branchless banking in actuality

6
ブランチレスバンキングの現状 Branchless Banking in Actuality 宮本 Ei Miyamoto [email protected] This paper introduces the actualities of branchless banking, a financial enterprise without branches, to show that, despite its current difficulties, it can effectively help developing countries modernize. It enables the poor in these countries to easily access to financial services. I describe the characteristics of this new financial project in comparision with microfinance and mobile banking. Then, by taking M-PESA in Kenya as a pioneering example of branchless banking, I suggest that M-PESA's success crucially illuminates the future expansion of the brand-new banking. キーワード ブランチレスバンキング,モバイルバンキング,マイクロファイナンス,M-PESA 1.ブランチレスバンキングと開発 近年、ブランチレスバンキング(branchless banking)という言葉が脚光を集めるようになった。 試みにカタカナで表記しておいたこの語は、店頭での 接客を前提とせず、町中の ATM や携帯電話 mobile)やパソコンを介してサービスを提供する無 店舗型金融を指すものである 1 。多くのブランチレス バンキングでは、代理店(agent)としての小売業者 や郵便局を通じて顧客とのお金の受けわたしをおこな なっている。 ブランチレスバンキングは、貧しい人々に対する小 規模の金融事業を意味するマイクロファイナンス microfinance)と緊密なつながりをもっている。バ ングラデシュのグラミン銀行(Grameen Bank)が、五 人一組の連帯責任のもとに貧困層に対しお金を貸しつ ける事業をおこなっていることはよく知られるように なった。ブランチレスバンキングは、携帯電話などの ICTInformation and Communication Technology)を取 りいれることで、従来のマイクロファイナンスを効 化しようとする試みである。 ここで、アフリカをはじめとする開発途上国におけ る金融を取りまくな況を概観しておく必要があ るだろう。途上国の金融制度は、先進国のそれとは比 較にならないほど低い水準にある。アフリカの多くの 地域では社会的基盤は脆弱であり、人口密度は低く、 都市と農村には長い距離がある。法律や経済をはじめ、 1 現在のところ数は限られているが、ブランチレスバンキ ングを冠した先行研究には、(IvaturyMas, 2008);(Mas, 2009);(PickensPorteousRotman, 2009)などがある。 また、これらと非常に近しい問題意識を抱く研究としては、 モバイルバンキングを論じた( Duncombe, 2009 ); KumarMcKayRotman, 2010)などが挙げられる。なか でも、モバイルバンキングに関する研究の包括的なレビュ ーである(DuncombeBoateng, 2009)は味読に値する。 保健や教育などの基礎的な制度は未整備で、金融機関 が事業を展開するための環境はそろっていない。こう した況は、開発途上国において、人々が金融サービ スを利用するうえでの足枷となっている。 実際に、農村の貧しい人々が金融機関を利用するに は様々な障壁がある。銀行を利用しようにも、支店が ある近隣の都市までいくことが難しい。貯金や送金な どの需要があっても、金融機関を利用するために休日 を返上して遠距離バスに搭乗することは現実的ではな いのだ。そもそも多くの銀行は、貧困層に対して門戸 を開いてさえいない。多くのマイクロファイナンス実 施機関(MFI: Microfinance Institution)は、こうした 況のなかにビジネスのチャンスを見出し、二輪車や自 転車をもちいて行員を農村まで派遣することで、お金 を回収したり借り手の相談に乗ったりといった業務を おこなっている。 ブランチレスバンキングは、ICT を最大限に活用す ることで、従来のマイクロファイナンスにつきもので あった金融機関と顧客との金銭と情報のやりとりを効 化しようとする試みである。携帯電話から送金がで きるようになれば、小額の振りこみのために人々が遠 くの都市にまで足を運ぶ必要はなくなる。MFI にとっ ても、現地を訪問する営業活動は最小限にとどめ、通 話やメールで顧客との関係を維持することが可能にな る。金融機関を利用するために来店が不要であること は、先進国での同種のサービスが便利である以上に、 開発途上国において重要な意義をもっているのだ。 ブランチレスバンキングは、マイクロファイナンス と同様、開発(development)の一つの試みとして位 置づけられる。典型的な農村の貧困層は、通常の金融 サービスを利用できないがために、家のなかにお金を 隠しておいたり、家族に送るための現金の入った封筒 を知りあいの手に委ねたりと、安全とはいいがたい行 動を取らざるをえなかった。携帯電話やパソコンから

Upload: branchlessbanking

Post on 20-Jun-2015

684 views

Category:

Economy & Finance


2 download

DESCRIPTION

This paper introduces the actualities of branchless banking, a financial enterprise without branches, to show that, despite its current difficulties, it can effectively help developing countries modernize. It enables the poor in these countries to easily access to financial services. I describe the characteristics of this new financial project in comparision with microfinance and mobile banking. Then, by taking M-PESA in Kenya as a pioneering example of branchless banking, I suggest that M-PESA's success crucially illuminates the future expansion of the brand-new banking.

TRANSCRIPT

Page 1: Branchless Banking in Actuality

ブランチレスバンキングの現状

Branchless Banking in Actuality

宮本 瑛

Ei Miyamoto

[email protected]

This paper introduces the actualities of branchless banking, a financial enterprise without branches, to

show that, despite its current difficulties, it can effectively help developing countries modernize. It enables

the poor in these countries to easily access to financial services. I describe the characteristics of this new

financial project in comparision with microfinance and mobile banking. Then, by taking M-PESA in Kenya

as a pioneering example of branchless banking, I suggest that M-PESA's success crucially illuminates the

future expansion of the brand-new banking.

キーワード ブランチレスバンキング,モバイルバンキング,マイクロファイナンス,M-PESA

1.ブランチレスバンキングと開発

近年、ブランチレスバンキング(branchless

banking)という言葉が脚光を集めるようになった。

試みにカタカナで表記しておいたこの語は、店頭での

接客を前提とせず、町中の ATMや携帯電話

(mobile)やパソコンを介してサービスを提供する無

店舗型金融を指すものである1。多くのブランチレス

バンキングでは、代理店(agent)としての小売業者

や郵便局を通じて顧客とのお金の受けわたしをおこな

なっている。

ブランチレスバンキングは、貧しい人々に対する小

規模の金融事業を意味するマイクロファイナンス

(microfinance)と緊密なつながりをもっている。バ

ングラデシュのグラミン銀行(Grameen Bank)が、五

人一組の連帯責任のもとに貧困層に対しお金を貸しつ

ける事業をおこなっていることはよく知られるように

なった。ブランチレスバンキングは、携帯電話などの

ICT(Information and Communication Technology)を取

りいれることで、従来のマイクロファイナンスを効率

化しようとする試みである。

ここで、アフリカをはじめとする開発途上国におけ

る金融を取りまく独特な状況を概観しておく必要があ

るだろう。途上国の金融制度は、先進国のそれとは比

較にならないほど低い水準にある。アフリカの多くの

地域では社会的基盤は脆弱であり、人口密度は低く、

都市と農村には長い距離がある。法律や経済をはじめ、

1 現在のところ数は限られているが、ブランチレスバンキ

ングを冠した先行研究には、(Ivatury・Mas, 2008);(Mas,

2009);(Pickens・Porteous・Rotman, 2009)などがある。

また、これらと非常に近しい問題意識を抱く研究としては、

モ バ イ ル バ ン キ ングを論じた( Duncombe, 2009);

(Kumar・McKay・Rotman, 2010)などが挙げられる。なか

でも、モバイルバンキングに関する研究の包括的なレビュ

ーである(Duncombe・Boateng, 2009)は味読に値する。

保健や教育などの基礎的な制度は未整備で、金融機関

が事業を展開するための環境はそろっていない。こう

した状況は、開発途上国において、人々が金融サービ

スを利用するうえでの足枷となっている。

実際に、農村の貧しい人々が金融機関を利用するに

は様々な障壁がある。銀行を利用しようにも、支店が

ある近隣の都市までいくことが難しい。貯金や送金な

どの需要があっても、金融機関を利用するために休日

を返上して遠距離バスに搭乗することは現実的ではな

いのだ。そもそも多くの銀行は、貧困層に対して門戸

を開いてさえいない。多くのマイクロファイナンス実

施機関(MFI: Microfinance Institution)は、こうした状

況のなかにビジネスのチャンスを見出し、二輪車や自

転車をもちいて行員を農村まで派遣することで、お金

を回収したり借り手の相談に乗ったりといった業務を

おこなっている。

ブランチレスバンキングは、ICTを最大限に活用す

ることで、従来のマイクロファイナンスにつきもので

あった金融機関と顧客との金銭と情報のやりとりを効

率化しようとする試みである。携帯電話から送金がで

きるようになれば、小額の振りこみのために人々が遠

くの都市にまで足を運ぶ必要はなくなる。MFIにとっ

ても、現地を訪問する営業活動は最小限にとどめ、通

話やメールで顧客との関係を維持することが可能にな

る。金融機関を利用するために来店が不要であること

は、先進国での同種のサービスが便利である以上に、

開発途上国において重要な意義をもっているのだ。

ブランチレスバンキングは、マイクロファイナンス

と同様、開発(development)の一つの試みとして位

置づけられる。典型的な農村の貧困層は、通常の金融

サービスを利用できないがために、家のなかにお金を

隠しておいたり、家族に送るための現金の入った封筒

を知りあいの手に委ねたりと、安全とはいいがたい行

動を取らざるをえなかった。携帯電話やパソコンから

Page 2: Branchless Banking in Actuality

2

預金や送金の操作が可能になれば、このようなインフ

ォーマルな金融に頼ることのリスクは大幅に軽減され

る。マイクロファイナンスに ICTをかけあわせたブ

ランチレスバンキングは、金融サービスの提供によっ

て貧しい人々の生活を近代化するプロジェクトである。

とりわけアフリカにおいて、これまでは金融機関から

顧客とみなされていなかった貧困層がこのビジネスモ

デルにより金融サービスを利用できるようになってき

ている2。

ブランチレスバンキングは、近年の開発の潮流のな

かであらわれた営みである。ここ十数年のあいだ、コ

ンピュータが身近なものとなりインターネットが普及

するうちに、途上国を開発するためにこうした技術を

利用しようとする動きが生まれてきた。ICT4D

(Information and Communication Technology for

Development)などと総称されるこうした試みが目指

すものは、端的にいって開発途上国における情報への

アクセスの改善である。

たとえばインドの農村に e-チョーパル(e-

Choupal)とよばれる情報センターが設置されたこと

により、現地の農民は穀物の適正価格を知ることがで

きるようになり、仲買人から作物を安く買いたたかれ

ることがなくなった(Prahalad, 2005=2005);(Hart,

2007=2008)。また、インターネットに接続されたパ

ソコンを備えつけた一種の情報センターを設置し、地

域の住民に開放することは世界中でおこなわれはじめ

ている(Hart, 2007=2008);(Parkinson・Lauzon,

2008)。生活のなかに ICTを組みこむことは、開発

途上国の人々にそれまでは手に入らなかった情報を提

供し、情報の不均衡を解消する意義を有している。こ

うした事例が蓄積されるにつれ、開発のなかで ICT

を活用することの効果が認知されるようになった。

開発における ICTの導入は、携帯電話の爆発的な

普及と軌を一にしながら本格的に進められてきた。た

とえば、テキストメッセージ機能を利用し HIV/AIDS

に関するケア情報を遠く離れた患者に届けた事例や、

ワイヤレス通信に PDA(Personal Digital Assistants)の

使用を組みあわせることで本部の診療所と離れた地域

で医療活動に従事するスタッフとをつないだ事例が報

告されている(Kinkade・Verclas, 2008)。このように

開発の現場で便利に用いられるようになった携帯電話

を、金融というフィールドにおいて活用しようとする

のがブランチレスバンキングに他ならない。

ところで、ブランチレスバンキングには多くの類語

が存在する。モバイルバンキング・インターネットバ

ンキング(internet banking)・マイクロファイナン

ス・ソーシャルファイナンス(social finance)など、

一考するだけで似たような意味をもつ言葉がいくつも

浮かんでくる。ここではモバイルバンキングとマイク

2 アクセスのみならず、実際にサービスを使うための費用

の面でもブランチレスバンキングは優れている。高利貸し

などのインフォーマルな金融よりはもちろん、銀行をはじ

めとする金融機関が提供するフォーマルな金融よりも、ブ

ランチレスバンキングは一般に安価なものであるという

(McKay・Pickens, 2010)。

ロファイナンスをとりあげ、これらとブランチレスバ

ンキングとの違いを手短に論じておこう。

モバイルバンキングという語は、携帯電話から残高

照会や送金を提供する金融サービスを指す一般的な用

語である。日本の銀行のほか、Bank of Americaなども

この語を冠したサービスを提供しており、先進国で広

く用いられるようになっている。議論の簡略化のため

に大まかな違いをのべると、モバイルバンキングはあ

くまで店頭での接客を補完するものであるのに対し、

ブランチレスバンキングはむしろ無店舗によるサービ

ス提供をこととする事業である。国内外に無数の支店

網をもつ先進国の金融機関が展開する前者に対し、後

者は店舗の存在をそもそも前提しない。さらに、モバ

イルバンキングのほとんどが純粋に営利目的によって

なされる一方で、ブランチレスバンキングの実践が途

上国の開発という意義をもつものであることも顕著な

違いである。

次に、マイクロファイナンスとブランチレスバンキ

ングとの違いを考察しよう。マイクロファイナンスは、

担保をもたない・社会的信用が低いなどの理由によっ

て銀行などの従来の金融サービスから排斥されてきた

貧困層・低所得層に対し、多くの場合担保を要求せず、

小額の融資や貯蓄などのサービスを提供する金融事業

のことである。先述のとおり、マイクロファイナンス

をおこなう機関は、借り手をグループ単位に編成した

り、融資の対象となる事業に対しコンサルティングを

施したりすることで貸出金の確実な回収を目指してい

る。

マイクロファイナンスの対象となる人々はほぼブラ

ンチレスバンキングのそれと重なるものであるが、顧

客との関わり方は双方で大きく異なっている。マイク

ロファイナンスの魅力は、集会などの定期的な話しあ

いをもつことにより、お金の借り手と貸し手とが顔の

みえる関係を築くことのできる点にある。これに対し

ブランチレスバンキングは、ATMや携帯電話やパソ

コンの画面のなかで完結するサービスであり、そこに

は対面にもとづく豊かなコミュニケーションは発生し

ない。むしろ、そうした「人間味(human touch)」

(Ivatury・Mas, 2008, p.11)を ICTによって簡略化し

ていこうとするのがブランチレスバンキングの基本的

な考え方である。

以上、モバイルバンキングとマイクロファイナンス

との比較によって、ブランチレスバンキングを理念的

に浮かびあがらせてきた。実際には、ケニアの M-

PESAの事例を引きつつ次にみるように、ブランチレ

スバンキングと呼ばれる多くの取りくみが他の組織に

よる有人店舗を顧客とのお金の受けわたしのための窓

口としている。マイクロファイナンスを手がける

NPOが事業のなかで携帯電話を活用しようとするこ

ともある。純粋なかたちのブランチレスバンキングが

存在すると考えるよりは、ブランチレスバンキングや

マイクロファイナンスやモバイルバンキングなどが混

然一体となり、開発途上国の金融を近代化させつつあ

るととらえるほうが精確である。

最後に、開発途上国においてブランチレスバンキン

グを実施することの意義を考えたい。ブランチレスバ

Page 3: Branchless Banking in Actuality

3

ンキングは、金融へのアクセスを改善することにより、

貧しい人々の生活を近代化する効果をもっている。貯

金という観点からは、タンス貯金や衣服のなかに現金

を隠しもつことを余儀なくされていた人々は、ブラン

チレスバンキングによって金銭の盗難や紛失のリスク

から解放される。為替という観点からは、違法な送金

業者や手渡しによって稼ぎを家族に送らなくてもいい

ようになる。融資という観点からは、高利貸しや知

人・親戚からインフォーマルな借りいれをせず、相場

にみあった金利のもとで健全にローンを組めるように

なる。保険という観点からは、不意の事故や病気から

自己や家族を守ることが可能になる。

マイクロファイナンスがあつかう金融商品は、フォ

ーマルな金融機関が提供するものとほぼ同じであるこ

とが知られている(Brau・Woller, 2004, p.8)。総合的

な金融サービスを提供することによって貧しい人々の

暮らしはより安全で便利なものとなる。社会のなかで

生活するための金融に対するニーズに先進国と開発途

上国との違いはほとんどないのだ。ブランチレスバン

キングは、金融という観点から貧困層にエンパワーメ

ント(empowerment)を施し、巨視的には現地の社会

を開発していく営みである。

2.ケニアにおけるM-PESAの事例

以下では、ケニアにおける M-PESAという電子送金

サービスの現況をみていく。M-PESAは、貧困層に向

けた携帯電話による送金(remittance)事業であり、

広くブランチレスバンキングやマイクロファイナンス

の一種とみなしうるものである。M-PESAの事例を通

じて、開発途上国でブランチレスバンキングに取りく

むことの意義を考察していく3。

M-PESAは、携帯電話を利用した 1対 1(peer-to-

peer)の電子送金サービスである。これに登録するこ

とで、ユーザーは個々に電子的なアカウントを与えら

れ、他人と金銭を電子的にやりとりできるようになる。

アカウント上のお金は、代理店(agent)の店頭や提

携関係にある金融機関の ATMから出しいれできる。

M-PESAの Mは携帯電話(mobile)を、PESAはスワ

ヒリ語でお金を意味するものであり、まさしく携帯電

話による電子的なお金のやりとりを標榜する事業であ

ることがみてとれる。

2007年 3月にボーダフォン(vodafone)系列のサフ

ァリコム(Safaricom)という携帯電話事業者によっ

てリリースされた M-PESAは、わずか 2年後の 2009

年 5月には 700万人のユーザーを獲得し、ケニアの全

成人の 40%が使用するまでのものとなった

(Camner・Pulver・Sjöblom, 2009, p.3)。M-PESAで

は一回につき平均で 20ドルが取引きされ、これまで

に総べて 16億ドル以上に相当する金額が決済された

(Mas・Morawczynski, 2009, p.77)。お金の出しいれ

の窓口となる小売業者の総数は 16,900にも達してい

る(Mas・Radcliffe, 2010, p.3)。従来、他に信頼でき

る送金の手段がなかったケニアの人々の潜在的な需要

を押さえたことで、M-PESAは一挙に普及をみること

3 本節は、筆者の修士論文の一項に手をいれたものである

(宮本, 2010)。

になったのである4。

以下では、インタビューにもとづいた M-PESAに

対する民族誌的(ethnographic)研究(Morawczynski・

Pickens, 2009)によりつつ、この金融サービスがケニ

アでいかように用いられているのかをみていく。

第一に、このサービスは都市の送り手(urban

sender)と農村の受け手(rural recipient)というふた

つの典型的な顧客層を対象としたものである。前者の

ほとんどが男性であり、後者のほとんどは女性である

という。首都のナイロビをはじめとする都市への移住

が進展したケニアにおいて、出稼ぎに出た一家の稼ぎ

頭が故郷に残してきた親族にお金を送るというのが主

たる使途である。他の送金手段と比べたとき、安価で

あり、アクセスしやすく、安全であることから M-

PESAは人気を集めている。農村の受け手は、これに

登録するよう都市の送り手から促されているという。

M-PESAはもともと送金を想定して築かれたサービ

スであるのだが、一部のユーザーのなかにはこれを貯

蓄(saving)のために使っている者も存在する。銀行

を利用しているユーザーの 1/3近くが、預けいれや引

きだしに便利であるという理由で M-PESAを現金の

保管のために用立てているという。M-PESAは、タン

ス預金などのインフォーマルな貯蓄を代替するものと

しても機能しているのだ5。

M-PESAの導入によって変わったことの第一は、ケ

ニアにおいてフォーマルな金融サービスの恩恵にあず

かる人が増えたことである。ケニアでは、38%もの人

口がいかなる金融サービスからも除外されており、

35%の人口はインフォーマルな金融のみを利用してい

る(Camner・Pulver・Sjöblom, 2009, pp.5-6)。こうし

た人々は、手渡しやバスの運転手による仲介など、リ

スクをともなう送金手段の利用を強いられていた。

M-PESAの導入のわずか 1年後の 2008年にはこうし

た状況は一変し、ケニアの人々が M-PESAを利用し

て送金をおこなう割合は 47%にも達したという。

こうしたなかで、人々はこのサービスを利用した小

額の決済をこれまでより頻繁におこなうようになった

4 M-PESAが開始されるまでのサファリコムの内部の事情

については(Hughes・Lonie, 2007)に詳しい。 5 こうしたユーザーのほとんどは、銀行口座と M-PESAの

アカウントを上手に使いわけている。アクセスしやすい M-

PESAは日々の消費に好んで用いられる一方、銀行口座は長

期間の貯蓄にあてられる。本来 M-PESAは貯蓄を目的とし

たものでないため、アカウント上のお金には利子がつかな

いためである。2桁のインフレ率を記録するケニア経済にお

いては、利子による収益は軽視できる代物ではないのだ

(Mas・Morawczynski, 2009, p.89)。

このほか、ケニアにおける中央銀行の規制によらないイ

ンフォーマルなものであることも、貯蓄手段としてみたと

きの M-PESAの弱点である。また、突然の大きな額の払戻

しに対し、多くの代理店は対応できない(Mas・Radcliffe,

2010, p.17)。それでも、民族紛争の影響を受け混乱してい

たこともある銀行と比較して、この金融サービスは高い評

価をえているようだ(Economist, 2009)。

Page 4: Branchless Banking in Actuality

4

(Morawczynski・Pickens, 2009, p.3)。従来のインフ

ォーマルな金融サービスでは、手数料やアクセスの悪

さなどの問題があり、都会から農村への送金はひと月

かふた月に一回のペースでまとめてなされるものであ

った。頻繁な送金は、安価であり便利であることに加

え、金融サービスとしての M-PESAのきちんとした

性格から生じる安心感にもとづいておこなわれている

ようだ。

M-PESAはいまでは、子どもの学費から居酒屋での

飲み代・医療費やタクシーの運転手への運賃の支払い

まで、幅広く決済の手段として用いられている

(Economist, 2009)。お金を直接もちはこぶことのリ

スクを減らすことができるため、タクシーの運転手は

M-PESAによる支払いを歓迎しているという。M-

PESAはいまや公共料金の支払いにも進出しており、

電気代の 20%がこれによって回収されている(Mas・

Radcliffe, 2010, p.4)。

M-PESAがケニア社会に与えたインパクトは、人々

の金融に対する意識の変化にとどまらない。まずこの

金融サービスは、少なからぬ額の所得の向上をケニア

の人々にもたらすものであった。農村の人々は、M-

PESAを利用することで、従来のインフォーマルな手

段で送られたお金を遠くのサービス拠点まで取りにい

くための旅費を捻出する必要がなくなった。これに加

え、お金が頻繁に送られてくるようになったことによ

り、5%から 30%の所得の向上が農村の人々にもたら

されたという。

他方で、思わぬ副次的な効果もあった。M-PESAの

頻繁な利用により、出稼ぎ先から農村へお金を届けに

いく必要性が薄れたことによって、都市への移住者が

故郷に戻る頻度は減った。このことは、農村に残され

た妻たちの関心事(concern)となっているという。

農村の女性にとってみれば、自分名義の電子アカウン

トをもつことは、お金に関して夫からの自立

(autonomy)を果たすことを意味している。女性に対

するエンパワーメントという意義を有する一方で、こ

のサービスはこれまでのケニア社会における家族の形

態を変化させるものでもあるのかもしれない。

さて、M-PESAの成功要因であるが、これは携帯電

話を使ったサービスであるということに尽きるだろう。

気軽にもてる携帯電話に誰でも簡単に使うことができ

セキュリティ面にも配慮した送金のプラットフォーム

を築いたことが、M-PESAの今日の成功を約するもの

であった。携帯電話のインフラを利用することで諸経

費を減らし、従来の銀行や送金業者にとってはとても

わりにあわないような低価格でサファリコムは充実し

たサービスを提供しているのである(Omwansa, 2009,

p.112)。

さらに、サファリコムがケニアにおいて 1997年か

ら事業をおこなっており、この国の携帯電話市場にお

いて 70%のシェアをもっていることから、ユーザー

の多くがこの事業者に高い信頼をおいていることも見

逃せない(Morawczynski・Miscione, 2008, p.8)6。同

6 このほか、現地の部族(tribe)のしがらみに左右される

ことのないサファリコムの社長の姿勢も共感を集めている

じ理由により、代理店の多くはサファリコムブランド

の M-PESAをあつかうことに対しすぐに賛意を示し

たという(Hughes・Lonie, 2007)。サファリコムが有

する大きな市場シェアは、M-PESAが浸透をみるうえ

で大きな役割を果たしたのである。

また、ブランドマネジメント(brand management)

や、安定したサービスを顧客に提供するためのマーケ

ティングの観点からもサファリコムの戦略は非常に優

れたものであった(Mas・Morawczynski, 2009)。本

部が代理店に徹底的な管理・指導をおこなうことによ

って、どの代理店を訪れてもユーザーは同等のサービ

スを受けることができるようになっている。こうした

取りくみが、M-PESAというブランドの価値を高め、

ユーザーに愛着を抱かせる効果を生んでいる。

こうしたことが重なり、M-PESAのユーザー数がク

リティカルマス(critical mass)に達するにおよんで、

この金融サービスのネットワーク効果(network

effect)が育ちはじめた。ケニアの成人の 40%が M-

PESAを利用しているという事実は、サファリコムの

こうした巧みな戦略によるものである7。

このような M-PESAの成功に刺激され、携帯電話

事業者(mobile operator)と銀行の関係者はチームを

組織し、世界の各地で同様のサービスの展開を検討し

ている(Economist, 2009)。ケニアでは 2009年から

Zainという事業者が Zap moneyという携帯電話による

金融サービスをリリースし、サファリコムに追従しよ

うとしている。ウガンダでも 2009年に、MTNという

事業者がスタンビック銀行(Stanbic bank)と手を組

んで同種のサービスを展開し、これまでに一定の成果

を収めている。ガーナでもこの事業への着手をすませ

た MTNは、アフリカや中東を中心とする 20カ国で

同種のサービスに着手する構想を練っているという。

M-PESAは、これまではその恩恵にあずかれなかっ

た人々を対象として携帯電話を介した金融サービスを

提供するという点において、ブランチレスバンキング

やマイクロファイナンスと呼びうるものである。M-

PESAは、携帯電話を利用した金融サービスであるが

ために、金融・情報インフラに対するアクセスの改善

を貧困層にもたらす。それでは、この事例から、開発

におけるブランチレスバンキングの意義をどのように

考えられるであろうか。

第一に、金融インフラを整えることが貧困層にもた

らす効果について考えたい。繰りかえし述べてきたと

おり、ケニアに限らず開発途上国においては、人々は

非常に素朴な手段で金銭の管理をおこなっている。安

全性のあまり高くない家に財産のほとんどをおいてお

くことをはじめ、物売りが売りあげを腰巻きや衣服の

なかに大切にしまっておくことは頻繁にみられる。先

進国の人間からみれば、安全性という観点から非常識

とも思えるこうした行為は、金融サービスを利用でき

ようだ(Morawczynski・Miscione, 2008, p.9)。 7 このように多くのユーザーを擁する反面、2009年 5月の

時点においては、M-PESAはまだ単体の事業として収益をあ

げるには至っていない(Pickens・Porteous・Rotman, 2009,

p.4)。

Page 5: Branchless Banking in Actuality

5

ないことに加え、金銭に関する健全なリテラシーをも

ちえないことに起因するものである。携帯電話を介し

てフォーマルな金融サービスを利用できるようになる

ことは、安全な貯金や決済の手段を用意することに加

え、お金に関するきちんとした感覚を人々のなかに養

う効果をもつものと考えられる。ブランチレスバンキ

ングは、金融という観点から開発途上国の人々の生活

を近代化する意義をもっているのだ。

現状よりさらに携帯電話を用いたお金のやりとりが

一般的なものとなれば、電子的なアカウントを利用し、

マイクロファイナンスの核たる融資をおこなうことも

可能になるだろう。金融機関からの借りいれはもちろ

ん、借り手からの継続的な返済は、電子的にやりとり

されることで安全かつ便利なものとなる。これと預金

や為替を組みあわせることで、蓄えられたお金を引き

だしたり、家族に送ったりすることも簡単にできるよ

うになる。ブランチレスバンキングにこの種のサービ

スを導きいれることは、金融機関と貧しい人々の双方

にとって利の多いものである。インフラとしての金融

サービスは、ひとたび整備されることで、先進国と同

等の生活を貧しい人にもたらしていく。

M-PESA は当初はマイクロファイナンスの提供を想

定して設計されていたのだが、リリース前におこなわ

れた予備調査の結果を踏まえ、急遽、送金を主たる目

的としたものに変更されたという経緯がある(Mas・

Morawczynski, 2009, p.89);(Mas・Radcliffe, 2010,

p.12)。M-PESA の登場をみたケニアにおいて貧困層

への事業融資にどれだけのニーズがあるのかは不明で

あるが、M-PESA がこの国においてこれだけの存在感

を獲得したいまとなっては、そのネットワークを別の

使途に広げることも十分に考えられるであろう。送金

以外にも、年金ファンドの管理・賃金の支給・緊急ロ

ーンの支払い・保険やクレジットの提供など、M-

PESA は幅広くもちいられうるものである(Omwansa,

2009, p.116)。さらに、M-PESA の経験にもとづき、

ブランチレスバンキングを他国・他地域に移転するこ

とでさらに広い範囲で金融の近代化が可能となろう8。

3.ブランチレスバンキングの今後 以上、ケニアにおけるM-PESAをブランチレスバン

キングの先駆的な例として取りあげてきた。

ブランチレスバンキングは途上国を開発するための

万能のツールでは決してない。電波が届かない場所で

は携帯電話は使いものにならないが、そうしたところ

は開発途上国にはまだまだ多い(Singh, 2009)。有線

の電話ほどではないが、携帯電話を安定して使用でき

るようにするには大きな額の投資が必要となる。いか

8 このような展望に対する懸念もみられる。M-PESAはケ

ニアでは一定の成功を収めたものの、国柄など様々な違い

から隣国のタンザニアでは苦戦している(Camner・Pulver・

Sjöblom, 2009, pp.5-6)。M-PESAについて詳細な調査をおこ

なった Morawczynski自身、「ケニアでのモバイルバンキン

グの成功は他のところでは起こりえないかもしれない」と

述べている(Economist, 2009)。M-PESAの成功を広げてい

くために課題は数多い。

に革新的なものであろうと、技術の力によって一国全

体の状況を早急に変えることは困難である。

また、携帯電話やコンピュータなどのICTに大きく依

存した試みであるがゆえの弱点もある。高齢であるこ

とや読みかきができないことは、人々がブランチレス

バンキングを利用するうえでの支障となる。開発にお

いてICTを活用しようとする取りくみがしばしば批判さ

れるように、ブランチレスバンキングの当事者はデジ

タルデバイド(digital divide)の問題に無関心であって

はならないのだ。

さらに懸念されるのはセキュリティ上の問題である。

この種のサービスを運営するとき、他人へのなりすま

しやパスワードの盗用など、一部のユーザーによる悪

用の可能性をつねに念頭に置いておく必要がある。情

報や金融に関するリテラシーに乏しい途上国の人々を

対象としたものであるだけに、詐欺や横領などの犯罪

を未然に防ぐ制度やシステムの設計が求められる。

これらの欠点の一方で、ブランチレスバンキングが

まだまだ緒についたばかりの事業であることは銘記さ

れるべきであろう。銀行が主導する(banking-led)サ

ービスにすべきか、それとも通信事業者が主導する

(telecom-led)サービスにすべきかなど、試行錯誤を

くりかえしつつ各国の当事者たちはブランチレスバン

キングを実現しようとしている9。ガーナやバングラデ

シュや南アフリカなど、世界の各地でM-PESAからの

影響を受けた事業がおこなわれはじめているのだ。

さらに付言するならば、島嶼部や山間部など、都市

化が進んでいない日本の奥地においてもブランチレス

バンキングがもたらしうるものが非常に大きいことは

忘却されてはならない。それぞれの事例の蓄積に加え、

これらに対する研究の蓄積が待たれるところである。

ブランチレスバンキングの動向から、今後とも目を離

せそうにない。

(みやもとえい・都市銀行勤務)

参考文献 Brau, J. C. & Woller, G. M. (2004) Microfinance: A

Comprehensive Review of the Existing Literature.

Journal of Entrepreneurial Finance and Business

Ventures. 9, 1, 1-26.

(http://marriottschool.byu.edu/emp/brau/JEFBV%20200

4%20Vol.%209%20Micro%20Finance.pdf)

Camner, G. & Pulver, C. & Sjöblom E. (2009) What Makes

a Successful Mobile Money Implementation? –

Learnings from M-PESA in Kenya and Tanzania.

Mobile Money for the Unbanked. September 2009.

GSMA.

(http://mobileactive.org/files/file_uploads/mpesa_ke_tz.

pdf)

Duncombe, R. (2009) Impact Assessment of Mobile Phones

on Development: Concepts, Methods and Lessons for

9 マイクロファイナンスの担い手である MFIのいくつかは、

様々な課題に直面しながらブランチレスバンキングへの進

出を試みている(Kumar・McKay・Rotman, 2010)。

Page 6: Branchless Banking in Actuality

6

Practice. Development Informatics Working Paper

Series. 2009, 39. Centre for Development Informatics,

Institute for Development Policy and Management, SED.

(http://www.sed.manchester.ac.uk/idpm/research/public

ations/wp/di/documents/di_wp39.pdf)

Duncombe, R. & Boateng, R. (2009) Mobile Phones and

Financial Services in Developing Countries: A Review

of Concepts, Methods, Issues, Evidence and Future

Research Directions. Development Informatics Working

Paper Series. 2009, 37. Centre for Development

Informatics, Institute for Development Policy and

Management, SED.

(http://www.sed.manchester.ac.uk/idpm/research/public

ations/wp/di/documents/di_wp37.pdf)

Economist. (2009) Beyond voice: New uses for mobile

phones could launch another wave of development.

Economist. Sep 24th 2009.

(http://www.economist.com/specialreports/displaystory.

cfm?story_id=14483848)

Hart, S. L. (2007) Capitalism at the Crossroads: Aligning

Business, Earth, and Humanity. Upper Saddle River, NJ.

Wharton School Publishing. [石原薫訳『未来をつく

る資本主義——世界の難問をビジネスは解決でき

るか』英治出版. 2008年]

Hughes, N. & Lonie, S. (2007) M-PESA: Mobile Money for

the “Unbanked” –Turning Cellphones into 24-Hour

Tellers in Kenya. innovations. winter & spring 2007, 2,

1-2, 63-81. MIT Press Journals.

(http://www.policyinnovations.org/ideas/policy_library/

data/m_pesa/_res/id=sa_File1/INNOV0201_pp-63-

81_hughes-lonie_1.pdf)

Ivatury, G. & Mas, I. (2008) The Early Experience with

Branchless Banking. CGAP Focus*ote. April 2008, 46.

CGAP (Consultative Group to Assist the Poor).

(http://www.cgap.org/gm/document-1.9.2640/FN46.pdf)

Kinkade, S. & Verclas, K. (2008) Wireless Technology for

Social Change: Trends in Mobile Use by *GOs.

Washington, DC and Berkshire, UK. UN Foundation-

Vodafone Group Foundation Partnership.

(http://mobileactive.org/files/MobilizingSocialChange_f

ull.pdf)

Kumar, K. & McKay, C. & Rotman, S. (2010) Microfinance

and Mobile Banking: The Story So Far. CGAP

Focus*ote. July 2010, 62. CGAP (Consultative Group

to Assist the Poor). (http://www.cgap.org/gm/document-

1.9.45546/FN62_Rev.pdf)

Mas, I. (2009) The Economics of Branchless Banking.

innovations. spring 2009, 4, 2, 57-75. MIT Press

Journals.

(http://www.mitpressjournals.org/doi/pdf/10.1162/itgg.2

009.4.2.57)

Mas, I. & Morawczynski, O. (2009) Designing Mobile

Money Services: Lessons from M-PESA. innovations.

spring 2009, 4, 2, 77-91. MIT Press Journals.

(http://www.microfinancegateway.org/gm/document-

1.9.37315/INNOVATIONS-

Mpesa%20Service%20Design.pdf)

Mas, I. & Radcliffe, D. (2010) Mobile Payments Go Viral:

M-PESA in Kenya. Yes Africa Can: Success Stories

from a Dynamic Continent. March 2010. World Bank.

(http://siteresources.worldbank.org/AFRICAEXT/Res

ources/258643-1271798012256/M-PESA_Kenya.pdf)

McKay, C. & Pickens, M. (2010) Branchless Banking

Pricing Analysis. May, 2010. CGAP(Consultative

Group to Assist the Poor).

(http://www.cgap.org/gm/document-

1.9.43876/Branchless_Banking_Pricing_Analysis_May

_2010.pdf)

宮本瑛 (2010) 「ガーナ社会における kiva.orgのオンラ

イン・マイクロファイナンス――インターネット

を通じた社会開発の事例研究――」 東京大学大学

院学際情報学府平成 21年度修士学位論文.

Morawczynski, O. & Miscione, G. (2008) Exploring Trust

in Mobile Banking Transactions: The Case of M-PESA

in Kenya.

(http://www.nextbillion.net/archive/files/Morawczynski

%20and%20Miscione-%20GATES.pdf)

Morawczynski, O. & Pickens, M. (2009) Poor People Using

Mobile Financial Services: Observations on Customer

Usage and Impact from M-PESA. CGAP Brief. August

2009. CGAP (Consultative Group to Assist the Poor).

(http://www.cgap.org/gm/document-

1.9.36723/MPESA_Brief.pdf)

Omwansa, T. (2009) M-PESA: Progress and Prospects.

innovations. Mobile World Congress 2009, 107-123.

MIT Press Journals.

(http://www.strathmore.edu/pdf/innov-gsma-

omwansa.pdf)

Parkinson, S. & Lauzon, A. C. (2008) The Impact of the

Internet on Local Social Equity: A Study of a Telecenter

in Aguablanca, Colombia. Information Technologies

and International Development. 4, 3, 21-38.

(http://itidjournal.org/itid/article/viewPDFInterstitial/30

0/132)

Pickens, M. & Porteous, D. & Rotman, S. (2009) Scenarios

for Branchless Banking in 2020. CGAP Focus*ote.

October 2009, 57. CGAP (Consultative Group to Assist

the Poor).

(http://www.cgap.org/gm/document-

1.9.40599/FN57.pdf)

Prahalad, C. K. (2005) The Fortune at the Bottom of the

Pyramid: Eradicating Poverty Through Profits. Upper

Saddle River, NJ. Wharton School Publishing. [スカイ

ライト コンサルティング訳『ネクスト・マーケッ

ト——「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジ

ネス戦略』英治出版. 2005年]

Singh, R. (2009) Mobile phones for development and profit:

a win-win scenario. ODI Opinions. April 2009, 128.

Overseas Development Institute. London.

(http://www.odi.org.uk/resources/download/2846.pdf)