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1 炭素繊維複合材料の非破壊検査・モニタリング -材料の成形から運用までの新しいソリューション- 愛媛大学 大学院理工学研究科 生産環境工学専攻 生産システム学 助教 水上 孝一 平成301030

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Page 1: 材料3:愛媛大学 水上孝一 先生(修正)熱機械分析試験(TMA) 測定するべき硬化中の物性値 • 硬化収縮ひずみ • 線膨張係数 • 弾性係数(粘弾性)

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炭素繊維複合材料の非破壊検査・モニタリング-材料の成形から運用までの新しいソリューション-

愛媛大学 大学院理工学研究科

生産環境工学専攻 生産システム学

助教 水上 孝一

平成30年10月30日

Page 2: 材料3:愛媛大学 水上孝一 先生(修正)熱機械分析試験(TMA) 測定するべき硬化中の物性値 • 硬化収縮ひずみ • 線膨張係数 • 弾性係数(粘弾性)

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炭素繊維強化プラスチック

炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastic, CFRP)

強化材:炭素繊維

母材:樹脂

特徴

• 炭素繊維と樹脂から成る複合材料

• 軽量かつ高強度,高剛性• 耐食性に優れる

航空・宇宙機器,自動車,鉄道車両,風力発電,・・・

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CFRPの成形法

熱硬化性CFRP:炭素繊維+熱硬化性樹脂(エポキシなど)

プリプレグ(炭素繊維+未硬化の樹脂)

プリプレグ

加圧気体

真空引き

オートクレーブ

積層 加熱・加圧 脱型

プリプレグを用いた成形

RTM成形 (Resin Transfer Molding)

成形型

樹脂&硬化剤

繊維材(プリフォーム)

FW成形 (Filament Winding)マンドレル

炭素繊維クリール樹脂槽

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CFRPの成形シミュレーション

形状不整(反り) CFRP成形時の残留応力により,成形後に部材の反りが発生

要因

• 樹脂の硬化収縮• 熱収縮• 粘弾性

残留応力,反りを低減する温度分布,温度履歴の設定が必要

有限要素法解析により残留応力,反りを予測

解析のためには成形中の樹脂の物性変化取得が必要

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従来の硬化中物性取得法の問題点

• 硬化のレベルが異なるサンプルを多数用意し,それらに対し試験を行う必要がある

動的粘弾性試験(DMA)

熱機械分析試験(TMA)

測定するべき硬化中の物性値

• 硬化収縮ひずみ

• 線膨張係数

• 弾性係数(粘弾性)

• その場計測ではないため,成形中とは条件が異なることがあり,測定結果に影響する可能性がある

問題点

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光ファイバセンサによる内部ひずみモニタリング

Bagging film Sealant tape

75

GF bundle

Fiberdirection

ThermocoupleFBG sensor

Breather

Release film

Vacuum valve

埋め込み型光ファイバセンサによる内部ひずみ測定

-12000

-10000

-8000

-6000

-4000

-2000

0

2000

0

50

100

150

200

0 50 100 150 200 250 300 350

Strain (IL)Strain (NIL)

TemperatureTr

ansv

erse

stra

in (

)

Time (min)

Temperature ( oC

)

gelationpoint

cureshrinkage

thermalshrinkage

直径~150μmクラッド

被覆

コア

FBG

d

成形中の硬化収縮,熱収縮ひずみをモニタリング可能

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超音波ガイド波による弾性率モニタリング

00.050.10.150.20.250.30.350.40.45

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

170 210 250 290 330

Loss

mod

ulus

[GPa

]

Stor

age

mod

ulus

[GPa

]Oven time [min]

Storage modulusLoss modulus

90℃,50 kHz

超音波ガイド波による成形中の樹脂粘弾性特性測定

Release film Vacuum bag

UD CFRPSealant

80 mm

Piezoelectric sensor

x1

x3

x2

Piezoelectric sensorCFRP

受信波形解析による速度・減衰率取得(ヒルベルト変換,ウェーブレット変換)

硬化に伴う樹脂の弾性率の発達をモニタリング可能

速度と減衰率から時々刻々の弾性率変化を推定

転送行列法による分散曲線解析,複合材のマイクロメカニクス,・・・etc.

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技術の特徴・用途など

• CFRPの樹脂硬化に伴う一連の物性変化をその場測定可能

• 成形プロセスのリアルタイム観察により,最適な成形プロセス探索に係るトライアンドエラーのコスト削減

• 熱硬化性CFRPの成形モニタリングだけでなく,接着剤の硬化,熱可塑性樹脂の成形,腐食のモニタリングなど,材料物性変化のモニタリングに幅広く適用可能

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CFRPの成形不良

繊維うねりは圧縮強度,剛性の低下を引き起こす

繊維うねり

発生要因

(A. Jumahat et al., (2010))

0

300

600

900

1200

1500

1 2 3 5

圧縮強度

[MPa

]

ミスアライメント角度[deg.]

振幅

波長

ミスアライメント角度

• 成形型とCFRPの線膨張係数の差異• 曲面への積層• 成形中の樹脂の流れ

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従来の繊維うねり検出法と問題点

繊維うねりに対する非破壊検査

X線CT試験

• 高い精度と空間分解能でCFRP内の繊維方向を検出可能

繊維うねりのX線CT画像• 検査対象は小型のサンプルに限られる

• 繊維と樹脂のコントラストは必ずしも明瞭ではない

測定対象のサイズに制限されず,明瞭に繊維うねりを検出可能な非破壊検査法が必要とされている

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渦電流を用いた繊維うねり可視化法

CFRP

検出コイル

励磁コイル

渦電流 x

z y

炭素繊維に沿って流れる渦電流の経路を磁界分布から可視化し,うねりを可視化する

複素平面解析,空間周波数解析により渦電流のみからの磁界を抽出し,電流経路を推定

非接触で繊維うねりの分布を明瞭に可視化可能

非接触測定で,大面積を検査することも可能

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CFRPの導電性測定

LCR meter

Cross-ply CFRP [0/90/0/90]s

Eddy current probe

電磁場解析による異方性導電率とセンサ信号の関係取得

測定法 測定された σt [S/m]渦電流 3.88

4電極法 4.15

CFRP上での渦電流センサ信号測定

センサ信号ΔR

解析結果を用いた逆解析により厚さ方向導電率σtを推定(耐雷性の評価など)

渦電流を用いることでCFRPの導電性も非接触測定可能

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技術の特徴・用途など

• 渦電流を用いることにより,非接触で簡便に大面積の材料の欠陥検出,物性評価が可能

• CFRPのみでなく導電性材料に幅広く適用でき,導電性のばらつきや微小欠陥を検出可能

• 渦電流センサを用いた非接触ひずみ測定カメラなど,新規測定法への展開

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供用中のCFRPに発生する損傷

CFRPには,面外荷重により外部から目視不可能な損傷が発生

超音波C-scan画像

送信波

超音波センサ

反射波

はく離

従来の層間はく離検出法

• 水などの接触媒質の使用による時間コスト

• 表面に近いはく離が検出困難

問題点

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渦電流試験による層間はく離検出

励磁コイル

検出コイルアレイ

xz

y

CFRP[02/902]s

・・・

層間はく離の位置とサイズに応じて,はく離に対して感度が高い検出コイルが存在

層間はく離

1227

1291

Sensor output10 mm× 10mm delamination

330

Sensor output10 mm× 10 mmdelamination

CFRP内の導電性のばらつきに埋もれずに層間はく離を検出

381

No.1 No.2 No.3 No.4

No.1の検出電圧分布 No.2の検出電圧分布

非接触測定が可能で,かつ表面付近のはく離検出も可能

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光音響波によるはく離検出

Laser scattering

Photochemical interaction(fluorescence)

Photothermal interaction(heating)

Photoacoustic interaction(pressure wave)

物質中の光吸収体で吸収された光のエネルギーによって,加熱領域は熱膨張し,熱弾性過程によって光音響波が発生

CFRP表面

はく離

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技術の特徴・用途など

• 渦電流または光音響波を利用することで非接触かつ高速で材料内部の損傷を可視化可能

• 今後は空間分解能の向上やセンサの改良により渦電流や超音波に基づく非接触顕微鏡を開発していく

• 従来の超音波探傷試験法で困難だった表層付近のはく離も検出が可能

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企業への期待

• CFRPの成形から品質評価,損傷検出までのあらゆるステージにおける非破壊検査・モニタリング技術の開発

• 製品開発における欠陥発生メカニズムの解明や強度評価についても対応可能

• CFRPに限らず材料検査に関わる技術課題の解決や共同開発を希望

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関連する知的財産権

• 発明の名称 :層間はく離検出装置と方法出願番号:特願20218-158527

• 出願人 :国立大学法人愛媛大学

株式会社IHIエアロスペース

• 発明者 :水上 孝一、木村 憲志、佐藤 明良

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お問い合わせ先

愛媛大学

コーディネーター 仙波 浩雅

e-mail [email protected]

TEL 089-927-8819

FAX 089-927-8820

コーディネーター 山川 拓哉

e-mail [email protected]

TEL 090-5914 - 4216

FAX 089-927-8820