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NTT技術ジャーナル 2007.10 14 フォトニックネットワークの最新技術動向 光アクセスの現状と今後 現在,FTTHの急速な普及に伴う インターネットトラヒックの増加は目 覚ましいものがあります.今後もこの 傾向は継続し,ネットワークの高速 化・広帯域化へのユーザ要求はますま す増加すると想定されています.N T T が商用導入してきたシステムとユーザ 利用帯域変化,今後のシステムトレン ド予測を 図1に示します.現在,N T T においては,T D M技術をベースとした システム速度1Gbit/sのGE-PONが 精力的にサービス導入されています. 図に示すように,アクセスネットワー クの高速・広帯域化傾向は,映像コ ンテンツ等の大容量サービスへのユー ザニーズの高まりにより,今後も継続 すると予想されます.しかしながら,デ バイス性能の速度限界も近づいてきて おり,TDM技術による高速化も困難 となると予想されています.その点で, アクセスネットワークのさらなる高速・ 広帯域に向けては,TDM技術と WDM技術の連携が必要になると考え ています.また,今後は,従来のよう な単なるネットワークの高速・広帯域 化ではなく,ネットワークの高信頼化 やユーザニーズの多種・多様化へ即応 できるネットワーク構築が必要となる と予想され,その意味で,サービス追 加の容易性やスケーラビリティに優れ たWDM技術の重要性は今後ますます 増加すると考えられます. 図2は,アクセスネットワークに適 用されるWDM技術における波長数と フォトニックアクセスシステム技術 NTTアクセスサービスシステム研究所では,今後ますます多種・多様化 すると予想されるユーザニーズに即応可能なアクセスシステム実現に向け, ネットワークの大容量化,高信頼化および経済化に向けた基盤技術の研究開 発を行っています.本稿では,有線系のアクセス方式に関する高速・広帯域 化および高信頼化のための基盤技術についてその概要を紹介します. 高速広帯域 高信頼性 経済性 きむら ひであき よしもと なおと 木村 秀明 /吉本 直人 NTTアクセスサービスシステム研究所 (年) 2000 2010 2020 100 G 10 G 1 G 10GEPON 100GPON 図1 アクセスNWの高速・広帯域化 TDM方式による 高速化限界 WDM/TDM WDM技術による フレキシブル化 TDM技術による 高速・広帯域化 622 M BPON 622 M BPON 1.25 G GEPON (bitsUser) WDM技術による 高速・広帯域化 WDM技術による フレキシブル化 WDMへのシフト

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NTT技術ジャーナル 2007.1014

フォトニックネットワークの最新技術動向

光アクセスの現状と今後

現在,FTTHの急速な普及に伴う

インターネットトラヒックの増加は目

覚ましいものがあります.今後もこの

傾向は継続し,ネットワークの高速

化・広帯域化へのユーザ要求はますま

す増加すると想定されています.NTT

が商用導入してきたシステムとユーザ

利用帯域変化,今後のシステムトレン

ド予測を図1に示します.現在,NTT

においては,TDM技術をベースとした

システム速度1Gbit/sのGE-PONが

精力的にサービス導入されています.

図に示すように,アクセスネットワー

クの高速・広帯域化傾向は,映像コ

ンテンツ等の大容量サービスへのユー

ザニーズの高まりにより,今後も継続

すると予想されます.しかしながら,デ

バイス性能の速度限界も近づいてきて

おり,TDM技術による高速化も困難

となると予想されています.その点で,

アクセスネットワークのさらなる高速・

広帯域に向けては,TDM技術と

WDM技術の連携が必要になると考え

ています.また,今後は,従来のよう

な単なるネットワークの高速・広帯域

化ではなく,ネットワークの高信頼化

やユーザニーズの多種・多様化へ即応

できるネットワーク構築が必要となる

と予想され,その意味で,サービス追

加の容易性やスケーラビリティに優れ

たWDM技術の重要性は今後ますます

増加すると考えられます.

図2は,アクセスネットワークに適

用されるWDM技術における波長数と

フォトニックアクセスシステム技術

NTTアクセスサービスシステム研究所では,今後ますます多種・多様化すると予想されるユーザニーズに即応可能なアクセスシステム実現に向け,ネットワークの大容量化,高信頼化および経済化に向けた基盤技術の研究開発を行っています.本稿では,有線系のアクセス方式に関する高速・広帯域化および高信頼化のための基盤技術についてその概要を紹介します.

高速広帯域 高信頼性 経済性

き む ら ひであき よしもと な お と

木村 秀明 /吉本 直人

NTTアクセスサービスシステム研究所

(年) 2000 2010 2020

100 G

10 G

1 G

10G-EPON100G-PON

図1 アクセスNWの高速・広帯域化

TDM方式による高速化限界

WDM/TDM

WDM技術によるフレキシブル化

TDM技術による高速・広帯域化

622 M B-PON622 M B-PON

1.25 G GE-PON

(bit/s/User)

ユーザ帯域

WDM技術による高速・広帯域化

WDM技術による フレキシブル化

WDMへのシフト

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特集

NTT技術ジャーナル 2007.10 15

WDMシステム展開予想を示していま

す.WDM技術は,まずネットワーク

の高速・広帯域化を実現するTDM技

術の限界を打破する技術としてビジネ

ス向けなどに展開が進むと考えられま

す.このフェーズではWDM関連光デ

バイスの経済化技術の加速が大いに期

待されます.次の段階では,波長パス

設定やルーチングなどコアネットワーク

の一部連携を含めたかたちで進展し,

最終的には一般ユーザ向けを含め多

種・多様なアプリケーションに対応可

能な超多波長フォトニックネットワー

クのアクセス基盤を実現する技術とし

て拡がっていくと考えられます.

NTT研究所では,将来におけるエ

ンド・ツー・エンドのフォトニックネット

ワーク実現を目指し,各種信号多重化

技術,高信頼化技術およびシステム経

済化技術の研究開発を行っています.

高速・広帯域化への取り組み

本項では,我々が現在,研究を進

めている方式技術のいくつかを簡単に

紹介します.

■TDM技術

さらなるブロードバンドサービスの需

要増大を想定して,現在NTTの光ア

クセスシステムの主力として採用され

ているGE-PONシステムの帯域を10倍

にアップグレードしようと目指している

のが図1のシステムトレンドにも示し

た10G-EPONシステムです.TDMA

(Time Division Multiple Access:

時分割多元アクセス)技術をベースと

しており,GE-PONと技術的親和性

が高いことから,近年次世代光アクセ

スシステムとして注目を集めており,

IEEEにおいても標準化活動が開始さ

れています.一般に,PONシステムで

は,図3に示すとおり,局内に設置さ

れ る OLT( Optical Line Termi-

nal:光加入者線端局装置)と各ユー

ザ宅に設置されるONU(Opt i c a l

Network Unit:光回線終端装置)

までの距離は,ユーザごとに異なりま

す.したがって,各ONUから送信さ

れた信号がOLTに達した段階では,光

強度と位相が各々異なることとなりま

す.また,ONUは他ユーザが送信中

の場合,送信を停止し,OLT側からの

送信許可を受けてから送信を開始する

という方式を取っているため,光強度

の急激な変化が起こることになります.

このような光強度と位相の変化に対し

て,より瞬時に応答する性能(バース

ト応答性)がPONシステムの光送受

信回路には要求されます.そして,伝

送速度の高速化にしたがって,その要

求条件は厳しいものとなってきます.

NTT研究所では,このPONシステ

ムの鍵となる高速バースト光送受信技

術の研究開発を精力的に行っておりま

す.インピーダンス変換増幅回路

(TIA: Trans-Impedance Amplifier)

と振幅制限増幅回路(LA: Limiting

Amplifier)の自動差分制御(AOC:

Automatic Offset Control)機能,な

らびにクロックデータ再生回路(CDR:

Clock and Data Recovery Cir-

cuit)の位相同期機能を瞬時応答化

し,これらを1チップに集積化した3R

(等化増幅:Reshaping,識別再生:

Regenerating,リタイミング:Retim-

ing)受信回路を作製しました(1).そ

ブロードバンド性の追求

2000 2010 2020

10

100

1 000

(年)

図2 WDMによるアクセスネットワークフレキシブル化

既存GE-PON ネットワーク 第1フェーズ

高速・広帯域,低遅延ネットワーク化

第2フェーズ

ネットワークフレキシブル化 (柔軟性,コアネットワークとの連携性)

第3フェーズ

サービス無依存ネットワーク (多種・多様なアプリケーション対応)

粗密度WDMから超高密度WDMへ

(波)

波長数

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フォトニックネットワークの最新技術動向

NTT技術ジャーナル 2007.1016

の信号入出力波形を図4に示します.

入力光信号パワーが-1.5 dBmか

ら-18 dBmと大きく異なった場合に

おいても良好な波形を得ています.ま

た,バースト信号間のガードタイムが

99 ns,プリアンブルタイムが75 nsとい

う高い瞬時応答性能も得られており,

将来の10G-EPONシステムへの適用

が期待されています.

■WDM技術

図5は,波長多重技術を用いた

WDM-PONアクセスシステムの概要を

示しています.WDM技術は,電気回

路によるTDM多重技術では実現が困

難なアクセスシステムの超高速化を実

現する要素技術の1つであるとともに,

変調方式の異なるサービスあるいは

ユーザを多重,分離する要素技術の1

つです(2).図において,ONU#kは波

長多重による高速・広帯域化を実現

する回路構成を示しています.OLTに

おいて高速下り信号は,複数の低速信

号に速度変換され,それぞれ異なる波

長でONUに送信されます.ONUにお

いては,波長ごとに受信した低速信号

をMUX(Multiplexer:多重)回路

により多重化することで高速信号を得

ることができます.この方式の特徴と

して,取り扱う信号が低速であること

から高速化による受信器の感度劣化を

補償するための光増幅器等の増幅回路

等が不要であるとともに,波長を利用

したさまざまなサービスを提供すること

が可能です.また,図5において,

ペイロード ガードタイム プリアンプル ペイロード

-1.5 dBm -18.0 dBm

50 ns/div50 ns/div

100 mV/div100 mV/div

100 mV/div

20 ps/div

図4 10G-EPON用OLT受信回路における入出力波形

10G-ONU#k

GE-ONU#N

OLT

10G-ONU #k

LDPDDetector

Driver

GE-ONU #N

LDAPDDetector

Driver

APDLD

DetectorDriver

APDLD

PD

Detector

Detector

Driver

OLT

LD Driver

Downstream

10Gバースト受信技術 10G対応

図3 PONシステムにおけるバースト信号

Upstream

GE/10G混在収容 マルチビットレート技術GE/10G TDM収容

GE対応

GE/10G対応

LD :レーザダイオード APD:アバランシェフォトダイオード PD :フォトダイオード Driver :駆動回路 Detector:受信回路

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特集

NTT技術ジャーナル 2007.10 17

ONU#Nは,OLTから送信された複数

サービスを波長単位で受信できる回路

構成を示しています.

さらに,WDM技術は波長を利用す

ることで,物理ネットワーク内にさま

ざまな論理ネットワークを構築するこ

とが可能であるという特徴も持ってい

ます.

■光FDM技術

図6は,高分解能・高感度の光受

信技術により多波長化,大容量化,

多分岐化を可能とする光FDM-PON

アクセスシステムの概要を示していま

す.光FDM(Frequency Division

Multiplexing:周波数多重)技術は,

ヘテロダイン検波技術により超多波長

多重化を実現することが可能で,100

波以上の映像分配を提供することがで

きるとともに,多波長・多分岐により

大規模集合住宅収容等へのアクセス

サービスを経済的に提供することが可

能です(3).ここで,ヘテロダイン検波

技術とは,信号光とともにLO-LD

(Local LD:局発光源)を混合し光

検波器で受信することで,信号光と局

発光の干渉を生じさせる光受信方式で

す.このとき,光検波器より出力され

る電気信号〔IF(In t e rmed i a t e

Frequency:中間周波数)信号〕は

局発光の強度に比例するため,局発

光の光強度を大きくすることにより,

信号光を高感度に受信することが可能

となります.また,局発光の波長に近

接した波長の信号光と干渉を起こすこ

とから,波長多重信号から任意の波長

チャネルを選択受信すること(波長

チューナ)が可能であるという特徴も

あります.

■光CDM技術

図7は,光信号処理を用いた光

CDM-PON方式のシステムの概要を示

しています.本方式は,ユーザごとに

異なる符号により符号化された光信号

を多重・分離する方式で,多ユーザが

同一周波数帯を同時に使用することが

可能となることから波長の効率的利用

が可能です.また,光CDM(Code

Division Multiplexing:光符号多

重)アクセス技術により,多重チャネ

ル数の増大による新サービスの追加の

容易性,耐妨害性の向上による誤接

続によるサービス断防止を実現するこ

とができるため,アクセスネットワーク

の信頼性向上を図ることもできます.

ONU#k

ONU#N

λd1~λdX

OLT

PD

PD

PD

PD

Detector

Detector

Driver

N:1MUX

ONU #k

PD

LD

PD

Detector

Detector

Driver

λu1~λuy

ONU #N

LD

PD

LD

LD

LD

PD

PD

PD

Detector

Detector

Detector

Detector

Driver

Driver

Driver

Driver

Control

OLT

Control

Control

LD

MUX:多重回路 Control:制御回路 λ:波長

波長分散による遅延補償回路技術 可変型多重回路技術

WDMによる 高速・広帯域化

WDMによる サービス多重,ユーザ多重

図5 WDM方式概要

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フォトニックネットワークの最新技術動向

NTT技術ジャーナル 2007.1018

ONU #k

ONU #N

Driver

LO-LD

PDDetector

LD

λd1~λdM

OLT

Mod #M

PD Detector

Mod #1Driver #1

Driver #M

ONU #k OLT

LDs(λ1~λM)

Data D #k

Data D #k

Data D #N

Data U #N

Data U #k Data U #kData U #N

λu1~λuM

PD Detector

Control

LO-LD:局発光源 Mod:変調器

ヘテロダイン検波による高感度受信

図6 光FDM方式概要

Mod#k

Driver#k

Encoder#k Homodyne

Detector

Multi-frequencyLight Source

Data U #k

1100Multi-frequencyLocal Light Source

Decoder#k

1100

HomodyneDetector

∫ Data U #k

Mod#N

Driver#N

Encoder#N

Multi-frequencyLight Source

Data U #N

0110HomodyneDetector

Multi-frequencyLocal Light Source

Decoder#k

0110

HomodyneDetector

RX #kTX #k

RX #NTX #N

TX #kRX #k

TX #NRX #N

Data U #N

f0 f1 f2 f3 f0 f1 f2 f3

f0 f1 f2 f3

f0 f1 f2 f3 f0 f1 f2 f3

+

-

+

-

TX #k

TX #N

RX #k

RX #N

2B

2B

TX:送信器 RX:受信器 Multi-frequency Light Source:多波長発生光源 Multi-frequency Local Light Source:多波長発生局発光源 Encoder:符号器

Decoder:復号器 Homodyne Detector:ホモダイン検波器 B:帯域 f:周波数

Q Q-

Q Q-

Q Q-

Q Q-

図7 光CDM方式概要

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特集

NTT技術ジャーナル 2007.10 19

図7に示すように,周波数利用効率向

上を目指し,光OFDM(Orthogo-

nal Frequency Division Multi-

plexing:直交周波数分割多重)と

光ホモダイン技術を応用することによ

り1bit/s/Hzという高周波数利用効

率を実現する技術の研究も行っていま

す(4).

ここで,OFDMとは,複数の搬送

波を一部重なり合いながらも干渉する

ことなく高密度に周波数配置すること

ができる無線等で用いられるデジタル

変調方式技術で,狭周波数領域を効

率的に利用することが可能です.例と

して,ユーザ数3の場合の光OFDM

を用いたCDM方式を示しています.

送信器TX#kにおいては,光周波数f0,

f1がDataU#kにより,また,送信器

TX#Nにおいては,光周波数f1,f2が

DataU#Nにより変調・送信されます.

受信器RX#kにおいては,局発光・復

号器出力と受信信号をホモダイン検

波,加減算することで所望の信号を再

生します.ホモダイン検波とは,光搬

送波の周波数と局発光の周波数が等

しいときの干渉を利用することで信号

を抽出する位相変調方式による検波技

術です.このように光CDM技術は,

周波数効率を高めつつ高速広帯域化

を実現し,かつ信頼性や柔軟性を向上

し得る特徴があります.

簡易なネットワークへの取り組み

本項では,新たな方式の導入を容易

にするための技術の一例としてONUカ

ラーレス技術を紹介します.

■波長無依存型ONU技術

WDMアクセス方式においては,波

長制御がキー技術であるとともにその

経済化が必要不可欠と考えています.

NTT研究所では,既存アクセスネット

ワークにシステム変更を与えることな

く,最低保証帯域を1Gbit/s以上に

拡張可能なWDM型アクセスシステム

の経済化技術として,ONUを波長無

依存化することによりサービス即応性,

保守運用性向上といった柔軟性を拡張

する技術の研究をしています.技術

としては,ネットワークにおいて自動的

に未使用波長を検出し,光トランシー

バ間で光送受信波長を自動設定する

MCSMA( Multichannel Carrier

Sense Multiple Access:マルチキャ

リア感知多重アクセス)技術,光トラ

ンシーバに搭載する光源ごとの波長監

視・安定化回路を不要化し,経済的

に一括して波長監視・安定化する波長

制御信号一括発生技術,経済的に波長

可変が可能な光トランシーバ構成技術

等の研究を行っています(5).これら基

盤技術を確立することにより,ONUの

単品種化が可能となり,WDM技術を

主軸としたアクセスネットワークのトー

タルシステムの低コスト化が可能とな

ると考えています.

今後の展開

将来のアクセスネットワークは,本

稿で紹介したTDM技術,WDM技

術,光FDM技術,光CDM技術等の

各種基盤技術および経済化技術の連携

により,さらなる高速・広帯域化が進

んでいくと予想されます.また,サー

ビス追加の容易性,スケーラビリティ

を特徴とするWDM技術を適用するこ

とにより,ネットワークの高速・広帯

域化とともに,センサ等の低速ではあ

るが大規模なサービス等を収容可能と

いったアプリケーションを選ばないシー

ムレスなアクセスネットワークが構築さ

れていくと考えられます.さらには,

WDM技術を利用することで,コア

ネットワークとの連携によるネットワー

ク全体としてのフレキシブル化への進

展が期待されます.

■参考文献(1) S.Nishihara,S.Kimura,T.Yoshida,M.Nakamura,

J.Terada, K.Nishimura, K.Kishine, K.Kato,Y.Ohtomo, and T.Imai :“A 10.3125-Gbit/sSiGe BiCMOS Burst-Mode 3R Receiver for10F-EPON Systems,”OFC2007, PDP8,2007.

(2) K.Iwatsuki, J.Kani, H.Suzuki, and M.Fujiwara :“Access and Metro Networks Based on WDMTechnologies,”J.Lightwave Tech., Vol.22,pp.2623-2630, 2004.

(3) S.Narikawa, H.Sanjoh, N.Sakurai, K.Kumozaki,and T.Imai :“Coherent WDM-PON usingDirectly Modulated Local Laser for SimpleHeterodyne Transceiver,” ECOC2005,WE3.3.2, 2005.

(4) S.Kaneko, H.Suzuki, N.Miki, H.Kimura, andM.Tsubokawa :“ 1-bit/s/Hz SpectralEfficiency OCDM Technique Based on Multi-frequency Homodyne Detection and OpticalOFDM,”ECOC2007.

(5) H. Suzuki, M. Fujiwara, T. Suzuki, N.Yoshimoto, K. Iwatsuki, and T. Imai, “Aremote wavelength setting procedure based onwavelength sense random access (λ-RA)for power-splitter-based WDM-PON,”ECOC2006, We3.P.157, 2006.

(左から)木村 秀明/ 吉本 直人

今後も,誰もが,安心・安全に使えるネットワークの実現を目指し,基盤技術の研究開発を積極的に推進していきたいと思っています.

◆問い合わせ先NTTアクセスサービスシステム研究所光多重システムプロジェクト次世代アクセス方式グループTEL 043-211-2094FAX 043-211-8883E-mail [email protected]