機関で働いてみたいといった

思いが生まれた.

(朝倉 めぐみ)

フランス人は自国語に誇りを持っているため、外国人が英語で話しかけてもフランス語

で返される、という話は昔から言われることである。私も、以前フランスに滞在した方々

からこのような忠告を受けた。そして確かにフランス語で応答してくる方が多かったのは

事実である。しかし交流した現地の学生に話を聞くと、どうやら誇りを持っているという

よりは単純に英語が苦手で話せないということが分かった。フランスは英語圏ではないた

め、この点は日本とまったく同じである。そして現地の学生から、”Bonjour”と挨拶を交わ

すことも確かに大事だが、それよりも”Can you speak English?”とか”English, OK?”などと

先に尋ねて、英語で話すということを明示しておくことが大事であると教えてもらい、実

際に実践したら以前よりも会話がスムーズになった。逆の立場、つまりは日本に来た外国

人にいきなり英語で話されるという状況を考えれば、これは当然のことと言える。

さらにはレストランで、向こうから英語が通じるか尋ねて来てくれたり、「おいしい」を

意味する日本語は何かを店員同士で確認してから、私たちの前で「おいしい?」と訊いて

くれたりと、日本では考えられないくらいにフランス人はフレンドリーであることを実感

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した。

フランス人の親切さを表すエピソードはもう一つある。今回、私が持参したリュックに

は、ジッパー付きの小物入れがリュックから突き出した形で付いており、一見すると財布

が飛び出しているように見えるものであった。そしてメトロに乗車中、そのリュックを抱

えていたら「財布が盗られないように気を付けて」とフランス人に何回か注意されてしま

った。そのたびに私は”This is not a wallet.”と弁明したのだが、無用な心配をかけてしまっ

たことはつくづく反省している。

私はフランスを含め海外や外国人がどういった感じなのか、このプログラムに参加する

まではまったく掴めていなかった。しかし今回上述したように、日本以上に親切な人がほ

とんどだということを、身をもって知ることができた。私は将来、欧州で生涯を過ごした

いと考えているが、そこにある初めの障壁「海外への慣れ」は無事達成できたように思う。

最後に、この派遣プログラムで私たちに関わり、貴重な経験をさせてくださった先生、な

らびにフランスで出会ったすべての方々に感謝したい。

(飯野 翼)

私はこの短期留学がほとんど初めての海外経験だったが、とても有意義な体験をするこ

とができた。海外は日本に比べ危険、などの意識を以前までは少なからず持っていたが、

パリは自身が危機意識を忘れずに持ってさえいれば、人々は優しく過ごし易い地域であっ

た。何より学生交流の経験が一番思い出深かった。英語が得意でない私とも丁寧にコミュ

ニケーションを取ろうとしてくれ、交流後も現地の人だからこそ知っているような美味し

いお店に連れて行ってくれて楽しく会話してくれることで、「外の人」への恐怖が薄れ、コ

ミュニケーションをとることが楽しいと思えた。しかし英語が堪能でない故に伝わらない

もどかしさも強く覚え、より英語を勉強しようとするモチベーションにもなった。フラン

スの学生は英語が母語でない学生が多数にもかかわらず、ほぼ全員ある程度のレベルの英

語力を持っており、日本人との英語に対する意識の差を感じた。

また、アールゼメティエを訪問した際に、東工大から留学する際のプログラムについて

の説明や実際にどんな研究室で研究できるのかを見せてもらって、今まであまり考えてい

なかった長期留学が現実味を帯びたのも一つの収穫だった。仏学生の留学に対する意識の

高さや、どこに行ってもやっていけそうなレベルの英語力を間近に見て、長期留学はもっ

と見聞を広め世界で戦っていける力をつけるためには必要なものだと強く感じた。自分の

現状を客観的に把握するという意味でもとても有意義な経験だった。

正直最初に留学を決めた時は、フランスに行きたいくらいの軽い気持ちだったのだが、

この超短期派遣に参加して本当に良かったと感じている。この用意されたプログラムでし

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かできない経験によって視野が広がり、将来のことについて改めて考えるきっかけとなっ

た。この派遣で学んだことや感じたことを忘れず、今後の進路や学習に生かしていきたい。

(大崎 実紗)

今まで海外の経験が全くなかった私は、ぼんやりとではありましたが短期でも海外に行

ってみたいと考えていました。もともとヨーロッパに興味のあった私は、街並みが綺麗な

フランスに対して憧れを抱いていました。そして、自分の未来図をはっきりと描けていな

い私にとって、なにか人生のヒントになり得るものを見つけることができたらいいなと、

宙に浮いたようなそんな想いで今回の派遣に参加させていただきました。

実際に訪れてみて、とりわけ言語能力の重要性を感じました。というのも、フランスを

はじめとする欧州各国の人種は多様なので、母国語以外を話せることが当然だからです。

私にとってこれは大きな刺激であり、今後の言語学習に向けてのいい動機付けにもなりま

した。

その一方で現地の学校や企業を訪問した際、ほとんどが自分の専門外ではありましたが、

ある程度の大まかな内容は理解しながら学ぶことができました。今後の自分の人生を考え

たときに、今一度語学力を鍛えなおしてから自分の専門分野の話を聞いてみたり、もう少

し長い期間の留学をしてみたりといったようなことも、ひとつのオプションにしようと思

いました。

また、日本と全く異なる文化に触れることができたことも貴重な経験となりました。中

世の世界を思わすノスタルジックな街並みに心を打たれて始まった 2 週間、その中で文化

の違いに適応しつつ、双方の文化の良い点を肌で感じることができ、とても有意義な時間

を過ごすことができました。

何事も経験が大切だと思い参加した今回のプログラムでしたが、想像以上に数多くの刺

激を得ることができました。短期間ではありましたが、自分の視野の狭さを痛感しました。

それと同時に、この経験は今後の人生を考える上での貴重な資源になるように感じました。

今後はもっと広い分野へと、もっと広い世界へと目を向けられるよう、何事にもチャレン

ジしていこうと強く感じました。

(杉崎 嵐)

今回この派遣プログラムに応募した理由は、海外の学生と交流をしたいと強く思ってい

たのと、芸術の国と言われているフランスにとても興味を持っていて、街並みや建造物の

美しさを感じ、美味しいものを食べたいと思っていたからです。

今回の派遣は、短期間に多くのプログラムがあり、色々な経験をすることができました。

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その中でも、2つ印象に残ったことがあります。

まず1つは、フランスの学生はとても真面目だということです。UPMC で実際の授業に

参加した時、誰もが熱心に教授の話を聞き、質問が度々飛び交いました。また、学生交流

の時も、勉学に対してとても熱心であることを感じました。フランスの大学は入るのが簡

単で卒業するのが難しいという日本との違いはありますが、“勉強をするために大学に行く”

という当たり前であるこの意識の差が日本ととてもあると思いました。とても焦りを感じ、

これからは私自身、大学に行く目的をしっかり意識していきたいです。

もう1つは、フランスで働くことについてです。ダッソーシステムと OECD に訪問し、

フランスで働いている人にお話を伺うことができました。フランスでの働き方はとても自

由だと思いました。自分の意見をはっきり言って、自分の意志をしっかり持って働いてい

る印象です。残業は基本しないで、家族との時間も大事にするという働き方に憧れました。

将来、就職活動を行う時に役立つ経験ができました。

自分の英語力はかなり拙く、コミュニケーションをとるのは大変でしたが、英語で意思

疎通できる喜びを感じました。英語の必要性を身に染みて感じることが出来たので、これ

から英語上達に精進していきます。

とても貴重な経験をさせていただきました。引率していただいた先生方、グローバル人

材育成推進支援室の方々、ありがとうございました。

(杉崎 麻里亜)

3年生

今回の派遣プログラムは 10 日間というとても短い期間ではあったが、自身が学んでいる

建築という分野についての考え方に大きな影響を与えるような経験をすることができ、大

変有意義なものであったと思う。歴史的建造物やその周囲の文化や生活に関係する歴史を

学びたいと考えている私にとってはプログラムの内容だけでなく、訪れたすべての建物や

街並み自体が自身の興味や専門に関係のあるものであり、日本で文献や映像を使って学ん

でいる間は実感のわかなかった圧倒的な空間を体感できたのはまたとない経験となった。

放課後に観光に出掛けるときも、街を歩いてさまざまな建築を見ながら、座学で習ったこ

とを思い出したり、日本とパリの街や建築の違いを考えたり、歴史的な雰囲気を残しなが

ら現代に適応させていくにはどうすればいいのかと考えたり、見るものすべてが考えを深

める手がかりとなっていた。西洋建築史を学んだのは一年ほど前のことだったので、有名

建築の中を見学した際に思い出せない様式や構造の部分もあり、勉強不足を自覚するとと

もにもう一度勉強しなおして知識を増やしてから再び訪れたいと思った。

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また、海外の大学の講義や研究室の雰囲気を知ることができ、現地の学生たちと交流す

ることができたのは、旅行ではなくこのようなプログラムに参加したからこその貴重な経

験だった。さらに、渡航前は海外留学というものに対して興味はあってもどのようなもの

なのか実際のイメージがあまりついていなかったが、そのような経験をできたことと、ア

ールゼメティエで建築学系からの日本人留学生の方から留学先での研究や参加しているプ

ロジェクトの話を聞く機会をもてたことで、長期留学への興味が深まるとともに英語の学

習へのモチベーションにもつながった。

このプログラムに参加するか迷っていた時期もあったが、プログラムを終えた今、この

選択に後悔は全くなく、迷っていた時間がもったいなく思えるほどフランス派遣のメンバ

ーと行動した 10 日間は自分にとって本当に大切な経験となった。最後にこの場を借りて、

参加したほかのメンバーや引率してくださった方々に感謝申し上げます。

(仁科 薫)

この留学を通してより海外を近くに感じることができた。パリ第 6 大学で現地の学生が

講義を受けている様子を見学し、海外の大学をより身近に感じられた。各大学の研究室見

学では様々な分野の最先端を見ることができ、自分の専門外の研究に触れることができた。

アールゼメティエの研究室の最初から1人1テーマで研究するのではなく、まずは複数人

で研究に慣れるという制度もとても興味深かった。大学のキャンパスも近代的なデザイン

であるパリ大学と歴史ある建物であるアールゼメティエと全く違う雰囲気を味わうことが

でき、双方から刺激を受けた。OECD 訪問からは日本人が海外で働くとはどういうものな

のかを少し感じることができた。実際に海外で働くためには短期間の滞在とは比べ物にな

らないほど英語を勉強しなくてはならないと知った。

また今回の留学プログラムは夕方から夜にかけて自由時間となっていたため、様々な場所

を訪れ、フランスでの生活に触れることができた。ノートルダム寺院やサクレ・クール寺

院など荘厳な歴史的建築物の見学で 1000 年も前の建築技術に感嘆したり、エッフェル塔に

のぼってパリ万博の様子を思い浮かべたり、とても有意義な時間を過ごせた。

観光の他にも学生交流で知り合った現地学生に美味しいレストランに連れて行ってもら

ったり、互いの国のことを話したり、留学だからこそ体験できたことがたくさんあった。

中でも心に残った言葉は私が英語をもっと勉強して話せるようになりたいと言うと、知り

合った学生は「study」ではなく「practice」が大事だと話してくれた。この言葉で、日本

で勉強しているだけでは話せるようにならないと痛感したうえに、今回の短期派遣に参加

して本当に良かったと思えた。

英語力に自信がないからと言って閉じこもっているより思い切ってやってみることの重

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要さを学べた。この経験を活かせるように今後海外も視野にいれた交流を行っていきたい

と思う。

(日野 真由子)

滞在中、実力不足を常に感じていました。フランス語を少し勉強したから、プログラム

内で化学に関係する研究室の見学をするから、という動機でこの派遣に参加しましたが、

どちらの知識も不十分であったことを痛感しました。特に、少しフランス語をかじったか

ら、ということはコミュニケーションをとる上で仇となったように思えます。実際現地で

コミュニケーションを取ろうとするとき、日本語はもちろん、英語や拙いフランス語まで

浮かんでくることによりパニックになった経験をよく覚えています。フランス語でコミュ

ニケーションを取れないと分かっているなら思考回路を英語に絞るべきだと学びました。

この経験をバネに、さらに能力を高めようというモチベーションにつなげていきたいです。

そして将来、フランスかどうかはわかりませんが、どこか海外で、自分の能力を試す機会

を作りたいと思っています。

悔しい経験の方が強く感じられた滞在でしたが、派遣前にあまり興味を示していなかっ

たダッソー、OECD に少し惹かれました。これは実際にフランス派遣のプログラムで実際に

訪問しないと分からなかったものではないかと考えています。もし自分にもう少し英語力

など、必要な能力があれば、OECD のような環境で働いてみたいという気持ちも芽生えたこ

とは収穫だと考えます。

また、フランス語や美術などの教科書に載っていたことを目の前で体験するということ

は大きな収穫であったと考えます。実際にフランス語がフランスで使われているという当

たり前のことにも感動を覚えました。フランス語の教科書でしか見たことのなかったシュ

ークルートやエスカルゴなどの食べ物、美味しいワインや、建築物なども、本当に触るこ

とのできる範囲にあったんだと実感する体験が多くありました。観光地を巡った経験、現

地学生との出会いにも、心に留めておきたいものを多く得ることができました。このよう

な機会を設けてくださった UPMC や ENSAM、ダッソーや OECDとグローバル人材育成推進支援

室の方々、また共に派遣プログラムに参加したメンバーにも感謝の気持ちを示しつつ筆を

置きます。ありがとうございました。

(牧野 晴人)

今回のフランス超短期派遣では、自分の考え方が正しかったという経験と、新たな考え

方を得たという経験をすることができました。前者の経験は言語に関するものです。自分

は英語を使いこなすためには、英語を話さなければいけない状況に身を置くべきだと考え

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ていました。今回の派遣での講義や学生交流を通じて、未熟な点だらけではありましたが

目標通り、なんとか英語で物事を理解し、気持ちを伝える経験ができました。しかし、「ど

れだけ楽しかったか」などを表現できずに十分意図が伝えられないという悔しい思いもし

て、より一層英語の勉強をしなければと感じました。フランス語についても、簡単なやり

とりは現地で覚えることができ、他言語の人とのコミュニケーションの楽しさを再認識し

ました。

後者の経験は、「グローバル」という言葉の意味について考えさせられたことです。パリ

の街中では、あらゆる人種が共存していることがわかります。日本とフランスでは、根本

的に「グローバル」についての意識が異なるような気がしました。英語を勉強して、海外

の知識を見聞きするだけでなく、自分の考え方を伝えたい、現地の学生の言っていること

を理解したい、という強い気持ちを持ち続けて学び、行動していかねばならないと思いま

した。中長期の留学にも興味が湧き、将来の仕事でも国際的なプロジェクトなどに参加し

てみたいと思うようになりました。

パリという街は訪れる建物すべてに長い歴史がありながら、メトロやカフェなど人々の

生活に密着している面も垣間見え、とても魅力的に感じました。今回何より貴重だったの

は、現地学生と観光地とはひと味違う場所を散策したり、一緒に食事をしたりしたことで

す。出発前は有名な観光地を全部回りたいと思っていましたが、途中からは現地学生との

会話の方が楽しみになっていました。願わくは近いうちに、今度はもっといろいろなこと

を学びに、パリを訪れてみたいと感じました。

(松沢 純平)

4年生

修士でヨーロッパの国への留学を考えている私にとって今回のプログラムは非常に有意

義なものになったと思います。その理由は大きく分けて 2 つあります。1つは UPMU やア

ールゼメティエといったフランスのトップ校における大学の講義を受講できたからです。

フランスの大学の講義の雰囲気は日本とは全く異なるものでわからないところがあればそ

の都度質問し疑問点を解消していき、講義というよりもディスカッションに近い雰囲気で

した。あの講義に主体的に参加することが出来れば、ディスカッション能力やプレゼン能

力が高められると思うと、留学へのモチベーションが高まりました。今回は雰囲気に圧倒

されて主体的に参加することはなかなかできませんでしたが、留学した際にはその雰囲気

にのまれずに参加できるように今後準備したいと思いました。

2 つ目は今の自分に不足している能力を再認識できたからです。今回のプログラムを通し

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て自分が考えを正確に伝えるだけの語学力が不足していることや、他人の研究分野の概要

を理解することが出来るだけの学力および自分の専門分野に関する学力が不足していると

いうということを改めて実感しました。今回訪問させていただいた大学のみなさんは英語

が堪能でこちらのつたない英語でも丁寧に対応してくださりましたが、大学の外に出ると

フランスは英語が母国語ではないこともあり、思ったようにコミュニケーションがとれず

困る場面も多々ありました。今後日本で語学力の向上に努め、完璧な英語までとはいかず

とも自分が伝えたいことをきちんと伝えられるようになりたいと思います。また修士でも

理系の勉強を怠らずにより多くの分野の知識および自分の専門分野の知識を身につけ、留

学をしても勉学の面で引けを取らないように努力していきたいと思います。

最後になりましたが、学生のために UPMC やアールゼメティエ、OECD といったなかな

か入れない場所に学生が入れる機会を提供してくださった先生の皆様、本当にありがとう

ございました。

(石浦 史也)