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Procion dyeing

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Page 1: Procion Dyeing

494報 文58

(昭 和33年11月14日受理)

反応性染 料 に よる ビス コー ス レー ヨ ンの スキ ン染 色

東洋レーヨン株式会社中央研究所加 藤嵩 一

REACTIVE DYE STAINING FOR DIFFERENTIATION OF SKIN

AND CORE OF VISCOSE RAYON FIBERS

By Koichi Kato

(Central Research Laboratories, Toyo Rayon Co, Ltd., Otsu, Japan)

A new technique for staining the skin of viscose rayon cross sections is described, where Procion

Black HGS, a sort of dyes marketed by ICI as chemically reactive dyestuff for cellulose fibers. is

used combined with urea and soda ash. The technique is found to furnish a staining entirely

selective for the skin area without requiring any particular differentiation procedure.

This staining may be of great significance practically as well as theoretically, since it depends

upon a chemical reaction between the dye and cellulose, i.e, upon a mechanism quite different from

that of other usual dye techniques.

The same staining procedure has been applied to other fibers, not only cellulosic, but also protein

as well as synthetic. Interestingly enough, it has been found that wool fibers show a bilateral

staining, while Vinylon exhibits a skin-core type differentiation. (Received November 14, 1958)

1.緒 言

最近 セル ロース繊 維 に対 して化学 反 応 的に 結 合 して 堅

ろ うな 染色 を 与 え る一 群 の 染料 が 市場 に 現わ れ 注 目を 浴

び て い る。 英 国ICI社 のProcion染 料,ス イ スCiba社

のCibacron染 料,ド イ ツHoechst社 のRemazol染

料等 が これ に 属す る。 その 染色 機構 に つ いて はす で に 多

数 の報 告(例 え ば1~4)が あ るが,要 す るに アル カ リ

の存 在 にお い て セ ル ロース の水 酸 基 と次 の よ うに反 応 す

る もめ と考 え られ て い る。

NaSO3-D-Cl+HO-Cell→NaSO3-D-O-Cell+HCl

著 者 は この 種反 応性 染 料 を セ ルロー ス繊維 切 片標 本 の

染色 に 応用す る こ とを 試 み,そ の 結 果 としてProcion

Black HGSを 用 い て ビス コース レー ヨ ンの ス キ ン ・コ

ア構 造 の染 めわ けに す ぐれ た成 果 を得 る こ とが で きた。

従 来 こ の 目的に 用 い られ て い る 標 本 染 色法 に 関 して

は,前 報(5)に お いて 代表 的 な もの を 紹介 し比較 考 察 を

加 え た。 本報 に 記述 す るProcion Black法 は この染 めわ

け の機 構 に お いて 直接 染 料(6~10)ま た は 塩 基 性 染料

(11~13)を 用 い る方 法 と全 然 異 る こ とは明 らか で あ る

が,セ ルルロース の還元 性 に 基ず く一 種 の化学 的 染 色法 で

あ る銀 染色 法(14,15)と も異 る もので あ る。

本 法 は以 下 に述 ぺ る通 り全 く選 択的 な スキ ン染 色 であ

つて,従 来のどの染色法よ りも操作が簡単かつ迅速であ

るか ら,ル ーチ ン試験法 として適当している。しかし同

時にセル τコース繊維構造の顕微鏡的研究分野において薪

しい意味を持つた知見を与えるもの としてその応用の成

果が期待され る。

2.切 片 標 本染 色 力法

切片標本 としては厚 さ5ミ クロン内外 の もの を用い

る。標準パラフ ィン法 または寒天パ ラフ ィン法によつて

作製 し,完 全に脱包埋す ること。

染料液は次 のよ うに調製する。すなわち少量の蒸留水

にProcion Black HGS 10gお よび尿素7gを加 熱しつ

つ溶解する。 この溶液が冷却 したのち ソーダ灰2gを加え

,蒸 留水で100gに する。 この染料溶液は室温で長く

保存で きる。

染色操作は次の通 りである。すなわ ち切片標本上に上

記染料溶液を充分量 のせ,小 火焔 または熱板上に置いて

静かに 加温する。3~5分 間で よい。 その際染料液が蒸

発乾固することのないよ う注意す る。水洗 して過剰の染

料を洗いお とす。適 当な方法で封入する。

上記染色操作の結果第1図 強力ビ ス コース レーヨンの

例に見 られる通 り,ス キ ン層が選択 的に濃 く染色され,

コアは染まらない状態 の標本が得 られ る。従つてここで

Page 2: Procion Dyeing

59.報 文495

Fig. 1 Typical skin staining in a tire cord rayon, obtained by the Procion Black te- chnique described in this paper. (800X)

轄何らの分色操作を必要 としない。染色結果が染色時間

の多少の変動に よつても全然左右 されない点 はルーチン

扶 としての長所であろ う。

3.染 色 法 に つ い て の 説 明

Procion染 料 のいわ ゆ るCold Typeの も のお よびH

Brandの もの 数 種に つ いて その 適性 を 比較 調 査 した結

果,上 記Procion Black HGSが 最 適で あ るこ とを認 め

允。他の ものは一 般 に顕 微 鏡標 本 用 と して は切 片 へ の染

色が淡すぎ るこ と,お よび コア層 に もあ る程 度染 着 が起

Tig.2 Reduction in staining due to the lowered

dye concentration (1/8). (800X)

り,そ の ため ス キ ン ・コアの コン トラ ス トが 低 くな る こ

とが共 通 の欠 点 であ つ た。

な お,Cibacron Black BGは 大 体Procion Black

HGSに 近 い成 績 を一与え るが,Remazol Black Bは コア

が 染 ま るの で 不 適 当で あ つ た。Procion Black HGSは

反 応性 の低 いH Brandで あ るため,か えつて そ の アル

カ リ性 溶液 の 安定 性 が よ く保 存 に耐 え る利点 が あ る。

染 料 の 固定 反 応を 起 させ るた めに 必 要 なア ル カ リとし

て 同一 濃度(2%)で 比 較 す る と重 曹,ソ ーダ灰,燐 酸

三 ソー ダは この 順にpHが 高 くな り,そ れに 応 じて 染着

も強 くな る。 重 曹で は 少 し染 色が 淡 す ぎる感 が あ り,他

方 燐 酸三 ソー ダで は染 色過 度 とな りやす い。 溶 液 の安定

Fig.3 Faint staining upon no heating. "800 X)

Fig. 4 Excessive staining due to having the mounted dye solution dried up. (800X)

Page 3: Procion Dyeing

496報 文60

性 をも考慮 して ソーダ灰が適当 と考 えられた。

染料濃度を上記組成(10%)よ り減少 して行 くとそれ

に応 じてスキ ンの染着が低下する。第2図 は標準組成 の

1/8濃 度の場合であ る。 第1図 と比較されたい。

染料溶液を盛つた切片標本はこれを小火焔 または熱板

上で加熱 する ことが必要 である。Procion  Black HGS

はさもない と十分な固定反応を起 さない。第3図 は常温

のまま3分 間保つた標本の染着状態を示す ものである。

加温は3~5分 間でよく,そ れ以上置いても特に変化

が見 られない。その場合染料液が蒸発乾固す るに至 ると

コアに も染色が起 り全面濃染 してみぐる しい もの とな

る。第4図 はその状態を示す。厳に注意 せ ね ば な らな

い0

4.考 察

前報(5)で かな り詳細に論 じたよ うに,ピ スコース レ

ー.ヨン切片におけるスキ ン染色のために通常の染料 を使

用する従来の方法(9~13)は 例外 な く分色の結果 とし

て得 られる分別染色である。すなわ ちあらかじめ切 片全

体 を十分染めたのち,適 当な溶媒を用いて コア層から選

択 的な脱色をおこなわ せるのであ る。従つて最終の結果

に対 してこの分色工程 が決定的な役割 を占めてお り,直

.接染料法(9,10)で は比較的操作容易であるが 塩基性

染料法(11~13)で はこの段階に相 当の熟練 と注意が要

求 され る実情にある。

それに対 してProcion Black法 は全 く特異的にスキ ン

染色を与え,コ アは染色の終始不染 のままで ある。従つ

てそ こには何 らの分色の過程を必要 としない。硝酸銀試

薬を用 いる.銀染色法(14,15)は 化学反応に基 く特異的

なスキン染色であるか ら,分 色 とい う工程は含まれない

けれ どもその代わ り未反応試薬をチオ硫酸 ソーダで洗 う

工程が必要である。同時に銀染色の場合 スキ ン層の染色

を適当な程度把保つには染色時間お よび温度 の調整に少

なからぬ手数を加えね ばな らない。従つて本報記載 の染

色は操作が迅速 簡便であ りしかも得 られる結果が安定 し

ている点において今までのどの方法よ りもす ぐれた方法

とい うことができよ う。

Procion染 料 の染色機構についてはすでに多数の報告

がな されてお り(1~4),ヤ ルロース との 間の化学反応

的結合に よるものであ ることは疑いないことと考 えられ

る。従つて切片標本に適用されたProcion Black染 色法

の所見 もセル ロース繊維切片 と染料 との間の化学反応に

基ず くもので あ り,そ の点上記銀染色法 と同様に化学 的

標本染色法 の一種 とい うことがで きる。

しか しその反応機構において銀染色法はセル ロースの

還元性末端基に依存す る もので あ る(15)の に対 して

Procion染 料はセル ロースの水酸基に依存 している。同

じスキン ・コアの染めわけ効果を与えるに して も両者は

その意味す るところが異 なるわ けである。

通常の染料に よる染色が可逆的な性質の ものであ り,

切片標本の染色 も例えば グ リセ リン封入の形では容易に

脱色す るのに反 して,本 法に よる切片標本の染色が極め

て堅ろ うであることも特色の一つ とい うこ とが できよ

う。

第5~8図 は再生セル ロース繊維に本法を応用した例

Fig. '5 A textile viscose rayon compared with

a tire cord rayon. (800X)

The core of the former is also showing a slight staining.

Fig. 6 An all-skin type rayon compared with a tire cord rayon. (800X)

Page 4: Procion Dyeing

61報 文497

Fig. 7 A cuprammonium rayon compared with

a tire cord rayon. (800)

Fig. S A sample of Fortisan compared with

a tire cord rayon. (800X)

であつて,典 型的なスキ ン:コ ア効果を示す強力 レーヨ

ン試料が対照 として同時包埋 されてい る。

再生セルロース繊維の顕微鏡的研究法 として切 片染色

性の観察は少なからぬ意義を有するものであ る(5)が

従来の染料を用いる方法お よび銀染色法のほかに,明 ら

かに異つた染色機構に基ず く方法がここに与 えられたわ

けであるから,今 後の応用によつてこの方面に新 しい知

見が得られ,ピ ス コース レー ヨンのスキ ン ・コアの問題

や一般にセルロース繊維 の構造に関して一層の解明が得

られることが期待 される。 しか しなが ら第5~8図 に見

る通りProcion Black染 色の 結果が 染色 の機構を異に

する染料法な らびに銀染色法の結果 とほとんど完全に一

致す ることはむしろ意外の感がある。

なお,第7図 ベンベルグ と第8図 の ブォーチザ ンは こ

の場合共通 して低い染色性を示 してい るが両者の性質は

実は前者が コアに近 く,後 者が スキ ンに 近い のである

(5)。 このよ うなProcion Black不 染部分 に 対 して は

適当な染料に よる対比染色を施 して染着 の難易に よる差

を検 出し得 るよう考案するのが望ましい。

5.他 種繊 維へ の応 用

Fig. 9 A sample of Vinylon with skin-core

differentiatian, the core being selectively

stained. (800X)

Fig. 10 Silk fibroin filaments, showing a

uniform staining. (800X)

Page 5: Procion Dyeing

498報 文62

Fig. 11 Wool fibers, showing a bilateral

staining. (800x)

上記染色法をそのまま他種繊維 の切片標本に応用 した

場合次のよ うな結果が判明した。

染ま らな もの:ナ イ戸ン,テ トロン,オ ーロン,ア セ

テー ト

染まるもの:ビ ニロン(第9図),絹(第10図),羊

毛(第11図)

興味あることは,ビ ニロンにおいて内外層の染めわけ

が起つていることお よび羊毛においてbilateralな 形 の

染めわけの観察されることである。 これ らの繊維につい

てもProcion染 料 はそれぞれ の反応性水酸基 と化学的

結合を通 して染色を起 しているものと予想 され,従 つて

これら繊維の内部構造に関する新 しい知見 を付加す るも

のであろ う。特に羊毛についてはその捲縮性 との関連に

おいて古 くか ら塩基性染料および酸性染料に よる切片標

本のBilatera1な 染色 が報告 されて いる(16~18)。 反

応性Procion染 料に よる第11図 の染めわ けが これ らイ

オン性染料に よる染めわけ とどの ように対応 しているか

また羊毛の物理的あるいは化学的性質につ いてどんな こ

とを意味するか,今 後の研究に またねぽな らない。

6.ま と め

セル ロース繊維に対す る反 応 性 染 料 の一 種 で あ る

Procion Black HGSを 用 いて ビスコース レ戸ヨン切片

における特異的な スキン染色を与える新 しい方法にっい

て記述 した。

この方法は何 ら特別の分色操作を要せず,き わめて簡

便迅速であ る。 ここに得 られる染色は従来の通常の染料

を用いる方法と全 く異なつた機構に基ず くものであるか

らその応用は一般に再生セル"一 ス繊維の顕微鏡的研究

に対して も重要な結果を もた らす ものと期待される。

なお同 じ染色法がビニロン,絹,羊 毛の切片標本にも

適用され,興 味あ る所見を与 えることが観察された。

あ と が き

本研究の発表を許可された東洋 レー ヨン株式会社研究

部 中央研究所長星野孝平博士に感謝す る。実験に協力さ

れた吉村堅次氏,染 料の供給,使 用法についての適切な

示唆 を与え られた小島弥一 氏に謝意を表す る。

•¶Œ£ 1) T. Vickerstaff ; J. Soc. Dyers. Co., 73, 237

(1957).

2) T. Vickerstaff ; Am. Dyestuff. Reptr., 47, 33

(1958).

3) J. Wegmann ; Melliand. Textilber., 39, 1006

(1958).

4) žwŽR”ª˜Y,•^“ç•C;•õ•F•H‹Æ, 6, 169 (1958).

5) ‰Á“¡•“ˆê;‘@ŠwŽ•, 14, 678 (1958).

6) J.M.Preston ; J. Soc. Chem. Ind., 50, T199

(1931).

T) K. Ohara ; Sci. Pap. Inst. Phys. Chem, Res.,

25, 152 (1934).

8) W. Schramek & J. Helm ; Kolloid-Z., 85, 291

(1938).

9) J. M. Preston & G. D. Joshi ; Kolloid-Z., 122,

6 (1951).

10) K. Kato ; Text. Res. J., 27, 803 (1957).

11) F. F. Morehead & W. A. Sisson ; Text. Res. J.,

15, 443 (1945).

12) P. H. Hermans ; Text. Res. J., 18, 9 (1948).

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14) A. N. J. Heyn ; Fiber Microscopy, p. 201,

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15) K. Katon ; Text. Res. J. (in press)

16) K. Ohara ; Melliand Textilber., 19, 407(1938).

17) M. Horio and T. Kondo ; Text. Res. J., 23,

373 (1953).

18) E. H. Mercer ; ibid., 23, 388 (1953).