月刊現代ギター - 2016年3月号

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Page 1: 月刊現代ギター - 2016年3月号
Page 2: 月刊現代ギター - 2016年3月号

12 特集 作曲家別エチュード活用法

CONCERT PHOTO REPORT

20 コンサート・フォトレポート アルバロ・ピエッリ 村治奏一 鈴木豊 木村英明門下生によるギターフェスティバル 岩永善信 キム・ヨンテ&啼鵬[Band]&弦楽合奏団弓組 石原圭一郎 レオナルド・ブラーボ 中根康美&安田久美恵[S] 新堀ギターフィルハーモニーオーケストラ

REPORT

51 小原聖子ギターアカデミー         50th スチューデンツコンサート52 フリーバーズ・ギターデュオ              オーストラリア公演

INTERVIEW

28 益田展行32 Jiro'sBar ~濱田滋郎対談[36]    露木達也(ギタリスト)

45 荘村清志48 ジェレミー・ジューヴ

READING / ESSAY / LECTURE

36 愛器を語る[84]    岩永善信(ホセ・ルイス・ロマニリョス 10弦)

40 ポインツ・オブ・ギターテクニック[24]    アルバロ・ピエッリ64 あなたの街の~ギター教室紹介〔11〕

INFORMATION

54 新譜案内57 新刊案内58 外盤案内68 めもらんだむ72 コンクール・インフォメーション88 今月の見どころ聴きどころ90 イベント&コンサートガイド

ENSEMBLE

86 アンサンブルの広場

SCORE

105 今月の楽譜解説106 50 の漸進的な小品Op.59 より    第 10 番~第 18 番(カルカッシ~原善伸)110 ソナタ・ホ短調R.106(ソレール~劉明睿)114 フレンズ(レベッカ~岡崎誠)118 ヴァニラ・ホワイト(冨山詩曜)120 ラ・サルタリーナ(アルカス)

Vol.50 No.3 March2016 No.627 March

       アルバロ・ピエッリ

●表紙 益田展行

●写真 TAKUMIJUN

65 オールド・ポップス・コレクション〔24〕   心の旅(財津和夫)     (たしまみちを)69 ポピュラー・ヒット・レパートリー〔36〕    明日、春が来たら(松たか子)  (小関佳宏)73 EtudePub ~ギター・ベーシック・レパートリー     完全攻略〔最終回〕        (坂場圭介)76 アンサンブルに聴く巨匠の名技〔最終回〕                    (朝川博)78 atempo 日記〔72〕(渡辺和彦)80 レパートリー充実講座〔252〕(富川勝智)      バラード(バカリッセ)

84 ロンドン便り〔74〕(ワシリー・サバ/訳:関塚亮司)

60 第 2 特集 アンサンブルにおける調弦

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月刊『現代ギター』価格改定のお知らせ月刊『現代ギター』は、2016 年 4 月号(No.628)より通常号価格を 200 円値上げし、定価 1,400

円+税へと改定させて頂きます。前回改定時(2000 年 4 月号)から 16 年間に渡って価格を

据え置きして参りましたが、ここ数年来の物価上昇、印刷代・用紙代等諸経費・原材料費の高騰、

カラー頁・楽譜頁の増加等に伴い、現行価格を維持することが甚だ困難な状況となって参り

ました。

本誌御愛読の皆様の御要望に応え、スタッフ一同、一層の誌面充実に邁進する所存でござい

ますので、何卒、御理解を賜りますよう御願い申し上げます。(月刊『現代ギター』編集長 渡邊弘文)

●定期購読料金変更のご案内

◎ 2016 年 4 月 1 日より定期購読料金を下記に変更致します。

2016 年 3月末日申込分まで

1 年間購読 税込 15,552 円(12 冊+無料進呈 1 冊 計 13 冊)

2016 年 4月 1日申込分から

1年間購読 税込 16,330 円(12 冊)

◎定期購読に限り、通常定価(本体 1,400 円+税)の 1 割引とさせて頂きます。 (本体 1,400 円× 90%= 1,260 円× 12 冊= 15,120 円 × 消費税 8%=税込 16,330 円)◎新規・継続申込者への次年度最新号 1 冊無料進呈は終了とさせて頂きます。何卒ご了承ください。◎定期購読に限り、送料無料でご自宅までお届け致します。◎定期購読に限り、DVD・CD・カレンダー等が付録に付いた特別定価の号も通常価格となります。◎臨時増刊号は含まれません。ご了承ください。

■定期購読のお申込みについて・定期購読のお申込みは、弊社ホームページ(http://www.gendaiguitar.com/)および本誌添付の「払込取扱票」にて 承ります。・「払込取扱票」にてご入金の際は、お近くのゆうちょ銀行にてお振込みください。ご記入の際は楷書体ではっきりと お書きください。・ご入金後のご解約・ご返金には応じかねますので、あらかじめご了承ください。受領書はお支払の控えとなりますの で大切に保管してください。・クレジットカード払いもご利用頂けます。その際は弊社ホームページ(http://www.gendaiguitar.com/)から、また は電話 03-3530-5343 までご連絡ください。・銀行振込/コンビニ決済はお取扱いしておりません。・毎月のご購読誌は郵便でお届け致します。各月 23 日頃のお届け予定ですが、郵便事情により稀に遅延する場合がご ざいます。ご了承ください。・開始号のお届けは、お時間を頂く場合がございます。

■定期購読についてのお問い合わせは株式会社 現代ギター社 GG 通販サービス 〒 171-0044 東京都豊島区千早 1-16-14 http://www.gendaiguitar.com/ E-mail [email protected] Tel. 03-3530-5343 Fax.03-3530-5405電話受付 12:00 ~ 17:00(土・日・祝は休業)

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12 Gendai Guitar

●「エチュードの目的」とは? エチュードの目的は、初球から中級においては、ギターを弾く定石となる運指や音楽の流れを経験的に学ぶこと、そして上級者については、普段はあまり行なわない動作や奏法を交えることでより自由な技術を身につけること、と言えると思います。例を挙げて説明すると、最も使用されていると思われる「カルカッシの 25 のエチュード」と、「セゴビア編によるソルのエチュード」では、ギター曲に頻繁に現れる和音の押さえ方、左手のセーハやスラー、メロディーを弾く時やアルペジョを弾く時の右手の役割を身につけることができます。カルカッシでは、同じ調性の曲が何度も出てくるのですが(特にイ長調とニ長調)、このことも左手の正確なポシションの把握や右手の移弦の典型的な記憶を蓄積させてくれるのに役立ちます。一方、「コストの 25 のエチュード」や「ヴィラ=ロボスの 12 のエチュード」になりますと、通常のコンサート用のレパートリーには登場しないような速い左手の対位法的な移動、細かな音符のカデンツァ、長時間のアルペジョや和音連打の連続運動など、左右の指の「強化」につながる過酷な運動が要求されます。 何れにしても、初球、中級、上級を通じ、エチュードは克服すべき宿題というか通過儀礼というか、気分的には敬遠されがちになってしまいかねないのですが、考えようによっては、注意深く自分に適切なエチュードを選ぶことさえできれば、その曲の練習だけで基礎技術を高め、また維持できるという利点があります。今回は一般に比較的ポピュラーであると思われるエチュードを俯瞰しながら、皆さん一人一人が有益で最適なエチュードと出会えるような手助けとなるよう、ツアーガイドをしていきたいと思います。

●練習曲の分類が重要 まず最初に、僕が普段折にふれて行なっている基礎練習と練習曲を紹介します。これは個人差も、向き不向きもありますので、こうすれば良い、ということではなく、

あくまで僕の場合の一例だと思ってください。

 朝、ギターを手にしたら行なう練習。①フリオ・サグレラスの『Tecnica Superior de Guitarra』巻末のテクニックのエクササイズの 3 番~ 5 番を 2 ~12 ポジションで往復する。②セゴビアのスケールを練習する。③ ル イ ジ・ ビ ス カ ル デ ィ の『Esercizi Speciali di Virtuosismo』第 1 巻末にある左手の運指で、一本の弦を3 回ずつ弾く(つまり通常は右手三本指による)スケールを独自の運指で練習する。④上記サグレラスの 9 番~ 11 番及びそれに含まれないタレガのスケール・エチュードの幾つかを練習する。

 では、ここからが本題の時間的に余裕があるときに練習するエチュード。ソル:Op.6-6(セゴビア 12 番)、Op.6-11(セゴビア17 番)、Op.29-13(セゴビア 19 番)、Op.29-17(セゴビア 20 番)、Op.29-22(セゴビア 18 番)、Op.29-23(セゴビア 16 番)コスト:Op.38-22カルカッシ:2 番、7 番、19 番ヴィラ=ロボス:1 番、2 番、4 番、7 番、8 番、10 ~12 番バリオス:演奏会用練習曲、練習曲イ長調、コストのOp.38-22 の編曲 etc……。

 その他、練習曲ではありませんが、バリオス〈蜜蜂〉、サグレラス〈蜂雀〉、プジョール〈熊んばち〉、の通称“蜂セット”。バッハの無伴奏ヴァイオリン作品の速い曲。

 以上の曲は、概ね常時暗譜されていて、自分の技術の維持に用いています。ここでわかるのは、僕の場合、スラーの練習曲が極端に少ないことです。これは、自分が

特集

作曲家別エチュード活用法鈴木大介 Daisuke Suzuki

作曲家の武満 徹から「今までに聴いたことのないようなギタリスト」と評されて以後、新しい時代の音楽家として常に注目され続けている。『カタロニア讃歌~鳥の歌/禁じられた遊び~』(ベルウッド・レコード)は 2005 年度芸術祭優秀賞(レコード部門)を受賞。ギター・ソロによる映画音楽のカバーで大ヒットとなった『キネマ楽園』(同上)は、2015 年にシリーズ 7 作目『70years』をリリース。また、楽譜『キネマ楽園~ギター名曲集』(GG572)も好評発売中。3 月 20 日に自作のエチュード作品を収録した CD「Daisuke Suzuki 12 Edude」(SOTTO)がリリース予定。第 10 回出光賞、第 56 回芸術選奨新人賞を受賞。

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20 Gendai Guitar

アルバロ・ピエッリが 2014 年 10 月に続き 2 年連続となる来日公演を東京・銀座ヤマハホールで行なった。今回は久しぶりのソロリサイタルであっただけにその注目度はより高く、ピエッリがステージに登場すると、その第一音を聴き逃すまいと、ホール全体は水を打ったように静まり返った。プログラムは前回同様、スペインもの、中南米もの、そしてボグダノヴィチによる献呈曲などバラエティに富んだ内容。ギターから紡ぎ出される音はもちろん、“呼吸”から“間

”までそのすべてをコントロールし音楽に変えてしまうのは巨匠・ピエッリならではであろう。アンコールは、ブローウェル「シンプル・エチュード集」に続き、ブラジルのギタリスト・作曲家

Guinga の作品〈Senhorinha〉〈Baião de Lacan〉を華麗に演奏し、コンサートは幕を閉じた。プログラム:グラン・ソロ Op.14(ソル)、ロッシニアーナ第 1 番 Op.119(ジュリアーニ)、組曲「プラテーロと私」より〈プラテーロ〉、ハバネラ、暁の鐘(E.S. デ・ラ・マーサ)、スペイン風ソナタ(ロドリーゴ)、水とワイン、せントラル・ギター、フレヴォ(ジスモンチ)、ソナタ第 3 番(ポンセ)、リチェルカーレ II(ボグダノヴィチ~ピエッリ)、ジャズ・ソナチネ(ボグダノヴィチ)、パンパ前奏曲、北の歌(アニード)      [2015 年 12 月 8 日/東京・銀座ヤマハホール]

写真:KOBAYASHI Yow

アルバロ・ピエッリAlvaro Pierri

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──露木さんの 1st ソロアルバム『agora(アゴラ)』を聴かせていただきましたけど、スマートで、とても爽やかでいいですね。露木 ありがとうございます! とても光栄です。──今回の CD ではジョビンの作品を多く取り上げていらっしゃいますね。露木 ジョビンは、〈Se todos fossem iguais a voce(もしすべてがあなたと同じだったら)〉のような壮大なバラードから〈イパネマの娘〉のような軽快なナンバーまで、パターンが多くて、サンバやバラード、クラシックまである唯一無二の存在だと思っています。──オリジナルも 3 曲ほど録音していて、作詞もしていらっしゃいますね。露木 〈Lua no Mar〉という曲なんですが、今回のアルバムの中に日本語の歌詞の曲を入れたいという思いがあったんです。「Lua no Mar」というのは“海の月”という意味で、私の地元の湘南の海沿いの道を車で走って

いるときに見えた満月をイメージして作った曲です。──作曲はよくなさいますか?露木 ブラジル音楽以外のバンドで使う曲はよくしていますけれども、僕はそれほどオリジナル曲は多くはないんです。どちらかというとスタンダードな曲をどのようにアレンジしていくか、それをどのような感じで演奏していくかということに関する興味が強いんです。オリジナル曲は割と意識しないでポロっとできたりすることが多いですね。──バンドで活動される機会も多いですか?露木 そうですね。ボサノバからは少し脱線してしまいますが、エレキギターも弾くことがあります。ジャズ・ファンクやポップス系のバンドもやっていますが、自分の活動のメインはやはりブラジル音楽なんです。──ボサノバのアーティストではどなたが一番関心がおありですか?露木 ジョビンとジョアン・ジルベルトはもう永遠の憧

No.36写真 宮島折恵

32 Gendai Guitar

露木達也Tatsuya Tsuyuki(ギタリスト)

湘南出身。幼少期から父親の影響を受けロックやジャズに興味を持ち、高校からギターを始める。ジャズギターと音楽理論を東海林由孝、加藤崇之、クラシックギターを Ariel Asselborn、 ボ サ ノ バ 弾 き 語 り を Robson Amaral の各氏に師事。Brazilian Music(Bossa Nova、Samba、MPB)と Jazz をメインのフィール ド と し な が ら、Pops、Rock、Flamenco、Hip Hop 等ジャンルを問わず日々セッションを重ねている。また、テレビドラマ、CM 音楽のスタジオレコーディングも行なう。2014年に 1st ソロ・アルバム『agora』をリリース。2016 年 3 月より新規開設される GG 学院ボサノバクラスの講師を務める。HP アドレス:http://tatsuya-tsuyuki.com

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36 Gendai Guitar

写真:木田新一

愛器を語る

岩永善信 ◆ホセ・ルイス・ロマニリョス10弦(1980)

Yoshinobu Iwanagaパリ・エコール・ノルマル音楽院演奏家クラスを首席卒業。第 1 回日本ギターコンクール第 1 位入賞、第 3 回イタリア・ガルニアーノ国際ギターコンクール第 1 位入賞、 第 20 回パリ国際ギターコンクール第2位入賞など数々の賞を受賞。その後、ベルギーを拠点にヨーロッパで演奏活動を展開、高い評価を得る。1998 年、演奏活動の拠点を日本に置く。高度なテクニックと研ぎ澄まされた感性、楽器の枠を超えたダイナミックで豊かな演奏は、 聴衆に大きなインパクトを与え、各地で熱狂的なファンを獲得し続けている。 2000 年以降、活動の場を再び海外にも広げ、世界各地で意欲的に演奏活動を行なっている。2003 年、シンガポール日本文化交流の実績により感謝状を贈られ、2004 年より台中市吉他協会の特別顧問として台湾ギター協会の発展に寄与する。2012 年、日本アジアギター教育協会の会長に就任し、アジアにおけるギター教育の発展に努める。2015 年 6 月にはアメリカコンサート、2016 年 8 月には中国でのコンサートを予定している。

写真:木田新一

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 今月の「ポイント・オブ・テクニック」は、昨年末の来日公演で、巨匠ならではの風格に溢れた演奏を披露したアルバロ・ピエッリが登場。ウィーン国立音楽大学で教鞭を執り、多くの才能あるギタリストを輩出した教育者でもある巨匠ならではの、深い示唆に富んだ言葉の数々を紹介したい。

ギターを勉強するにあたって、使った教則本はありますか?

 子供の頃にはアグアドの教則本を使いました。他にも、ロドリゲス・アレナスやフリオ・サグレラス、パスカル・ロッチなども使いました。少し成長してからプジョール、ジュリアーニ、バリオス、カルカッシ、カルレバーロなどをやり、ジャズの教本なども使いました。ハーモニーの知識を身体的に理解するためにはとても役立つと思います。全ての教本の名前は挙げ切れませんが、リョベートやタレガも使いました。それらの類似の項目を組み合わせて使うようにしていました。例えば、アルペジョやスケールといった項目を異なる本から抜き出して色々な方法を学びました。ギターを正式に習い始めたのは 5 歳の時でしたが、それ以前に母からピアノの手ほどきを受けましたので、その当時から現在まで私はピアノのテクニックに関しても多大な興味を抱いています。ピアノのテクニックの発展は様々な意味において非常に理論的だと思います。子供の頃はエスラバとチェルニーの教本を使いました。大人になってからヴァイオリンの教本にも興味を持ちました。例えば、イワン・ガラミアンの本ですが、ポジション移動などに関しては有益です。ダニエル・フレドリッシュの従兄弟でもあるジャン・クジノの本も素晴らしいです。

毎日の練習は、どのように、どのくらいやっていますか?

 練習には実際に楽器を使って行なうものと、頭で行なうものと 2 通りの方法があります。楽器を使える時にはもちろん使いますが、私は練習というのは、ほとんど頭の中で行なうことだと考えています。ツアー中の移動など、練習時間の捻出が難しい時もありますが、毎日出来る限りの練習を行なう

ようにしています。練習が大好きだからです。

テクニック向上のために工夫したことはありますか?

 簡潔に言うなら、「何が必要なのか」を観察することです。何が必要なテクニックなのかをイメージし、さらにそれのヴァリエーションを考えるのです。なぜなら全ての多様性を考えることこそ、私たちが目的地に到達する方法を広げてくれるからです。音楽が生きた芸術である限り、1 つの完璧な解釈というものは存在しません。同じ曲でも弾くたびに新しい解釈が生まれるのです。全く同じ演奏をしようと試みても不可能です。毎回新しい演奏が生まれると言うこと、それが最も重要で興味深い事実です。勿論、楽曲の構造やスタイルなど様々な面にプランを持ち、出来る限り一貫性を保ってそれを示すことは重要です。テクニックを上達させることと曲を作り上げることとは同じなのです。それらは表裏一体です。テクニックは私達を目指す先に連れて行ってくれる道具なのです。私はそう考えています。

音楽理論はどのように学ばれましたか?

 子供の頃から音楽の本に囲まれて育ったので、興味が湧いたものはすぐ手に取ることが出来ました。また、母や叔母(オルガ・ピエッリ)と食卓などで音楽について話しをするのも素晴らしい体験でした。それは音楽を深く理解するために大変役立つ学びの方法だったと思います。楽器関連の情報は家にも十分にありましたが、さらにモンテビデオの大学には多くの素晴らしい教授がいました。例えばウーゴ・バルソのようなピアニストや、素晴らしい作曲家・指揮者・ピアニストであるエクトル・トサールなどの重要な人物がおり、私は非常に有意義な時間を過ごしました。――グイド・サントルソラの学校にも通われたそうですね? その通りです。サントルソラにはプライベートで習っていました。大学で学んだ和声学もアカデミックで素晴らしいものでしたが、サントルソラの和声学はアカデミックであるこ

ウルグアイのモンテビデオで生まれ、叔母である高名なギタリスト、オルガ・ピエッリのもとでギターを始める。後にカルレバーロ、サントルソラのもとで研鑽を積み、ウルグアイ国立音楽研究所で学ぶ。11歳のころから数々のコンクールで受賞、ブエノスアイレス、ポルトアレグレ両国際コンクールで優勝、1976 年には弱冠 23歳にして第 18回パリ国際ギターコンクールで優勝を飾る。以後、ヨーロッパから全米、アジアまで演奏と教育の両面で国際的な活躍を始め、世界的な名声を博す。現在はウィーン国立音楽大学で教鞭を執り、また世界各地にてリサイタル、マスタークラスを開催している。

アルバロ・ピエッリAlvaro Pierri

2015 年 12月 10日ヤマハ銀座コンサートサロン/聴き手:森井英朗(ギタリスト)

構成:渡邊弘文、安藤政利(編集部)/写真:宮島折恵

No.24

40 Gendai Guitar

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