先端金属および合金 material matters v2n4 japanese

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Advanced Metals and Alloys 磁気冷却用先端材料 金属間化合物の 水素化物 軽金属マトリックス ナノ複合材料 機械的合金化による 自己伝播反応 Advancing Technology— imagine a world without 先端金属および合金 TM Vol. 2, No. 4

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先端金属および合金に関する、世界各国の研究者によるショートレビュー。トピックス:磁気冷凍用先端材料、金属間化合物の水素化物、軽金属マトリックスナノ複合材料、機械的合金化による自己伝播反応

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Page 1: 先端金属および合金 Material Matters v2n4 Japanese

Advanced Metals and Alloys

• 磁気冷却用先端材料

• 金属間化合物の水素化物

• 軽金属マトリックスナノ複合材料

• 機械的合金化による自己伝播反応

Advancing Technology—imagine a world without

先端金属および合金

TM

Vol. 2, No. 4

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TM

Vol. 2 No. 4

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表紙について

金属と合金は、人類の文明の基幹をなしていると考えられます。銅やスズなどの金属を鋳造して、最初の機能的金属合金である青銅が作られたことで、人類が現代の技術社会に向かう道が開かれました。ほとんどの金属は、結晶化して立方最密格子(Al、Cu、Feなど)または六方最密格子(表紙に示したGd、Ti、Zr、希土類金属など)を形成します。この結晶格子が注目すべき特性の大部分を決定します。本号の表紙は、航空機などの驚異的な製品を生み出す長期にわたる技術プロセスの始まりである金属鋳造を表しています。

はじめに過去千年間、金属とその合金ほど人類の発展に貢献してきた材料はありません。数世紀にわたって、金属の研究は、応用材料科学の最も古い分野の一つである冶金学に属していました。これは、19世紀後半~20世紀前半に金属材料の用途が電子工学、エネルギー、航空、宇宙旅行など、科学技術のその他の領域に広がるとともに変化しました。今では、金属や合金なしにうまく機能する世界を想像することは不可能です。

従来、金属はそのほとんどが熱と電気の良導体である光沢のある固体として表現されてきました。金属は延性を持ち、ほとんどが高温で溶融します。金属と合金の形状は機械的処理によって容易に変えることができますが、この技法は金属合金や複合材料の調製、修飾、および化学的変換に使用することができます。現在87種類の金属が知られており、そのうち61種類は、さまざまな形状および塩類・酸化物などの形で弊社より販売いたしております。それらは、以下の周期表中、赤色で強調して表示してあります。詳細は、14~15ページ掲載の周期表をご覧ください。

H He

Li Be B C N O F Ne

Na Mg Al Si P S Cl Ar

K Ca Sc Ti V Cr Mn Fe Co Ni Cu Zn Ga Ge As Se Br Kr

Rb Sr Y Zr Nb Mo Tc Ru Rh Pd Ag Cd In Sn Sb Te I Xe

Cs Ba La Hf Ta W Re Os Ir Pt Au Hg Tl Pb Bi Po At Rn

Fr Ra Ac 104 105 106

Ce Pr Nd Pm Sm Eu Gd Tb Dy Ho Er Tm Yb Lu

Th Pa U Np Pu Am Cm Bk Cf Es Fm Md No Lr

Pure metals at Sigma-Aldrichvisit sigma-aldrich.com/metals for details

Material Matters™ の本号では、磁気冷凍、高圧大容量水素吸収システム、ナノ複合材料、機械的に誘発された金属固体の転換など、先端用途向けの金属および合金に焦点を当てています。米国エネルギー省エイムズ研究所、モスクワ国立大学、ウィスコンシン州立大学ミルウォーキー校、およびメリーランド大学のこの分野を代表する専門家が最近の実験結果について論述し、金属、合金、およびその用途に関連するアイデアや技術を紹介します。

本号には、新たに製品化した磁気冷凍合金、水素化物を形成する金属間化合物、磁性材料、高純度希土類金属および箔なども記載しています。特集記事“Your Materials Matter”の中で、Hy-Energy LLC社のCEOであるKarl Gross博士が提案したシグマ アルドリッチの新製品である、直線配列多層カーボンナノチューブをご紹介します。シグマ アルドリッチの材料科学部門の目標は、お客様の研究を加速する革新的な材料を提供することです。製品の詳しい情報と技術情報については、ウェブサイトsigma-aldrich.co.jp/aldrich/msをご覧ください。Material Matters™ に関するご意見、ご質問、ご提案については、[email protected]までご連絡ください。

Viktor Balema, Ph.D.Materials ScienceSigma-Aldrich Corporation

目 次

先端金属および合金

はじめに _____________________________ 2

表紙について _________________________ 2

“Your Material Matter.” _________________ 3

磁気冷却用先端材料 ___________________ 4

金属間化合物の水素化物 _______________ 9

軽金属マトリックスナノ複合材料 _______ 16

機械的合金化による自己伝播反応 ______ 21

容量と価格はsigma-aldrich.comをご覧下さい

はじめに

本カタログに掲載の製品及び情報は、2009年4月1日現在の内容であり、収載の品目、製品情報、価格等は予告なく変更される場合がございますので、予めご了承ください。製品のご注文に際し、価格、在庫は弊社カスタマーサービスにお問合せください。また、弊社本国サイト(sigma-aldrich.com)上の製品検索でも価格と在庫状況をご確認いただけます。(設定方法の詳細は、当冊子の裏表紙等をご参照ください。)なお、掲載価格には消費税は含まれておりません。

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“Your Materials Matter.”

直線配列多層カーボンナノチューブ(MWCNT)

Joe Porwoll, President Aldrich Chemical Co., Inc.

Hy-Energy LLCのKarl Gross博士は、高感度ガスセンサーの研究開発に高品質カーボンナノチューブアレイが必要であることを示唆されました。当社は、高度に直線配列した多層カーボンナノチューブ(MWCNT)のアレイを新製品としてカタログに掲載いたします。このアレイは、シリコン基板(アルドリッチ製品番号687804)または銅基板(アルドリッチ製品番号687812)で供給され、ガス吸着センサー基板、センサー基板 1、触媒、電子放出源 2、電池、コンデンサーなど、幅広い材料の研究開発に独自のプラットフォームを提供することができます 3。

Carbon nanotube array, multi-walled, vertically aligned, on silicon wafer substrate687804-1EA

Carbon nanotube array, multi-walled, vertically aligned, on copper substrate687812-1EA

参考文献:(1) Collins, P.G., Bradley, K. Ishigami, M. Zettl, A., Science, 2000, 287, 1801. (2) Bonard, J. M., Stockli, T., Maier, F., De Herr, W. A., Chatelain, A., Ugarte, D., Salvetat, J. P., Forro, L., Physical Review Letters, 1998, 81, 1441. (3) Frackowiak, E., Gautier, S., Gaucher, H., Bonnamy, S., Beguin, F., Carbon, 1999, 37, 61

特徴:• MWCNTとして99.9%• CNTの直径は100 nm ± 10 nm• CNTの長さは30 µm ± 3 µm• アレイの密度~2 x 109 MWCNT/cm2

• アレイの寸法は1平方cm• プラズマ励起CVD(PECVD)により成長• ニッケル触媒チップが劣化しない状態で成長• クリーンルーム内で梱包、半導体グレードのパッケージで保存および出荷

材料科学研究に有用な化合物の情報を募集しております。「こんな物質を探している」、「こんな製品があればいいのに」といったご意見がございましたら、[email protected]までご連絡ください。

半導体グレードのパッケージに納められたCNTアレイ(黒い正方形)。挿入写真は、垂直配列したMWCNTのSEM画像。

本号で特集の先端金属および合金材料カテゴリー 内容 ページ

磁気冷却用材料 巨大磁気熱量効果を示す材料 7

磁気冷凍材料調製用超高純度金属 巨大磁気熱量効果を持つ新しい系の調製に適したシグマ アルドリッチ製品 7

磁性合金および磁性金属間化合物 永久磁石として使用する金属合金 8

水素吸蔵合金 さまざまな温度および圧力で大量の水素を吸収する能力を備えた金属材料 13

高純度鉄、ニッケル、およびジルコニウム 金属間化合物水素吸収システムの調製に使用する材料 13

シグマ アルドリッチ純金属製品 元素ごと(周期表)の金属化合物製品リスト 14–15

カーボンナノチューブ 単層および多層カーボンナノチューブ 19

高純度アルミニウム 高純度でご提供するアルミニウム金属の多様な形態 20

バイナリー系金属合金 2種類の金属からなる金属合金 24

バイナリー系金属化合物 金属炭化物、ケイ化物、およびリン化物 25

高純度金属 高純度マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウム 26

高純度希土類金属箔 コーティングおよびPVDプロセス用金属箔 27

はじめに

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磁気冷却用先端材料

Prof. V. K. Pecharsky and Prof. K. A. Gschneidner, Jr.

Ames Laboratory, Iowa State University

はじめに今日行われている室温付近での冷却は、ほぼすべてが蒸気圧縮冷却サイクルに基づいています。圧縮機、熱交換器、冷媒、外装など、市販の冷凍機のあらゆる部品は、長年にわたる学界および産業界での幅広い研究と開発への取り組みの結果、大幅に改善されてきました。しかし、従来の冷却技術のエネルギー効率はすでに原理的な限界に近づいているため、すでに実現された改善と今後予想される改善は段階的なものになります。さらに、冷媒として使用されるクロロフルオロカーボン(フロンガス)、ハイドロフルオロカーボン、その他の化学物質は最終的に環境中に排出されて、オゾン層の破壊や地球温暖化を加速します。一般に、液状化学品を用いた冷却は、地球の気候に悪影響をおよぼす累積的変化をもたらす主要な要因です。

冷却は、ある種の熱力学的トリガーに対応して温度が変化する作動物質を使用して、対象物を冷却することが基本です。このような変化は、素早く、反復的、可逆的、かつエネルギー損失を最小化して行われなければなりません。磁場は固体の各原子の磁気モーメントと効果的に結合するため、磁場は、磁性固体の温度を変えることができる一般的な熱力学変数の1つです。磁場を強めたり弱めたりすると、軟強磁性材料がそれぞれ加熱されたり冷却されたりすることは、19世紀後半に、Warburgが磁場の変化に対応して純鉄の温度が微小ではあっても測定可能な可逆変化を起こすことを報告してから知られるようになりました 1。今日、この現象は磁気熱量効果(MCE)として知られており、磁場の変化によって大きな可逆的な温度変化を示す材料は通常、磁気熱量材料と呼ばれます。機械的プロセス(蒸気の圧縮と膨張)を電子的プロセス(固体の磁化と消磁)で置き換えて可逆的な温度変化を得ると効率が顕著に向上するため、磁気冷凍はエネルギー効率が高く実施可能な、数少ない固体冷却技術の1つになっています。

磁気熱量効果磁気熱量効果は、磁気副格子が外部磁場と結合して、固体の全エントロピーの磁気部分に影響を与えたときに発生します。気体の等温圧縮によって、位置の不規則性とそれに対応する気体系の全エントロピー成分が減少するのと同様に、絶

対零度付近にある常磁性体またはCurie温度TC付近にある強磁性体がさらされている磁場(B)を、ゼロから何らかのゼロ以外の値まで、または一般的には、ある初期値Biからそれより高い最終値Bf(ΔB = Bf – Bi > 0)まで変化させると、スピン系の無秩序性が大幅に減少します。このため、全エントロピー(S)の磁気部分(SM)が大幅に減少します。可逆過程では、一定温度で気体が膨張するのと同様に、等温消磁(ΔB < 0)によって系のゼロ磁場の磁気エントロピーに復帰します。したがって磁気熱量効果は、示量的な熱力学量(物質の量に依存する熱力学量)として定量化することができ、これは等温磁気エントロピーの変化ΔSMになります。

気体を断熱的に圧縮してもその全エントロピーは一定のままですが、構成分子の速度、したがって気体の温度はいずれも増加します。同様に、固体の格子と電子エントロピーの合計は、材料の断熱磁化(または消磁)によって -ΔSMだけ変化しなければならず、そのために格子の振動エントロピーが増加(または減少)します。その結果、断熱温度変化ΔTadが生じますが、これは同じく磁気熱量効果の測定と定量化に使用される、示量性の熱力学量です。

標準磁気熱量材料̶Gd希土類金属Gdは、室温付近の用途での基準となる磁気冷媒材料です。Gdは、さらに改良するのが困難な優れた磁気熱量特性を示します。当然、この金属は磁気熱量効果による室温付近での冷却を実証するのに早くから使用されていました 2–4。ガドリウム(アルドリッチ製品番号263087, 261114, 263060, 691771)は、最初に成功した原理実証用冷却装置を作動させた冷媒として使用されました 4。金属ガドリニウムは、今までに製作され試験されたほぼすべての室温付近での磁気冷凍装置で、どの磁気熱交換器ベッドでも全体または少なくとも重要部分を構成していました 5,6。

熱容量と磁化のデータから計算したGdの等温磁気エントロピーの変化を図1に示します 7。異なる2種類の実験データから計算したMCEはよく一致しており、(2Tおよび5Tの磁場変化に対する結果を参照してください)実験での測定精度が十分であったことがわかります。さらに図1は、磁場が強くなるとともに磁場に対するMCEの微分係数が減少することを示しています(ΔTadとΔSMは、どちらもB2/3にほぼ比例しています。すなわちd(MCE)/dB∝ B–1/3)。言い換えると、最大の比磁気熱量効果(すなわち、単位磁場変化当たりのMCE)は、常にゼロ磁場付近で生じます。4通りの磁場変化に対する、示強性(物質の量に依存しない量)のGdのMCEを図2に示します 7。ΔSM、ΔTadと同様に、TCおよびd(ΔTad)/dBでのピークも、Bが増加するとともに大幅に低下します。GdのΔTadがほぼB2/3に依存することを図3に示します。これによれば、多数の著者が報告している実験での測定結果によって、MCEデータがB0.7の挙動によく一致していることが分かります。

磁気冷却用先端材料

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ΔB = 1 TΔB = 2 TΔB = 3 TΔB = 4 TΔB = 5 T

Δ B= 10 T

Δ B = 7.5 T

ΔB = 5 T

ΔB = 2 T

= =

TC

240 260 280 300 320 3400.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

Iso

ther

mal

mag

net

ic e

ntr

op

y ch

ang

e,

-ΔS M

(J/

mo

l K)

Gd

Temperature, T (K)

図1. 磁化(記号)と熱容量(実線)のデータから計算したGdの磁気熱量効果(等温磁気エントロピー変化、ΔSM)の比較

0

4

8

12

16

20

Δ B = 10 T

Δ B = 7. 5 T

Δ B = 5 T

Δ B = 2 T

Gd

340320300280260240

Temperature, T (K)

Mag

net

oca

lori

c ef

fect

, ΔT ad

(K)

TC

図2. 熱容量データから計算したGdの磁気熱量効果(断熱温度変化、ΔTad)

0

4

8

12

16

20

Gd, magnetocaloric effect at T = TC

1 2 3 4 5 6 7 8 9 100

Magnetic field, Bf (T)

Mag

net

oca

lori

c ef

fect

, ΔT ad

(K

)

ΔTad = 3.6753B0.7

図3. Curie温度におけるGdの磁気熱量効果(Bi = 0の場合について、最終磁場Bfの関数として示します)。記号は、直接測定した値または異なる著者による熱容量データから計算した値のいずれかを表します 7。実線は、MCEが磁場にべき乗法則で従うと仮定して、最小二乗法を適用したものです。

図1~3に示すGdの磁気熱量効果の挙動は、二次相転移である常磁性 -強磁性相転移を示す物質で非常に普遍的なものです。Gdと他の二次相転移物質の間のMCEの違いは、主に同じ磁場変化に対する磁気熱量効果の絶対値、ピーク温度、および磁場の増加によって微分係数d(MCE)/dBが減少する速度の違いにあります。この普遍性を示すために、図4にいくつかの磁気熱量材料の断熱温度変化を示します。これらの材料はすべて、約14 K~約294 Kの範囲のさまざまな温度で二次転移によって磁気的に配列します。5種類の材料のうちの1つである元素状のジスプロシウムは反強磁性的に配列しますが、約2Tを超える磁場では共線的強磁性体に転移するため、Dy(アルドリッチ製品番号261076, 263028, 263036)のNeél温度付近でのMCEの挙動は他の強磁性体の挙動とほとんど同じです。

0

4

8

12

16

20 Δ Gd

Dy

ErAl2

B = 10 T

DyAl2

Gd0.73Dy0.27

0 50 100 150 200 250 300 350

Temperature, T (K)

Mag

net

oca

lori

c ef

fect

, ΔT ad

(K

)

図4. ゼロ磁場および10Tの磁場で測定した熱容量から計算された、ErAl28、 DyAl28、 Dy9、 Gd0.73Dy0.27

10、およびGd7の磁気熱量効果

巨大磁気熱量効果元素Gdなどの既知の化合物が示すものよりはるかに大きな(場合によっては2~3倍)磁気熱量効果を示す新たな化合物が最近発見されたため、先端磁気熱量材料の基礎科学と潜在的用途に対する関心に火がついてきました。先端磁気熱量材料の一群を構成する例の中で最も注目されるものは、FeRh11、La0.8Ca0.2MnO3

12、およびGd5Si2Ge2と関連するGd5(SixGe4–x)合金です 13,14。後者の参考文献では「巨大磁気熱量効果」(GMCE)という用語も作り出されました。数年後、他のいくつかの物質系にも、室温に近い温度で巨大磁気熱量効果が見られることが示されました。そのような材料には、Tb5Si2Ge2

15、MnAsとMnAs1–xSbx化合物 16、La(Fe1–xSix)13合金とその水素化物La(Fe1–xSix)13Hy17、MnFeP0.45As0.55と関連するMnFePxAs1–x合金 18、Ni2±xMn1±xGa強磁性形状記憶合金などがあります 19。

今日では、巨大磁気熱量効果は、磁場が誘起する磁気構造の一次転移から生じることがすでに確認されました。化合物に磁場を印加すると、その磁気状態は、常磁性または反強磁性からマルテンサイト様の構造歪みと同時に、または位相体積が不連続的(ただし明確な結晶変態を伴わず)に、ほぼ共線的強磁性に変化します。系が一次相転移を起こすと、温度の関数としての全エントロピーの挙動は、臨界温度Tcでのエン

磁気冷却用先端材料

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トロピーの不連続な(実際には、いくつかの超高純度ランタニドを除いてほとんど常に連続的な)変化を反映します。

一次相転移材料における巨大磁気熱量効果の示量性および示強性尺度の挙動は、二次相転移化合物が示す従来の磁気熱量効果と比べて異なっています。これは、図5を図1および図2と比較すると容易に理解できます。まず、特に小磁場での巨大磁気熱量効果は従来のMCEよりはるかに大きくなります(Gschneidner 20らによる最近のレビューを参照してください)。次に、GMCEの幅がΔBの増加とともに広がりますが、磁気秩序を生じる相転移の高温側で非対称的な広がりが見られます。第3に、ΔBの増加とともに、ΔSMとΔTadの両方が低磁場で急激に増大して、それぞれの微分係数(∂ΔSm / ∂ΔBおよび∂ΔTad / ∂ΔB)が飽和に向かう傾向を明確に示します。実際、磁場が転移を完了させるほど強ければ、ΔSMの不連続性の大きさは同じまま保たれます。この不連続性は、相転移エントロピー(磁気と構造の両方による寄与を含む、図5)に対応し、ΔSMのピーク下で観察されるバックグラウンドのわずかな上昇は、従来のMCEを示す他の物質の場合と同様に、強磁性状態にある材料の磁気エントロピーに対する磁場の効果によるものです。最近示されたとおり 9、一次磁気相転移付近のDyがT = 90 Kで示す磁気エントロピー変化の計算値は、ゼロ磁場で直接測定される自然発生的なFM → AFM相転移のエントロピー変化と2%以内で一致します。

0

5

10

15

20

ΔB

= 2 T

ΔB

=5 T

ΔB

= 7.5

T

ΔB

= 7.5 T

ΔB

= 5 T

ΔB

= 2 T

0

1

2

.

(a) (b)

ΔTad

(T) ΔB

,P (

K)

-ΔS M

(T) ΔH

,P (J

/g-a

t K

)

Temperature, T (K) Temperature, T (K)260 270 280 290 300 310 320 260 270 280 290 300 310 320

図5. (a)示量性尺度(ΔSM)と (b)示強性尺度(ΔTad)で表したGd5Si2Ge2の巨大磁気熱量効果を、0~2T、0~5T、および0~7.5Tの3通りの磁場変化について熱容量データから計算した温度の関数として示しました。(b)の白三角形は、0~5Tの磁場変化について直接測定したGMCEを表しています。

従来のMCE(図1、2)と巨大MCE(図5)は明らかに大きく異なりますが、その違いは、主として二次材料と一次材料それぞれにおける構造変化の有無によるものと考えられます。巨大MCEは、構造転移に付随するエントロピーの変化ΔSstr

によって発生します。そのため、観察される巨大磁気熱量効果ΔSMは、従来の磁気エントロピー駆動型プロセス(ΔSm)と固体の2種類の結晶変態でのエントロピーの違い(ΔSstr)との合計になります。言い換えると、巨大磁気熱量効果の中心は次式の右辺第2項です。

ΔSM = ΔSm + ΔSstr

先端磁気熱量材料およびその他の可能な用途巨大磁気熱量効果が発見されたこと、および複数のGMCE材料系の特性を幅広く把握したことは、磁気熱量効果の科学と将来的な室温付近での冷却への応用ためのいずれにも、非常に重要な進歩です。5T以下の磁場での全MCE(等温磁気エントロピー変化で定量化されるもの)に対する寄与のうち、格子の結晶学的変化および関連する電子的変化が重なり合ったものが50%以上を占める可能性があります。さらに重要なことは、構造的なエントロピー変化ΔSstrからΔSMへの相対的な寄与は、最終磁場(Bf)の強度が磁気構造転移を完了させるのに十分である限り、磁場が減少するにつれて増大します。ご興味のある読者は、最近のレビュー 20を参照してください。このレビューには、一次相転移化合物(GMCE材料)と二次相転移化合物(MCE材料)の磁気熱量効果を概略的に比較した図、および今日の最先端の磁気熱量材料を包括的に要約した参考文献リスト(初期のレビューを含む)が記載されています。

巨大磁気熱量効果系に生じる結合、構造的、電子的および磁気的な変化によって物質の挙動が大きく変化し、その結果、GMCEの他に非常に強力な各種の磁気応答特性が生まれます。特に、その中には巨大磁気歪み(Terfenol-Dの10倍になる場合もある)と巨大磁気抵抗(人工多層薄膜に見られるものと同等)が含まれます。ここでは、対応する相転移温度付近で観察される巨大磁気抵抗が、巨大磁気熱量効果材料の性質に応じて、正または負のいずれかになることに注意する必要があります。化学組成、たとえばGd5(SixGe4–x)合金のSiとGeの比率を簡単に操作するだけで、この材料が約4 K~約300 Kの範囲のほとんどの温度で、要求される最大の反応を示すように調整することができます。同様の効果は、La(Fe1–xSix)13Hy合金中の水素濃度、またはMnAs1–xSbx化合物中のAsとSbの比率を変えた場合にも見られることがあります。

磁気冷却用先端材料

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構造の変化が強磁性配列と結び付き、したがって磁場がトリガーとなる他の固体系にも先端磁気熱量材料が存在することは疑いありません。低磁場相と高磁場相の間のエントロピーの違いを最大化するように設計された材料、すなわち、大きな磁気エントロピー変化ΔSmの他に構造転移の大きなエントロピー ΔSstrを示す材料が、最も弱い磁場で最も強いMCEを示すものと予想されます。さらに、これらの材料のΔTadも大きいことが重要ですが、これは相転移温度での磁場の効果を最大化することによって実現できます。一次相転移材料に関して多くの研究がなされたにもかかわらず、巨大磁気熱量効果の基礎について学ぶべきことが数多く残っています。最も重要な問題は、現象に対する磁気および格子の両方による寄与をどのように制御して、十分小さな磁場(約1~2テスラ)で磁気熱量効果を最大化するか、およびGMCEに関連する時間依存性や不可逆性など、潜在的な悪影響をどのように低減するかということです。これらに対応することで、新興の磁気冷凍技術にこれらの先端磁性材料を応用する道が開かれます。

謝辞エイムズ研究所における研究は、米国エネルギー省材料科学部の基礎エネルギー科学事務局から、アイオワ州立大学との間の契約No. DE-AC02-07CH11358の下で支援を受けています。

参考文献:

(1) Warburg, E., Ann. Phys. (Leipzig) 1881, 13, 141. (2) Brown, G. V., J. Appl. Phys. 1976, 46, 3673. (3) Green, G.; Chafe, J.; Stevens J.; Humphrey, J. Adv. Cryo. Engin. 1990, 35, 1165. (4) Zimm, C.; Jastrab A.; Sternberg A.; Pecharsky V.; Gschneidner K. Jr.; Osborne M.; Anderson I. Adv. Cryo. Engin. 1998, 43, 1759. (5) Gschneidner, K. A., Jr.; Pecharsky, V. K.; In: Proc. 2nd Intern. Conf. Magn. Refr. Room Temp, Portoroz, Slovenia, April 11-13, 2007, A. Poredoš, A. Šarlah, Eds. (Int. Inst. Refr. IIR/IIF, Paris, France, 2007) p. 9. (6) Tishin, A. M.; Spichkin, Y. I. The Magnetocaloric Effect and its Applications (Institute of Physics Publishing: Bristol, 2003). (7) Dank’ov, S. Yu.; Tishin, A. M.; Pecharsky, V. K.; Gschneidner, K. A., Jr. Phys. Rev. B 1998, 57, 3478. (8) Gschneidner, K. A., Jr.; Pecharsky, V. K.; Malik, S. K. Adv. Cryo. Engin. 1996, 42A, 465. (9) Chernyshov, A. S.; Tsokol, A. O.; Tishin, A. M.; Gschneidner, K. A., Jr.; Pecharsky, V. K. Phys. Rev. B 2005, 71, 184410. (10) Pecharsky, V. K.; Gschneidner, K. A., Jr. unpublished. (11) Annaorazov, M. P.; Asatryan, K. A.; Myalikgulyev, G.; Nikitin, S. A.; Tishin, A. M.; Tyurin, A. L. Cryogenics 1992, 32, 867. (12) Guo, Z. B.; Du, Y. W.; Zhu, J. S.; Huang, H.; Ding, W. P.; Feng, D. Phys. Rev. Lett. 1997, 78, 1142. (13) Pecharsky, V. K.; Gschneidner, K. A., Jr. Phys. Rev. Lett. 1997, 78, 4494. (14) Pecharsky, V. K.; Gschneidner, K. A., Jr. Appl. Phys. Lett. 1997, 70, 3299. (15) Morellon, L.; Magen, C.; Algarabel, P. A.; Ibarra, M. R.; Ritter, C. Appl. Phys. Lett. 2001, 79, 1318. (16) Wada, H.; Tanabe, Y. Appl. Phys. Lett. 2001, 79, 3302. (17) Fujita, A.; Fujieda, S.; Hasegawa, Y.; Fukamichi, K. Phys. Rev. B 2003, 67, 104416. (18) Tegus, O.; Brück, E.; Buschow, K. H. J.; de Boer, F. R. Nature (London) 2002, 415, 150. (19) Albertini, F.; Canepa, F.; Cirafici, S.; Franceschi, E. A.; Napoletano, M.; Paoluzi, A.; Pareti, L.; Solzi, M. J. Magn. Magn. Mater. 2004, 272–276, 2111. (20) Gschneidner, K. A., Jr.; Pecharsky, V. K.; Tsokol, A. O. Rep. Progr. Phys. 2005, 68, 1479.

磁気冷却用材料名称 化学組成、物理的形状 Curie 温度 製品番号

Gadolinium-Silicon-Germanium Alloy, Gd5Si2Ge2 Gd5Si2Ge2, pieces/coarse powder ~ 270 K 693510-1G

Gadolinium-Silicon-Germanium Alloy, Gd5Si0.5Ge3.5 Gd5Si0.5Ge3.5, pieces/coarse powder ~ 70 K 693502-1G

Dysprosium-Erbium-Aluminum Alloy, Dy0.8Er0.2Al2 Dy0.8Er0.2Al2, pieces/coarse powder below 60 K 693499-1G

Gadolinium Gd, 99.99% (REM)* 293 K 691771-10G

*希土類金属

磁気冷凍材料調製用 超高純度金属金属 物理的形状 コメント 純度(%) 製品番号

Antimony (Sb) Beads 1–2 mm 99.999 266604-25G266604-100G

Calcium (Ca) Dendritic pieces purified by distillation 99.99 441872-5G441872-25G

Gallium (Ga) Low melting metal m.p. 30 °C 99.999 263273-1G263273-10G263273-50G

99.9995 203319-1G203319-5G203319-25G

Germanium (Ge) Powder –100 mesh 99.999 327395-5G327395-25G

Chips 99.9998 263230-10G263230-50G

Manganese (Mn) Powder ~10 µm 99.99 463728-25G463728-100G

Rhodium (Rh) Powder particle size not specified 99.99 204218-250MG204218-1G

Silicon (Si) Powder –60 mesh 99.999 267414-5G267414-25G

particle size not specified 99.9995 475238-5G475238-25G

磁気冷却用先端材料

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磁性合金種類 名称 コメント 製品番号

Samarium-Cobalt Alloys SmCo5, alloy 18,Discs 10X6 mm

B(H)max =140 kJ/m3 (18 MGsOe),Br = 0.87T (8.7kGs), Hcb = 680 kA/m

692859-3EA

Sm2Co17, alloy 24,Discs 10X6 mm

B(H)max =190 kJ/m3 (24 MGsOe),Br = 1.0T (10.0kGs), Hcb = 740 kA/m

692840-3EA

Sm2Co17, alloy 30,Discs 10X6 mm

B(H)max =240 kJ/m3 (30 MGsOe),Br = 1.16T (11.6kGs), Hcb = 840 kA/m

692832-3EA

Aluminum-Nickel-Cobalt Alloys AlNiCo, alloy 1,Discs 13X6 mm

B(H)max =8.0kJ/m3 (1 MGsOe),Br = 0.43T (4.3kGs), Hcb = 30 kA/m

692883-3EA

AlNiCo, alloy 5,Discs 13X6 mm

B(H)max =40.0kJ/m3 (5 MGsOe),Br = 1.25T (12.5kGs), Hcb = 48 kA/m

692867-2EA

AlNiCo, alloy 11,Discs 13X6 mm

B(H)max =84.0kJ/m3 (10.6 MGsOe),Br = 1.12T (11.2kGs), Hcb = 109 kA/m

692875-3EA

Neodymium-Iron-Boron Alloys NdFeB alloy 30/100,Discs 13X6 mm

B(H)max =239.0kJ/m3 (30. MGsOe),Br = 1.14T (11.4kGs), Hcb = 820 kA/m, Max. temp. 100 °C

693790-5EA

NdFeB alloy 30/150,Discs 13X6 mm

B(H)max =247.0kJ/m3 (31. MGsOe),Br = 1.13T (11.3kGs), Hcb = 844 kA/m Max. temp. 150 °C

693782-3EA

NdFeB, alloy 30/200,Discs 13X6 mm

B(H)max =248.0kJ/m3 (31. MGsOe),Br = 1.14T (11.4kGs), Hcb = 835 kA/m Max. temp. 200 °C

693820-3EA

磁性合金および磁性金属間化合物は、長期にわたり定磁場を作り出すことができる金属材料です。室温で常磁性を持つ合金を形成できる化学元素の数は、ごく限られています。Fe、Ni、Co、および希土類金属はその最も重要なものです。

シグマ アルドリッチが供給している磁性材料は、低質量で高磁場を形成できます。これらは、消磁しようとする影響に対してかなり安定です。当社の材料の主な特性は、以下に示すパラメーターで表せます。

最大エネルギー積、B(H)max:減磁曲線上で磁束密度(B)と磁場強度(H)の積が最大になり、所定のエネルギーを放出するのに必要な材料の体積が最小となる点。

残留磁束密度、Br:磁化力をゼロとしたときにヒステリシス曲線がB軸と交差する点であり、与えられた材料からの最大磁束の出力を表す。

保磁力、Hc:磁石を先に飽和させた後、観察される磁束密度Bをゼロまで減少させるのに必要な消磁力。

最高動作温度:磁性材料が磁気特性を保つことができる最高温度。

磁性合金および磁性金属間化合物

焼結NdFeB合金:

• 入手可能な磁石の中で最も強力• 真空中での粉末成形体の焼結を含む粉末冶金プロセスにより製造

• 研削およびスライシングが可能• 耐食性が低い• 予想される環境に応じてコーティング可能用途:電子デバイス、電気モーター、工業用機器、医療機器

焼結SmCo合金:

• 希土類磁石系の中で最も優れた温度特性• 真空中での粉末の焼結を含む粉末冶金プロセスにより製造

• 耐食性が良好• 表面処理の追加は不要• 研削およびスライシングが可能用途:電子デバイス、センサー、検知機、レーダー、その他のハイテク機器

鋳造アルニコ合金:

• 多種多様の複雑な形状とサイズが低価格で提供され、最高550℃までの高温用途に最適

• 耐食性が良好• 密度は 6.9 g/cm3~7.39 g/cm3の範囲• 代表的な硬さ̶50 Rockwell C

• 研削に適合用途:自動車用、電子デバイス、電気モーター、航空宇宙用、機器

sigma-aldrich.com

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9

Prof. Victor N. Verbetsky, Dr. Sergey V. Mitrokhin, Dr. Timur A. Zotov and Elshad A. Movlaev

Lomonosov Moscow State University, Russian Federation

はじめに水素化合物を形成する合金および金属間化合物の能力に関する最初の報告は、ZrNiが水素と容易に可逆反応を起こしてZrNiH3を形成することをLibowitz1が示した1958年に遡ります。しかし、金属間化合物の水素化物の化学という新しい分野の誕生は、通常その10年後にSmCo5

2やその他の希土類であるAB5

3、AB24金属間化合物などの水素化物を形成する化合

物が発見されたのと同時期であると考えられています。

金属間化合物の水素化物の実用的な用途は、水素との化学的相互作用に基づいています。一般に、この反応は次の式で表されます。

P1,T1M + x H2 ⇐⇒ MH2x,

P2,T2

ここで、Mは金属または金属間化合物です。金属間化合物の反応速度は、個々の金属の反応速度とは大幅に異なります。金属間化合物の水素化物は、この特異性のために、水素貯蔵および輸送用の有望な材料としてすぐに注目を集めました。従来の材料は、大多数が室温・低圧で水素を高速に吸収します。ただし、このような金属間化合物の水素化物は可逆的な重量水素吸収量が比較的小さい(1.4~1.9質量%)ため、実用的な関心は限られています。同時に、金属間化合物の水素化物は軽金属の水素化物と比べて安全性が格段に高いこと、また応用経験が豊富であることを考慮すると、水素の動作圧力範囲が広い新材料の開発に、大きな実用的な関心が寄せられます。さらに、現在では新しい高圧容器(最大250~350気圧)が入手可能で、その他にも800気圧の容器が開発されているため、高圧金属 -水素系の調査が容易になっています。

解離圧の高い金属間化合物の水素化物

実際、金属水素化物で満たされた高圧容器に水素を貯蔵することは、圧縮ガス技法と固体水素貯蔵技法の両方の利点を結び付けることになるため、貯蔵容器の合計容量は少なくとも10 %増加します。高い水素化物解離/水素脱離圧を備えた金属水素化物をベースとする系は、高圧圧縮機および内燃機関のコールドスタート点火装置の一部に応用するのにも非常に魅力的です。

高圧デバイス金属間化合物と水素との相互作用に関する研究が、新しい高圧装置を使用して243~573 Kの温度範囲で行われました。高圧系の略図を図1に示します。

Storage & Purification Section HP Section

Vacuum pump

Thermo(cryo)stat

Hyd

rog

en

H2S

tora

ge

un

it A

B5

H2S

tora

ge

un

it A

B2

HP

Gen

erat

or

VH

2

Bu

ffer

Sam

ple

ho

lder

D250

D3000

図1. 高圧(HP)系の略図

ユニットは、予備水素精製セクションと高圧(HP)セクションで構成されています。予備精製セクションは、水素供給源容器と2台の水素貯蔵および精製ユニットからなり、1台のユニットはAB5型合金(LaNi5、アルドリッチ製品番号685933)が充填され、もう1台はAB2型合金((Ti,Zr)(V,Mn)2、アルドリッチ製品番号685941)が充填されています。この構成は、水素化バナジウム(VH2)が充填された高圧発生装置が水素中の不純物によって汚染されることを防ぎます。水素中の不純物はVH2の表面を腐食させ、吸収容量を低下させ、その結果高圧発生装置の性能を損うからです。高圧セクションは、VH2が充填された高圧発生装置、試料ホルダー、緩衝容器、および圧力上限がそれぞれ250気圧と3000気圧である2つの圧力変換器(D250とD3000)で構成されています。試料ホルダーと高圧発生装置は、どちらもマッフル炉を用いて高温(最高573 K)に加熱できます。試料ホルダー周囲の実験温度も、243 K~333 Kの温度範囲で動作するサーモスタットを用いて一定に保つことができます。圧力変換器からのデータおよび試料ホルダーと高圧発生装置に取り付けられた熱電対からのデータは、コンピューター制御によるデータ収集システムが収集します。水素の吸収と脱離を正確に計算するために、筆者らはシステムのすべての構成部品の体積を求めました。体積は、設計図の寸法に基づいて計算する方法と、水を満たして測定する方法の2通りで求めました。

金属間化合物の水素化物

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gm

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dr

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ja

pa

n

10

試料ホルダーの体積は8.929 mLであることが分かりました。試料ホルダーの全体積を計算する際に、合金および関連する水素化物の体積も考慮に入れました。この実験で、代表的な試料の量は、15 g~20 gの範囲で変動しました。吸収または脱離された水素の量は、修正後のVan der Waalsの式5を用いて計算しました。

[p+a(p)/Vα][V–b(p)] = RT (1)

ここで、a, b=圧力依存係数(p > 1気圧の場合)p=圧力(気圧)T=温度(K)V=系の体積(cm3)R=一般気体定数(82.06 cm3 ·気圧 /モル·K)

脱離反応の熱力学的パラメーターは、Van't Hoffの式と実験から得られた圧力値に対応するフガシティー値を用いて求めました。

RT ln(fp) = ΔH–TΔS (2)

ここで、fp=フガシティーΔH=エンタルピーの変化ΔS=エントロピーの変化

最後に、式(3)と式(1)から得られた実在気体のモル体積を用いてフガシティー値を計算しました。

RT ln(fp) = RT ln p–*(Vid–Vreal)dpp

0

(3),

ここで、Vreal=実際に吸収/脱離された水素のモル体積Vid=吸収/脱離された水素の理想的なモル体積

筆者らのシステムでは、金属間化合物による水素吸収の実験的研究のほか、高い水素圧力での各種材料の挙動の研究が可能であることも注目に値します。

YNi5–H2系高圧での水素とAB5型金属間化合物との相互作用が報告されています 6。LaCo5、La0.5Ce0.5Co5、およびLaNi5は、高い水素圧力で組成がほぼRT5H9(R=希土類金属、T=遷移金属)である金属間化合物の水素化物を形成することが示されましたが、これは理論予測と一致します 6。筆者らの実験では、独特の特性を持っていることからYNi5合金を選択しました。YNi5は、低圧では容易に水素を吸収しません 7-9。しかし、Takeshita10が示したように、この材料に1550気圧をかけるとYNi5H3.5水素化物の合成が可能です。得られた圧力組成等温(PCT)線から、加えた圧力は、完全に水素化された試料を得るには不十分という結論に至りました。他の著者らの結果 11は、Takeshitaのものと大きく異なっています。

筆者らの研究では、YNi5と水素の活発な相互作用は、500気圧を超える圧力で始まりました。293 Kでの平衡水素吸収圧力は674気圧でしたが、対応する平衡脱離圧力は170気圧でした。1887気圧での水素化物の組成は、YNi5H5に相当します(1.3質量% H2)。–20~80℃の温度範囲での吸収 -脱離等温(PTC)線を図2に示します。筆者らのデータは、参考文献10で報告されているものとは異なります。文献10では、300気圧と1000気圧(293 K)に2つの脱離平坦部があり、水素化物の組成はYNi5H3.5に相当します。筆者らのデータは、参考文献11に報告されている結果とも異なります。文献11での解離圧はわずか12気圧で、水素化物の組成はYNi5H4.4です。

10

100

1000

10000

0 1 2 3 4 5 6

H/YNi5

353 K des313 K des293 K des273 K des253 K des

P(H2)(atm)

353 K abs293 K abs

図2. YNi5–H2系の吸収脱離等温線

さまざまなグループが報告した数値が一致していないのは、観察された水素の吸収および脱離速度が非常に低いことから説明できる可能性があります。筆者らの場合、平坦域で平衡に達するまでの時間は2~4時間でした。連続するいくつかの水素脱離ステップでの圧力変換器の読み取り値を示した図3をご覧ください。

YNi5 - H2

0

20

40

60

80

100

120

t, h

22 C des

15129630

P H

2, a

tm

18

図3. 平衡に達するまでの時間(t)に対する圧力変化(P)の依存性

多くの研究者 7–9が、YNi5の水素吸収特性を他のAB5合金と比較して、水素との相互作用での特異性は、YNi5の低温熱容量、電子構造、表面酸化のいずれからも説明できないという結論を得ています。筆者らの見解では、最も考えられる説明が参考文献8に記載されています。そこには、すべての二元系AB5型金属間化合物の中で、YNi5が最も低い圧縮率を持つことが示されています。したがって、YNi5の単位格子の体積が小さいことが、水素吸収特性に影響していることが考えられます。

筆者らは、lnP(H2)対1/Tのプロットを用いて、YNi5水素化物の水素脱離エンタルピーおよびエントロピーの値が、それぞれ21.86 kJ/mol H2および115.8 J/K·mol H2であることを見出しました。

金属間化合物の水素化物

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AB2–H2 系これらの研究のための基本材料として、筆者らは高い水素脱離圧力を持つLaves相のZrFe2およびTiFe2を選択しました。これらは、比較的低い圧力では水素を吸収しません。10,000気圧という超高圧を使用して、ZrFe2水素化物を合成できることが報告されています 12–14。筆者らの研究では、予備活性化を行わずに、約800気圧の最初の吸収 -脱離サイクルでかなりの水素吸収が始まることが示されました。それに続くサイクルでは、これより低い圧力で吸収が始まります。最初のサイクルでの吸収平衡圧は1120気圧でしたが、2回目以降のサイクルでは690気圧に低下しました(図4)。水素化材料中の水素含量は、室温1800気圧において3.5 H/式単位でした。218 Kという低い温度および1900気圧の水素圧力では、材料の組成はZrFe2H3.7です。図4の等温線は、明らかにヒステリシスを示しており、室温での吸収平衡圧は約690気圧ですが、脱離平衡圧はわずか325気圧です。

10

100

1000

10000

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4

H/ZrFe2

P H2 (atm)

313 K des293 K 1 abs293 K 1 des293 K 2 abs293 K 2 des273 K des253 K des

図4. ZrFe2–H2系の吸収 -脱離等温線

一部のスカンジウムの代わりにジルコニウムを用いると、水素化物の水素脱離圧力が低下します。ZrFe2と同様に、Zr0.5Sc0.5Fe2およびZr0.8Sc0.2Fe2は、C15 Laves相として結晶化します。Zr0.5Sc0.5Fe2での水素吸収は、予備活性化を行わなくても約100気圧で始まります。この系には目立ったヒステリシスはなく、吸収圧と脱離圧は非常に接近しています。この材料の水素含量は、295 Kおよび1560気圧で3.6 H/式単位に達します(図5)。

1

10

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1000

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0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4

313 K des293 K des273 K des253 K des

H/Zr0.5Sc0.5Fe2

PH2 (atm)

図5. Zr0.8Sc0.2Fe2–H2系の吸収 -脱離等温線

水素吸収 -脱離等温線の形状から、Zr0.5Sc0.5Fe2–H2系で2つの水素化物相が形成されていると考えられます。室温では、第1相(b1)の組成は二水素化物に近く、第2相(b2)の組成は三水素化物に相当します(表1)。水素脱離のエンタルピーとエントロピーを両方の相について計算しました。注目すべきこととして、Zr0.5Sc0.5Fe2の挙動は、ScFe1.8–H2系に似ており、安定な一水素化物のほかに、それより不安定なScFe1.8H2.4も形成されます 15,16。ところが、筆者らの研究では、スカンジウムの半分をジルコニウムに置き換えると、生成エンタルピーが三水素化物のそれより低い低水素化物の安定性が大幅に向上します(表1)。

表1. Zr1–xScxFe2–H2系の熱力学的パラメーター

IMC* H/IMC Pdes, atm T, Kfdes**, atm

ΔH, kJ/moleH2/ΔS, J/K·moleH2

ZrFe2 2.086

170325.1468.8

253.1273

295.7313

90.5188

396.7619

21.3(3) / 121(1)

Zr0.5Sc0.5Fe2

1.3

2.5

12.518.738.860.5

2246.4105177

254.1272.6295.1310.9

254.1272.6295.1310.9

12.518.739.762.5

2247.4

111.5195.5

19(2) / 95(6)

25.4(4) / 125(1)

Zr0.8Sc0.2Fe2 1.849

190290

253.4292.1313.1

50212343

21(1) / 117(5)

*金属間化合物**フガシティー

金属間化合物の水素化物

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12

水素化物であるScFe1.8H1.8、Zr0.5Sc0.5Fe2H2.5(2番目の平坦部)、およびZr0.8Sc0.2Fe2H1.8を比較すると、合金中のジルコニウム含量が増加すると、その水素脱離エンタルピーは減少することが分かります。一方、エントロピーの変化はZr0.5Sc0.5Fe2H2.5

で最大になります(表1)。

Zr0.8Sc0.2Fe2–H2では、活性化しなくても水素吸収がやはり100気圧で始まります。室温(293 K)、1650気圧での水素組成は、Zr0.8Sc0.2Fe2H3.7です(図6)。219 Kまでさらに冷却すると同時に水素圧力を1730気圧まで上げると、最大の水素化物組成はZr0.8Sc0.2Fe2H3.8に相当するようになります。

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0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4

313 K des

293 K abs

293 K des

253 K des

H/Zr0.8Sc0.2Fe2

P(H2) (atm)

図6. Zr0.5Sc0.5Fe2–H2系の脱離等温線

一部のスカンジウムの代わりにチタンを用いると、Ti0.5Sc0.5Fe2–H2系で最初の疑似二元系金属間化合物の水素化物を合成できるようになりました。注目すべきは、Ti0.8Sc0.2Fe2が最大2500気圧、223 Kでも水素を吸収しないのに対して、Ti0.5Sc0.5Fe2と水素との反応は、予備活性化を行わなくても室温、100気圧ですでに始まることです(図7)。水素化物の水素含量は、Ti0.5Sc0.5Fe2H3.1(2.0質量%)に相当します。

10

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10000

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333 K des

295 K des

273 K des

P(H2) (atm)

H/Ti0.5Sc0.5Fe2

図7. Ti0.5Sc0.5Fe2–H2系の脱離等温線

この材料の室温での平衡吸収および脱離圧力は、それぞれ195気圧および175気圧です。水素化した材料を223 K未満に冷却しても、新たな水素化物相転移は起こりませんでした。217 K、2700気圧での水素含量は3.4 H/f.u.(2.16質量%)、熱力学的パラメーターの計算値は、ΔH(kJ/moleH2)= 17.7(2)およびΔS (J/K· moleH2)= 103.8(7)でした。

結論本研究では、水素とAB5型およびAB2型の多成分系金属間化合物との相互作用を調査しました。大容量水素貯蔵用途に用いることのできる可能性を持ったいくつかの新しい金属間化合物の水素化物を特定し、ガス体積分析法を用いて十分な特性評価を行いました。

謝辞本研究の一部は、ゼネラルモーターズ社の支援を受けました。

参考文献:

(1) Libowitz G. G.; Hayes H. F.; Gibb T. R. P. J. Phys. Chem. 1958, 62, 76. (2) Zijlstra H.; Westendorp F. F. Solid State Comm. 1969, 7, 857. (3) van Vucht J. H. N.; Kuijpers F. A.; Bruning H. C. A. M. Philips Research Reports 1970, 25, 133. (4) Pebler A.; Gulbransen. E. A. Trans. Met. Soc. AIME 1967, 239, 1593. (5) Hemmes H.; Driessen A.; Griessen R. J. Phys. C 1986, 19, 3571. (6) Lakner J. F.; Uribe F.; Steweard S. A. J. Less-Common Met. 1980, 72, 87. (7) Takeshita T.; Gschneidner K. A. Jr.; Thome D. K.; McMasters O. D. Physical Review B 1980. 21, 5636. (8) Takeshita T.; Wallace W. E.; Craig R. S. Inorg. Chem. 1974, 13, 2282. (9) Sarynin V. K.; Burnasheva V. V.; Semenenko K. N. Izvestiya AN SSSR, Metally, 1977, 4, 69. (10) Takeshita T.; Gschneidner K. A. Jr.; Lakner J. F. J. Less-Common Met. 1981, 78, 43. (11) Anderson J. L.; Wallace T. C.; Bowman A. L.; Radosewich C. L.; Courtney M. L. Los Alamos Rep.LA-5320-MS, Informal Report, 1973. (12) Filipek S. M.; Jacob I.; Paul-Boncour V.; Percheron-Guegan A.; Marchuk I.; Mogilyanski D.; Pielaszek J. Polish Journal of Chemistry 2001, 75, 1921. (13) Filipek S. M.; Paul-Boncour V.; Percheron-Guegan A.; Jacob I.; Marchuk I.; Dorogova M.; Hirata T.; Kaszkur Z. J. Phys.: Condens. Matter. 2002, 14, 11261. (14) Paul-Boncour V.; Bouree-Vigneron F.; Filipek S. M.; Marchuk I.; Jacob I.; Percheron-Guegan A. J. Alloys Compds. 2003, 356–357, 69. (15) Semenenko K. N.; Sirotina R. A.; Savchenkova A. P.; Burnasheva V. V.; Lototskii M. V.; Fokina E. E.; Troitskaya S. L.; Fokin V. N. J. Less-Common Met. 1985, 106, 349. (16) Savchenkova A. P.; Sirotina R. A.; Burnasheva V. V.; Kudryavtseva N. S. Sov. Neorgan. Materialy 1984, 20, 1507.

金属間化合物の水素化物

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13

水素吸蔵合金

名称 化学組成 水素貯蔵容量、重量(%)平衡

圧力平坦域 製品番号

Zirconium-Iron Alloy ZeFe2 1.65–1.75(25 °C, 1800 bar)

~690 bar (23 °C) absorption~325 bar (23 °C) desorption

693812-1G

Zirconium-Iron Alloy Zr0.8Sc0.2Fe2 1.65–1.75(22 °C, 1560 bar)

~190 bar (20 °C) 693804-1G

Yttrium Nickel Alloy YNi5 1.25–1.3(25 °C, 1890 bar)

~674 bar (20 °C) 693928-5G

Lanthanum Nickel Alloy LaNi5 1.5–1.6 (25 °C) ~2 bar (25 °C) 685933-10G

Lanthanum Nickel Alloy LaNi4.5Co0.5 1.4–1.5 (25 °C) <0.5 bar (25 °C) 685968-10G

Mischmetal Nickel Alloy (Ce, La, Nd, Pr)Ni5 Ce: 48–56%; La: 20–27%;

Nd: 12–20%;Pr : 4–7%

1.5–1.6 (25 °C) ~10 bar (25 °C) 685976-10G

Titanium Manganese Alloy 5800 Ti0.98Zr0.02V0.43Fe0.09Cr0.05Mn1.5 1.6–1.7 (25 °C) ~10 bar (25 °C) 685941-10G

高純度鉄、ニッケル、チタン、およびジルコニウム金属 物理的形状 粒径/寸法 純度(%) 製品番号

Iron (Fe) Chips 99.98 267945

Granules 10–40 mesh 99.999 413054

Rod diam. 6.3 mm 99.98 266213

Powder Reduced ;99.0 44900

Nickel (Ni) Rod diam. 6.35 mm 99.99+ 267074

Powder <150 µm 99.999 266965

<150 µm 99.99 203904

3 µm 99.7 266981

<1 µm 99.8 268283

Titanium (Ti) Crystalline 5–10 mm 99.99+excl. Na and K 305812

Rod diam. 6.35 mm 99.99 347132

Powder –325 mesh 99.98 366994

Zirconium (Zr) Crystal bar, turnings 99.9+ 497428

Sponge ;99.0 267651

Rod diam. 6.35 mm ;99.0 267724

Wire diam. 0.127 mm 99.95 267694

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Li62360, 62358, 248827, 499811, 444456, 265977, 266000, 265993, 320080, 265985, 265969, 220914 278327, 340421, 601535

Be265063, 459992

Na483745, 262714, 282057, 282065, 597821, 244686, 71172

Mg13110, 63037, 13112, 254118, 474754, 465992, 466018, 254126, 368938, 380628 266302, 299405, 403148, 200905

K244856, 244864, 60030, 12621, 679909

Ca441872, 596566, 215147, 327387, 215414, 12001

Sc261246, 261262

Ti267503, 460397, 348791, 348813, 348848, 578347, 268496, 366994, 513415, 347132, 266051, 268526, 348856, 267902, 348864, 460400, 266019

V467286, 266191, 357162, 357170, 266205, 262935, 266175, 262927

Cr 12221, 374849, 255610, 229563, 266264, 266299

Mn 266167, 266159, 266132, 463728

Fe44890, 00631, 12312, 44900, 12311, 267945, 413054, 338141, 356808, 513423, 266213, 266256, 356824, 356832

Rb276332, 385999

Sr441899, 460346, 474746, 403326, 343730

Y451347, 261319, 261327

Zr497428, 267678, 419141, 403296, 267724, 267651, 369470

Nb262781, 262803, 268488, 262749, 262722, 593257, 265489, 262765, 262730

Mo357200, 357219, 266930, 266922, 514802, 357227, 203823, 266892, 366986, 510092, 577987, 266949, 266914, 266906

Tc Ru545023, 209694, 267406

Cs14714, 239240

Ba474711, 441880, 474738, 595101, 403334, 237094

La61451, 263117, 261130, 263109

Hf266795, 356905, 266787, 266752, 266760, 266809, 266779

Ta262889, 357251, 262897, 357243, 262919, 545007, 262846, 593486, 262854, 262862, 357006

W357189, 67546, 357197, 267538, 267511, 357421, 510106, 577294, 276324, 267562, 267554, 356972

Re267317, 267295, 267309, 204188, 267279, 449482, 357138, 267287

Os263257, 327409

アルカリ金属 アルカリ土類金属 遷移金属 典型金属 希土類金属 放射性元素

Ce461210, 261041, 263001

Pr263176

Nd261157, 460877

Pm Sm84433, 261211, 263184, 261203

Eu457965, 261092

Pure Metals from Sigma-Aldrich

u その他製品については、当社Webサイトをご覧ください

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Al13103, 63034, 63045, 63035, 11010, 11009, 424803, 433713, 433705, 518573, 266957, 266574, 326852, 326860, 356859, 326941, 338788, 202576, 266523 u

Co12930, 356891, 266671, 356867, 203076, 266655, 266647, 266639, 266701, 398810

Ni357553, 267007, 268259, 357588, 266965, 203904, 266981, 268283, 577995, 267074, 215775, 267058, 357626, 357634

Cu61139, 61141, 12806, 12816, 326445, 266744, 349151, 349178, 349208, 311405, 203122, 266086, 207780, 326453, 357456, 292583, 634220, 65327, 254177, 326488, 223409, 520381, 349224 u

Zn31653, 14401, 14406, 14409, 14409, 05603, 209988, 349410, 267619, 356018, 565148, 266345, 243469, 243477, 215503, 215481, 266353, 24930, 578002, 267635, 402583, 266361, 267929

Ga203319, 263273, 263265

Ge263230, 203343, 327395, 203351

Rh267376, 357340, 204218

Pd373206, 287474, 348643, 267139, 411450, 267120, 203998, 203939, 464651, 326658, 326666, 346993, 267082, 267112, 348694, 326690, 348708

Ag373249, 327077, 267457, 326976, 348724, 369438, 265543, 265535, 345075, 348716, 326984, 267449, 265527, 326992, 348740, 265519, 03372, 461032, 265500, 327107, 327093, 327085, 484059 u

Cd265411, 265330, 414891, 265365, 265357, 265454, 202886, 385387, 265403, 348600

In57083, 264113, 357278, 326631, 357286, 357294, 264040, 264059, 357308, 326615, 203432, 264032, 277959, 264091, 326607, 357065, 278319, 340863, 357073, 264075, 264067, 357081, 326623

Sn14509, 14507, 14511, 96523, 265659, 265756, 356948, 243434, 265667, 265640, 265632, 520373, 576883, 204692, 217697, 356956

Sb452343, 264830, 266329, 266604

Ir449229, 357332, 266833, 357324, 209686, 266825, 357103, 266841, 336793

Pt373214, 373222, 373230, 349372, 267260, 305189, 349321, 327425, 349348, 327433, 267252, 349380, 349356, 303798, 349364, 267244, 298107, 298093, 204048, 204013, 327441, 327476, 327484 u

Au326542, 373168, 373176, 373184, 265829, 326518, 349240, 326496, 265810, 349259, 349275, 268461, 349267, 326593, 255734, 265772, 326585, 636347, 265837, 289779, 265802, 349291, 349305 u

Hg83359, 83360, 294594, 215457, 261017

Tl277932

Pb265934, 396117, 265918, 356913, 243485, 11502, 369748, 391352, 209708, 265853, 265861, 357014, 265888, 357235, 356921

Bi556130, 202819, 95372, 264008, 265462, 452386, 265470

Gd263087, 261114, 263060

Tb263206

Dy263028, 261076, 263036

Ho457957, 261122

Er263052, 261084, 263044

Tm261289, 263222

Yb262986, 548804, 261300, 466069, 261297

Lu261149

周期表の金属元素欄に記載された番号は弊社製品番号を表しています。

詳細についてはsigma-aldrich.co.jp/aldrich/metalceramicを

ご覧ください。

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Prof. P. K. Rohatgi and B. Schultz

University of Wisconsin–Milwaukee

はじめに従来のようにマトリックスにミクロ規模の補強材を組み込んだ複合材料は、硬さ、引張り強さ、延性、密度、熱伝導度、電気伝導度、耐摩耗性などの材料特性を調整する機会を提供します。ナノ材料の出現によって、金属やミクロ規模の補強材を含んだ複合材料の限界を克服する特性を備えたナノ複合材料が構想され、開発が進められています。たとえば、カーボンナノチューブは、きわめて高い強度と弾性率を示し、電気伝導度異方性を持つことが示されました。カーボンナノチューブをマトリックスに組み込むと、その結果得られるナノ複合材料の特性が大きく改善されることが考えられます 1。

過去10年間、ポリマーマトリックスナノ複合材料の開発に向けて多くの研究が行われ、そのような材料の多くがすでにさまざまな用途に使用されています 2。ナノ粒子やカーボンナノチューブを含む金属複合材料は、固有の高温安定性、高強度、高弾性率、耐摩耗性、金属マトリックスの熱伝導度および電気伝導度を備えているため、ポリマー複合材料と比較して明確な利点を提供できると考えられます。アルミニウムナノ複合材料は、金属マトリックスの強度と剛性が大きいことが主な理由となって、航空宇宙用途で現在高分子系ナノ複合材料や高分子系繊維複合材料を使用して実現している軽量化を上回る軽量化が図れると予測されます(図1)。アルミニウムナノ複合材料は、熱安定性もはるかに優れています。

1

10

100

1000

10000

0.1 1 10 100

Specific Strength (GPa/(g/cc))

Spec

ific

Mo

du

lus

(GPa

/(g

/cc)

)

Al 2219 T87

Ti-6Al-4V

Al2O3

SiC

Diamond

CNT

Al-70% CNT

Polymer-70% CNT

IM7 Carbonfiber reinforcedpolymer

図1. 航空宇宙用途として可能性のある材料および補強材の比較(Al-70% CNTのデータは理論値)

ただし、金属マトリックスナノ複合材料(MMNC)の開発はまだ揺籃期にあります。これまでに合成されたMMNCには、粉末冶金によって調製されたAl-B4C、Mg-SiC、Al-CNT、Cu-CNT、Ti-SiC、凝固プロセスによって調製されたAl-SiC、Mg-SiC、Al-Al2O3、Al-CNT、Mg-Y2O3、Al-ダイヤモンド、Zn-SiCなどがあります。

軽量金属をマトリックスとするナノ複合材料 ̶金属材料の新たな可能性

さまざまな用途にMMNCを使用できる可能性は大きいにもかかわらず、コスト、複雑な形状の大型部品を製造することが困難であること、および延性が低いことが多いために使用が妨げられています。この論文では、金属マトリックスナノ複合材料の最先端技術を、上記の欠点がナノ構造と加工技術における先を見越した設計を通じて克服されつつある状況に特に重点を置いて簡単に紹介します。

金属マトリックスナノ複合材料の合成、プロセス、および特性幅広い用途に向けたMMNCの開発が直面する最大の課題は、ナノ規模の補強材のコスト、および現行の方法を用いてナノ複合材料を合成および加工するコストと複雑さです。ミクロ規模の補強材を含む従来の金属マトリックス複合材料と同様に、MMNCの機械的特性は、補強材の特性、分布、体積分率のほか、補強材とマトリックス間の界面強度に大きく依存します。ナノサイズの粉末およびナノチューブは表面積が大きいため、必然的に凝集して全体的な表面エネルギーが減少する傾向があり、多くの従来的な処理方法では均一な分散を得ることが困難でした。さらに、これらの材料は表面積が大きく表面が優勢な特性を持っているため、金属マトリックス中で反応性が非常に高い場合があります。たとえば、Al/CNT複合材料には、処理中に脆い炭化アルミニウム相が形成されて、ナノ複合材料の機械的特性と導電率が損なわれる懸念があります。このような懸念のため、ナノ材料が均一に分散して悪影響をおよぼす界面反応がほとんどないMMNCを作製するための処理方法の開発が行われています。

金属マトリックスナノ複合材料の合成に使用されてきた方法には、粉末冶金、塑性加工、気相プロセス、凝固処理(場合により)などがあります。粉末冶金には、金属と補強材の粉末混合物の調製に続いて、粉末混合物の圧密と焼結によって部品を形成する工程が含まれます。塑性加工には、金属を高い比率で変形させて金属マトリックス中にナノ構造の粒子を作製する工程が含まれます。化学的気相成長法(CVD)などの気相プロセス法を使用して薄膜を堆積させ、分散した多相ミクロ構造、多層ミクロ構造、または均質なナノ構造コーティングを形成することができます。これらの方法は、いずれも非常に望ましいミクロ構造を形成できますが、規模を拡大して複雑な大型の形状を大量に製造するのは、高コストがかかる上に困難です。

MMNCの合成とプロセスに使用できる加工・処理方法のうち、材料を最低コストで大量生産する方法は凝固処理です。研究者が凝固処理を用いてナノ構造やナノ複合材料を作製してきた方法はさまざまですが、それらは1)急速凝固、2)液体中でナノサイズの補強材混合後に凝固、3)補強材のプリフォームに液体を溶浸してから凝固、という3つのカテゴリーに分類できます。

軽金属マトリックス

ナノ複合材料

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溶融紡糸(液体金属の噴流を銅製紡糸ドラムに吹き付ける)、スプレー噴霧(過熱した液体金属をガス噴射によって霧状にし、基板上に吹き付ける)などの方法を用いた急速凝固(最大104~107 ℃/sの凝固速度を意味する)によってナノサイズの粒子やアモルファス金属が得られ、これから、ナノ複合材料を形成するために加熱するときにアモルファスマトリックス中にナノサイズの補強材を析出させることができます 3,4。混合技法には、粒子状の補強材を添加する方法、および補強材を機械的にマトリックス中で分散させる方法があります。MMNCの合成に適用されてきた混合方法には、攪拌混合があり、これは補強材を含む溶融液を高温インペラーでかき混ぜ、溶融液中に渦を形成します。また超音波混合は、超音波ホーンを使用して溶融液中にキャビテーションを発生させるもので、溶融液中の泡がつぶれて発生する気体の噴流効果によって、粒子状補強材を分散させます。溶浸技法では、補強材を含むプリフォームまたは部分マトリックスに液体金属を溶浸させる必要があります。プリフォームは、何らかの結合剤を用いて特定の形状に成形された粒子からなり、添加物と結合剤だけで構成することも、マトリックスの一部を部分充填材として添加することもできます。使用されてきた溶浸技術には、ナノ粒子の高密度プリフォームに溶浸させるのに使用する圧力が1 GPaを超える超高圧法、および金属ブロックをナノ粒子の低密度プリフォームの上で溶融してプリフォームに浸透させる無圧力溶浸があります 5,6。

図2に、異なるプロセス方法で作成された、アルミニウム合金 -Al2O3ナノ粒子(アルドリッチ製品番号544833)複合材料の異なるミクロ構造の例を示します。図2Aは、筆者らがウィスコンシン大学ミルウォーキー校で合成した鋳造ナノ複合材料で表されるミクロ構造を示します。このMMNCは、撹拌混合と超音波混合を組み合わせ、溶融合金に湿潤剤を添加して金属マトリックスにナノ粒子を組み込む独自の鋳造方法を用いて作製しました。このプロセスによって、ミクロ規模のアルミニウム粒子中にナノ粒子が組み込まれ、バイモーダルなミクロ構造が得られました。粒子をさらに分散させるための溶融液超音波キャビテーションなどの方法によって、セラミックナノ粒子を金属マトリックス中に均一に分散させて、引張り強さおよび耐摩耗性を向上させることができます 7。しかし、必要な構造を繰り返して作製するために、凝固ミクロ構造の形成に対するナノ規模の補強材の影響を、核生成、成長、粒子押し出し、溶質再分布、熱と流体の流れに対するその影響を含めて理解する必要があります。凝固ミクロ構造の形成に対するミクロ規模の粒子の影響はある程度理解されていますが、凝固構造を形成する上でのそれぞれの構成要素に対するナノ規模の補強材の影響を、理論と実験の両面から研究する必要があります。図2Bに、純金属とナノ粉末をボールミル粉砕した後、ホットプレス/焼結によってナノ複合材料を形成して得られたミクロ構造の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示します。マトリックスアルミニウムとAl2O3粉末は、このTEM写真ではナノサイズであり、補強材相は主として粒界によって限定されます。これは粒界のピン止め効果を持つ可能性があります。このプロセスを用いてはるかに高い割合のAl2O3が添加されたため、得られた試料の摩耗特性は大幅に改善しました。

A) B)図2. 液体および固体ベースの方法によって作製されたアルミニウム合金-Al2O3ナノ複合材料のTEM写真。A)筆者らがウィスコンシン大学ミルウォーキー校で作製した撹拌鋳造A206- 2 vol % Al2O3(47 nm)ナノ複合材料 7。B)粉末冶金をベースにしたアルミニウム合金 -15 vol% Al2O3

8

特定の材料特性は、補強材としてわずかな分散ナノ相を添加することによって大幅に改善できます。表1に、MMNCに関する厳選された研究、使用された加工技術、およびそれぞれの特性を示します。金属マトリックス中の補強材をミクロ規模からナノ規模に小さくすると、多くの場合、機械的特性がミクロ規模の補強材を使用した場合に比べて大幅に改善されます。これはおそらく、個々のナノ相補強材自体が極めて優れた特性を持つこと、隣接するナノ粒子間の平均自由行程が短いこと、およびナノ相補強材の表面積が大きいために制約が大きいことによるものです。CNTやSiC(アルドリッチ製品番号594911)のようなナノ相補強材は、同様のミクロ規模の補強材よりはるかに高い強度を持っています。場合によっては、ナノ規模の補強材によってマトリックス自体の特性が変化します。たとえば、ナノ規模の補強材によってマトリックス中にナノサイズの粒子が形成されて、マトリックスの強度が向上します。ナノ材料の特性は、そのサイズによって、ミクロ規模の補強材のばあ場合のようなバルク特性ではなく、表面特性に支配されます。ナノサイズの補強材とマトリックスの間の界面は潜在的に独特であるため、補強材相とマトリックス間の界面が強いこと、および転移強化などの二次的な強化効果によって、その機械的特性がさらに大きく改善される可能性があります。図3は、Al2O3の粒径がミクロサイズからナノサイズになると、アルミニウム複合材料の摩擦係数と摩耗率が大幅に減少することを示しています。さらに、50 nmサイズのAl2O3粒子をアルミニウム合金マトリックスに10体積パーセント組み込むだけで、降伏強さが515 MPaに向上しました 8。これは、ベース合金の15倍、ベース合金に46体積パーセントのAl2O3(大きさ:29ミクロン)を加えたものの6倍、AISI 304ステンレス鋼の1.5倍の強さです。

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表1. 金属マトリックス -ナノ粒子およびナノチューブ複合材料に関する厳選された研究 7

研究グループ プロセス 特性およびコメント

Takagi et al.9 急速凝固ナノ結晶Al合金およびAl/Siナノ複合材料(マトリックス:Al-Ni-Y-Co、Al-Si-Ni-Ce、およびAl-Fe-Ti-Me、ここでMe:Cr、Mo、V、Zr)SiCサイズ:#3000~#8000

473 Kまで高硬度、高強度、および優れた耐摩耗性

El-Eskandarany10 Al-SiC(2~10%)ナノ複合材料の高エネルギーボールミル粉砕およびプラズマ活性化焼結を用いた圧密

ナノ結晶構造を持ちSiCが均一に分布した十分に密なバルクナノ複合材料。界面に反応生成物(Al4C3)またはSiなし。硬さと機械的強度の特性把握。

Hong et al.11 Cu/Nbフィラメントナノ複合材料の塑性加工(引き抜き加工)

10を超える引き抜き歪みにおいて、Nbフィラメントで10 nmの限界厚みが得られた(これ以上変形させると、フィラメントは薄くならずに破断)。延性は、Nb含量には依存せず。

Islamgalievet al.12

高圧ねじり技術によって製造されたCu-0.5wt% Al2O3ナノ複合材料

高 い 引 張 り 強 さ(680 MPa)と微小硬さ(2300 MPa)、および高い熱安定性、クリープ強度、導電率が得られた。

Fekel & Mordike13 30 nm-SiC粒子によって強化されたMg。SiとアセチレンのCO2レーザー誘起反応によって形成されたナノSiC。Arガスを用いたMg溶融液のガス噴霧法によって形成されたミクロンサイズのMg粉末。

加熱ミリングの後、熱間押し出しによって形成された複合材料。未強化Mgと比し2倍の引張り強さ。室温でのUTS増加は、約1.5倍。硬さが大幅に向上。ミル粉砕された複合材料は、最も低いクリープ速度を示した。

Dong et al.14 CNT/Cu複合材料。アセチレンの熱分解によって形成されたCNT。ボールミルを使用してCu粉末と混合したCNT。ボールと粉末の重量比は6:1。350 MPaで5分間プレス。850℃で2時間焼結。

Cu中のCNT留分の増加とともに摩擦係数が減少。CNT含量の増加とともに摩耗減量が低下。荷重の増加とともに、Cu/CよりCu/CNTの摩耗減量が低下。

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Al2O3 Particle Size (nm), 15 vol%

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Al2O3 Particle Size (nm), 15 vol%

図3. Al-15vol% Al2O3金属マトリックス複合材料の摩耗率および摩擦係数に対する粒径の影響。摩耗率と摩擦係数はどちらも、粒径を1 µmより小さくすると大幅に減少します 8。

最近、CNTで強化したアルミニウム合金試料が、無圧力溶浸を用いて合成されました 6。ボールミル粉砕を用いて、CNTをアルミニウムとマグネシウムの粉末を一緒に混合した後プレスしてプリフォームを形成し、続いて窒素雰囲気中でアルミニウム合金マトリックスの溶融液に800℃で溶浸しました。CNTは、マトリックス中に十分分散して埋め込まれていることが観察されました。その後の実験で、このプロセスを用いて最大20体積パーセントのナノチューブをアルミニウム合金のマトリックスに組み込めることが示されました。摩耗データでも、マトリックス中にCNTが存在することによって、アルミニウムマトリックスと鋼製ピンの間の直接接触が減少し、そのためにカーボンナノチューブの存在によって摩擦係数が減少することが示されています。摩擦係数の低減によって、摩擦接触している部品で発生するエネルギー損失が減少し、機械系の効率が改善されます。さらに、チューブの長さが比較的短いCNTを組み込むことによって、接触面間で滑りおよび回転が可能になり、その結果、摩擦係数が減少する可能性があると筆者らは確信します 6。掘り起こし摩耗は、乾式すべり条件下で優勢な摩耗メカニズムのように見えました。掘り起こし摩耗によって生じる摩耗溝の深さは、CNT含有率が増大するとともに減少しましたが、これはナノチューブの強化効果によって、アルミニウム合金 -CNTナノ複合材料の耐摩耗性が向上したことを示しています。

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ナノ複合材料は、超高強度を示しますが、延性を低下させるトレードオフがしばしば存在します。これは、現在用いられている処理方法が空隙や欠陥を形成すること、ナノ構造の粒子または添加物が高率の歪み硬化を維持できないことに起因していると考えられます。他の微小構造による効果の中でも、とりわけこれらの欠点が塑性変形での不安定要因になります。ナノ構造材料に延性がないことを克服するために使用されてきた方法の1つは、バイモーダルまたはトリモーダルのミクロ構造にナノサイズの分散質を組み込むことです。ナノ構造粒子の場合、金属マトリックス中に硬い析出物やナノ粒子が存在することは、転位を開始、引きずり、およびピン止めして動的回復を抑制する作用があり、その結果歪み硬化速度が上って、MMNC内に大きな均一歪みと高い強度とともに高い延性が生じます 15。

MMNC内に妥当な延性と組み合わせてさらに高い強度を実現できる可能性は、E. Laverniaとその共同研究者らによって実証されました 16。5083アルミニウム合金粉末と、粉末状ナノ構造アルミニウム合金でコーティングされたミクロンサイズの炭化ホウ素粒子の混合物が、極低温でミル粉砕されました(極低温粉砕)。次に、この極低温粉砕した粉末を通常の5083合金と混合、圧密、および押し出しを行って、モノリス構造の5083合金のほぼ2倍の強度を持つナノ複合材料が形成されました。ミクロンサイズのB4C補強材を含む葉巻形をした大量のナノ複合材料が、ナノ粒子粒度のアルミニウムマトリックス領域中に分散していることが観察されました。この領域は、B4C補強材を含まないミクロ粒子粒度の5083アルミニウムマトリックス内に組み込まれていました。このバイモーダルおよびトリモーダルのミクロ構造の組み合わせ(図4)が、ミクロンサイズのB4C粒子を補強材として使用したアルミニウムマトリックスナノ複合材料においては例外的に優れた強度と延性の組み合わせが得られる原因であると考えられます。明らかに、補強材を含まないミクロン粒子サイズのアルミニウムマトリックスによって、転位の移動が可能になり延性が改善されました。MMNCでのこの種のバイモーダルおよびトリモーダルなミクロ構造の組み合わせは、複雑な形状を持つ大型部品加工を可能にする、より安価な凝固処理による合成が必要になります。延性が改善された金属マトリックスナノ複合材料製造のために、より低コストかつ汎用性のある方法を探索することにより、これらの材料は、各種用途、特に軽量化が本質的に重要な場合に商業的に実現可能になると期待されます。

図4. 粒子サイズの大きなAlとナノ構造のAlの交互積層を示したTEM顕微鏡写真。B4C粒子が、ナノ構造のアルミニウム中だけに均一に分散しています 16。

現在および将来の用途ミクロンサイズの補強材を含む金属マトリックス複合材料は、自動車や航空宇宙産業だけでなく小型エンジンや電子部品実装用途に使用され、大きな成功を収めてきました。金属マトリックスナノ複合材料の場合、わずか1体積パーセントのナノサイズセラミックを組み込むだけで、アルミニウムおよびマグネシウムベースの複合材料の強度が、ミクロンサイズの添加剤をさらに多量に加えた場合よりはるかに高くなりました。このような改良の可能性は、大幅な軽量化と優れた特性が実現可能なことから、自動車や航空宇宙、およびとりわけ防衛産業にとって大きな意味があります。航空宇宙用途の可能性として、航空機の垂直安定板および民間航空機用ジェットエンジンのファン出口案内翼があります。どちらの部品も、高い剛性と強度、軽量のほか、雨、浮遊小微粒子および雹(ひょう)による浸食に対する耐性が要求されます。自動車産業で使用される部品でバルクナノ複合材料が役立つと考えられるものとしては、高い耐摩耗性と熱伝導率が要求されるブレーキシステムの部品、高いクリープ抵抗性と耐滑り摩耗性が要求される吸気および排気弁、高い耐摩耗性、良好な熱伝導率および低い熱膨張率が要求されるピストンライナーなどがあります。さらに、厳選されたナノ複合材料で実現できるきわめて優れた熱伝導率は、コンピューターの熱管理用に応用されると考えられます。金属マトリックスナノ複合材料は、高い熱伝導率、低密度、およびセラミック基板や半導体と一致する熱膨張率を持たせるように設計できるため、そのような用途に最適な候補になります。

むすび強度と耐摩耗性がきわめて高く、許容できる延性を備えた金属マトリックスナノ複合材料の凝固処理および粉末冶金による製造には、すばらしい可能性があります。しかし、この材料により広い商業的用途が開かれるためには、これらの特性改善をもたらすメカニズムについて基本的な理解を深める必要があります。さらに、これらの材料を大量に低コストで、空隙や欠陥がほとんどまたは全くない状態で、おそらくバイモーダルおよびトリモーダルミクロ構造により延性を向上させて合成する処理方法を開発しなければなりません。金属マトリックスナノ複合材料によって材料とエネルギーが大幅に節約でき、摩擦係数が低く摩耗速度が非常に遅い、極めて強い材料を使用することによって汚染が低減する可能性があります。

参考文献:

(1) Salvetat, J. P.; Andrew, G.; Briggs, D.; Bonard, T. M.; Basca, R. R.; Kulik, A. J. Phys Rev Lett. 1999, 82, 944. (2) Morgan, A. Material Matters 2007, Vol. 2 No. 1, 20. (3) Hassan, S. F.; Gupta, M. J. Alloys Compds. 2007, 429, 176. (4) Cantor, B. J. Metastable Nanocryst. Mater. 1999, 1, 143. (5) Guerlotka, S.; Palosz, B. F.; Swiderska-Sroda, A.; Grzanka, E.; Kalisz, G.; Stelmakh, S. E-MRS 2003. (6) Zhou, S.; Zhang, X.; Ding, Z.; Min, C.; Xu, G.; Zhu, W. Composites: Part A 2007, 38, 301. (7) Rohatgi, P.; Schultz, B.; Gupta, N. Submitted to Int Mater. Rev. 2007. (8) Jun, Q.; Linan, A.; Blau, P. J.; Proc. of STLE/ASME IJTC 2006, 59. (9) Takagi, M.; Ohta, H.; Imura, T.; Kawamura, Y.; Inoue, A. Scripta Mater. 2001, 44, 2145. (10) El-Eskandarany, M. S. J. Alloys Compds. 1998, 279, 263. (11) Hong, S. I.; Chung, J. H.; Kim, H. S. Key Eng Mater. 2000, 183–187, 1207. (12) Islamgaliev, R. K.; Buchgraber, W.; Kolobov, Y. R.; Amirkhanov, N. M.; Sergueeva, A. V.; Ivanov, K. V.; Grabovetskaya, G. P. Mater. Sci. Eng. A 2001, 319–321, 872. (13) Ferkel H.; Mordike, B. L. Mater. Sci. Eng. A 2001, 298, 193. (14) Dong, S. R.; Tu, J. P.; Zhang, X. B. Mater. Sci. Eng. A 2001, 313, 83. (15) Ma, E.; JOM 2006, 58, 49. (16) Ye, J.; Han, B. Q.; Schoenung, J. M. Philos. Mag. Lett. 2006, 86, 721.

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高純度アルミニウム物理的形状 コメント 純度(%) 製品番号

Flakes 1 mm, 200 ppm max. trace metals impurities 99.99 518573-500G

Pellets 3-8 mesh, 10 ppm max. trace metals impurities 99.999 326941-25G

3-8 mesh, 100 ppm max. trace metals impurities 99.99 338788-50G

Rod 3.0 mm × 100 mm 99.999 202576-10G

Wire diam. 1.0 mm, 20 ppm max. trace metals impurities 99.999 266558-10.5G266558-52.5G

diam. 0.58 mm, 100 ppm max. trace metals impurities 99.99 326887-7G326887-35G

Foil thickness 0.5 mm20 ppm max. trace metals impurities

99.999 266574-3.4G266574-13.6G

thickness 0.25 mm 99.999 326852-1.7G326852-6.8G

thickness 0.13 mm 99.99 326860-900MG326860-3.6G

カーボンナノチューブ製品名 外径(nm) 内径(nm) 長さ(mm) 純度(% CNT) 製品番号

Single-wall,Carbo-Lex AP-grade

1.2–1.5 NA 2–05 50–70 519308-250MG519308-1G

Single-wall 1.1 NA .5–100 >50 636797-250MG636797-1G

Double-wall 5 1.3–2.0 0.5 50–80 637351-250MG637351-1G

Multi-wall, Arkema CVD 10–15 2–6 .1–10 >90 677248-5G

Multi-wall 110–170 – 5–9 >90 659258-2G659258-10G

Multi-wall, powdered cylinder cores

– 2–15 1–10 10–40 406074-100MG406074-500MG406074-1G406074-5G

Multi-wall,as produced

6–20 – 1–5 >7.5 412988-100MG412988-500MG412988-2G412988-10G

Graphite, nanofibers 80–200 0.5–10 .5–20 >95 636398-2G636398-10G636398-50G

これらの材料および関連する他の材料について詳細は、sigma-aldrich.co.jp/aldrich/nanoをご覧ください。

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機械的合金化による自己伝播反応

Prof. Laszlo TakacsUniversity of Maryland, Baltimore County

はじめに機械的合金化は、合金化と化学反応に影響を及ぼす「力ずく」の方法です。反応物である粉末と複数のボールの混合物を、高エネルギーボールミル(たとえば、振動ミルまたは遊星ミル、図1)の粉砕ジャーに入れます。ボール間およびボールと容器壁面間の衝突と摩擦によって、変形、破砕、混合、冷間圧接が起こります。欠陥の生成と界面の面積増大によって反応性が高まり、最終的に合金化および/または化学反応が起こります。加熱も溶媒も不要です。生成物は、通常の粉末冶金法で圧密できる粉末です。機械的合金化は非常に柔軟性の高い技術で、分散強化合金、アモルファス合金、ナノ複合材料など、広範囲にわたる材料の調製に使用されてきました 1。高エネルギーボールミル粉砕は、多くの場合他のステップと併用して無機合成、鉱物処理、および構成材料の活性化に使用する場合、メカノケミカル処理とも呼ばれます 2。

(a) (b)

図1. 振動ミル (a)および遊星ミル (b)のミル粉砕容器断面図

機械的に誘発された自己伝播反応(MSR)は、高発熱性粉末混合物中で可能です 3。最初は、他の機械的合金化プロセスと同じように、ミル粉砕によって活性化が起こります。しかし、着火時間と呼ばれる臨界時間に反応速度が増加し始めます。その結果、温度が上昇して反応速度がさらに増大し、最終的に自続プロセスに至ります。反応物は、ほとんどが数秒以内で消費されます。この段階では、反応は熱によって着火する伝播高温合成法(SHS)と類似しています 4。急激な温度上昇がミル粉砕容器外表面で検知可能ですが、検知できることでこのような機械的に誘発された自己伝播反応(MSR)と緩やかなプロセスが区別されます(図2)。MSRは、Fe2O3–Al、Ni–Al、Ti–C、Zn–S、Mo–Siの混合物など、幅広い材料系で生

じる可能性があります 3。着火時間はこのプロセスの重要な属性で、反応およびミル粉砕の条件によって数秒から数時間の範囲で変化することがあります。

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図2. 5 Ni + 2 P混合物をSPEX 8000ミキサーミル内でボールミル粉砕したときの容器外表面の温度。1220秒での急激な温度上昇が着火を示しています。着火前の緩やかな温度上昇は、機械的エネルギーの消費によるものです。

MSRの研究は、メカノケミカルプロセスの全般的な理解に大きく役立ちました。プロセス条件および材料特性による着火時間の変化によって、活性化プロセスのメカニズムを知ることができる一方、部分的に活性化された粉末の詳細な研究によって、臨界状態の性質についての情報が得られます。また、MSRは有用な材料、特に耐熱化合物を製造するための実用的な手段と考えられてきました 3。

自続(自己持続)反応の要件MSR(およびSHS)は、反応伝播のために十分な自己加熱が必要です。自己加熱の尺度は、すべての反応熱が生成物の加熱に使用された場合に、最終温度として定義される断熱温度です。経験則では、断熱温度が少なくとも1800 Kであれば自続反応が可能です。主な問題は反応開始時の自己加熱であり、量ΔH298/C298(ここで、H298およびC298は、298 Kでの反応のエンタルピーおよび比熱)(単にΔH/Cと書かれる)が、断熱温度の簡便な代替としてよく使用されます。ΔH/C > 2000 KがMSRの条件です。この単純な条件が、最も頻繁に研究されている反応の種類、すなわち遷移金属と半金属元素の間の組み合わせ反応(たとえばTi-B、Nb-C、Mo-Si、Ni-P)や、酸化物とさらに反応性の高い金属の間のテルミット型反応(たとえばFe3O4-Al、CuO-Fe、ZnO-Ti)に驚くほどよく当てはまります。カルコゲニドおよび塩化物とのMSRでは、ΔH/Cは、はるかに低い値で十分です。表1に、代表的な反応のデータを示します。

機械的合金化

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表1. 機械的に誘発された自己伝播反応を示す代表的な反応と、対応する反応熱(ΔH)、およびΔHと生成物の熱容量(C)との比率

反応–ΔH / 化学式

(kJ/mol) ΔH/C (K)

3 CuO + 2 Al ⇒ 3 Cu + Al2O3 1190 7810

4 CuO + 3 Fe ⇒ 4 Cu + Fe3O4 461 1850

3 Fe3O4 + 4 Al ⇒ 9 Fe + 4 Al2O3 3376 6222

5 Ni + 2 P ⇒ Ni5P2 436 2867

Sn + 2 S ⇒ SnS2 154 2189

Ti + 2 B ⇒ TiB2 316 7111

Hf + C ⇒ HfC 226 6011

Mo + 2 Si ⇒ MoSi2 132 2055

発熱性の高い反応ほど容易に自続的になるため、断熱温度が高い反応ほど、着火までに必要な活性化時間が短くなると予測されます。そのような関係が実際に存在しますが、これは他の材料パラメーターおよびミル粉砕条件が非常によく似ている場合に限ります。これまでで最も良い相関は、CuO(アルドリッチ製品番号203130、450804、450812)、NiO(アルドリッチ製品番号203882、637130、481793)、Fe3O4(アルドリッチ製品番号310069、518158、637106)、Cu2O(アルドリッチ製品番号208825、566284)、およびZnO(アルドリッチ製品番号204951、255750、544906)の同じ金属(Ti、ZrまたはHf)を用いた還元で観察されています 3。これらは、ミル粉砕によって金属マトリックス中に酸化物粒子の微細分散が生じる延性 -脆性系です 5。ミクロ構造の形成は主として延性を持つ成分によりますが、これは各シリーズを通じて同じです。

活性化期間中に機械的ミル粉砕によって生じる変化、すなわち粒子サイズの減少、混合、および格子欠陥の生成は、主として反応物の機械的特性によって決まります。この関係を定量化することは困難ですが、X線回折線の幅が広がるのは、粉末が着火に近づくにつれて微結晶のサイズが減少し、金属成分に蓄積された格子歪みが増大することを示しています 6,7。粒子サイズを小さくして界面面積を増加させることは、確かに活性化プロセスの重要な要素ですが、物質と熱を効率的に移動させるには凝集も必要です。興味深いケースは、アルミニウム粉末を用いたMoS2(アルドリッチ製品番号234842)の還元です。ΔH/C = 2093 Kは、MSRプロセスが受け入れるしきい値をはるかに超えているにもかかわらず、この反応は緩やかです。しかし、MoS2では凝集が阻止されて活性界面の面積が減少します 8。

ミル粉砕動作の機械的強度は、ミル粉砕用ボール間およびボールと容器壁との間の衝突の回数およびエネルギーによって変わります。一度に投入できる量はボールと粉末の質量比で表されますが、これは特定のエネルギー入力速度にほぼ比例するパラメーターです。一般的なミル粉砕条件では、粉末が臨界量の機械的エネルギーを受けたときに着火が起こり、着火時間はボール対粉末の質量比に反比例します。使用する粉末の量が多すぎると、それぞれの衝突エネルギーが非常に大きな体積に分散して、応力は活性化に十分な大きさになりません。粉末の量が少なすぎると、ミル粉砕器具および大気への熱損失によって、初期の自続反応が消滅します。

機械的に誘発された自己伝播反応の理解機械的合金化の実験はきわめて単純に見えるかも知れませんが、その背後にあるプロセスは長さと時間スケールが大きく異なる構成要素からなる非常に複雑なものです。したがって、メカノケミカル的事象を完全にモデル化するには、ミルの動作、ミル粉砕用ボール間の衝突、ミル粉砕容器内の粉末運搬などの巨視的プロセスを適切に記述する必要があります。微視的なスケールでは、衝突面の間にはさまれた粉末に対するそれぞれの衝突の影響を理解し、格子欠陥の形成および基本的な界面反応を記述しなければなりません。Courtney教授とその学生らによって、緩やかな機械的合金化の一般理論に向けて大きな進歩がもたらされました 9。

MSRの重要な瞬間は着火です。着火時に何が物質の状態を臨界化するかを理解すれば、このMSRについての理解をもとに、他の機械的合金化プロセスの初期段階について知ることができるはずです。残念ながら、細部の多くは系固有であるため、一般的な特徴を明らかにすることは困難です。着火が起きるか起きないかは、組成とミル粉砕条件から大きな影響を受けます。たとえば、図3に2種類のx(Zn+S)+(1–x)(Sn+2S)混合物のX線回折パターンを示します 10。

Zn + S → ZnS

Sn + 2S → SnS2

の組み合わせ反応はいずれも自続性があるため、これは異常な系ですが、0.19 < x < 0.45での2つの混合物のプロセスは緩やかです。図3に示すパターンの組は、下限のすぐ下とすぐ上の2つの試料を表しています。33分間のミル粉砕の後、試料の状態は実際上同じです。x = 0.185の試料では数分後にMSRが起こり、反応は数秒後に実質的に完了します。x = 0.2の粉末では着火は観察されず、33分間近くのミル粉砕でこの試料に化学的変化はほとんどありません。それでも、粉末は緩やかに反応し、ミル粉砕を延長した後は完全な転移が見られます。

10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60

2 u (deg.)

Inte

nsi

ty

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

x = 0.233 min

x = 0.2180 min

x = 0.18533 min

x = 0.18536 min

S

S

*

*

*

**

*

+

+ ++

*

*

図3. 2つのx(Zn+S)+(1–x)(Sn+2S)混合物のX線回折図。Sn(□)、Zn(Δ)、S、SnS(x)、SnS2(*)およびSn2S3(+)の主要な線を示しています。

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23

単純なモデルを用いて、着火温度Tig.7、すなわち加熱したと

き反応が自続化する温度での活性化の程度を記述することができます。ミル粉砕によって着火温度は低下し、衝突するボール間のホットスポットの温度より低くなるように見えます。その瞬間に着火が起こります。このモデルの利点は、加熱曲線の測定と独立して着火温度を求められることです。いくつかの系で、着火温度の劇的な低下が実際に見つかっています(たとえばTi–Si–Cについて見られましたが、Mo–Siなど他の系では見られません)11,12。緩和と酸化がその理由の一部である可能性があります。均一な加熱とボールミル粉砕の際の条件も非常に異なっています。

通常、ミル粉砕された粉末の一部のみがミル粉砕容器内で粉塵として浮遊しています。材料の大部分は、ボールおよび容器内壁の表面を覆う薄膜コーティングを形成します。このコーティングのわずかな部分が、衝突するボールの間で強く圧縮されたときに、被膜中に着火の最初のホットスポットが発生します 9。それが拡大するか消滅するかは小規模なSHSの問題であり、反応熱、局部加熱、および周囲の粉末への熱放散の間のバランスによって決まります。MSRの際立った特徴はミル粉砕器具に対する熱損失が重要なことであり 9、これにより、粉末層が薄い(すなわち容器内の粉末の量が少ない)場合に着火が遅れたり抑制されたりすることがあります。

例および応用反応性金属を用いた金属酸化物の還元は、それに必要な高い断熱温度を持った系の数が多いために、最も広く研究されている種類の反応です。たとえば、鉄を用いたCuOの還元は、MSRを支える十分な発熱性があり 7、酸化鉄とAlやTiのような金属との間の反応も自続的です 3,13。これらの間に多数の組み合わせがあります。したがって、一方の特性が系統的に変化し、他方の特性はほぼ一定に保たれる反応のグループを選択することができます。たとえば、CuO、NiO、Fe3O4、Cu2O、およびZnO(断熱温度の高い順)が、IV B族(5族)金属であるTi(アルドリッチ製品番号268496、366994)、Zr(アルドリッチ製品番号403296)およびHf(アルドリッチ製品番号266752)を用いて還元されました。驚くべきことに、各酸化物の着火時間はZrを用いたときが最短でした。Cu2Oの場合、その違いは2桁以上になります(図4)13。これは、ZrとHfの化学的挙動が非常に異なる数少ない例の一つです。

10000

1000

100

10

1CuO NiO Fe3O4 Cu2O ZnO

Oxide

Ign

itio

n T

ime

(sec

)

TiZr

Hf

図4. Cu、Ni、Fe、およびZnの酸化物と、Ti、Zr、Hf金属の間の機械的に誘発された自己伝播反応の着火時間

元素粉末の混合物からのNiAl形成は、MSRとして進行する金属 -金属反応の例です 14,15。実験条件は、非常に注意深く選択する必要があります。さもないと反応の進行が緩やかになります。ただし、一般に他の金属間化合物の形成は、発熱性が十分でないか、またはミル粉砕器具への効率的な熱放散によって純粋な金属系での着火が抑制されるかのどちらかです。

MSRは、高速、単純、直接的であり、プロセス自体によって発生する熱を利用して高温に達するため、耐熱金属 -半金属化合物を調製するための有望な方法です。主な問題は、生成物が不均一であって自続プロセスの直後に凝集することです。連続的にミル粉砕を行うとこの問題を改善できますが、処理時間が長くなり、ミル粉砕器具からの汚染の可能性が高くなります。MoSi2(アルドリッチ製品番号243647)は、1700℃までの発熱体の主要な材料であるため早くから注目を集めました 6,12。MoとSi間の反応は発熱性があまり高くなく、異なる2つの相のMoSi2が形成される可能性があるため、モリブデンとシリコンをミル粉砕することによって均一な生成物を得ることは困難です。Ti、Zr、およびHfの二元系炭化物であるホウ化物およびケイ化物は、MSRによってはるかに容易に調製できます 13。さらに、Ti3SiC2は、セラミックの高温耐酸化性と通常は金属が持つレベルの延性を併せ持つ、非常に有望な材料です。元素粉末混合物を用いたMSRによって、この化合物の調製に成功しました 16。Ti–Si–C系では複数の相が形成される可能性があるため、希望する単相物質を得るには、プロセスパラメーターを非常に慎重に選択して制御する必要があることに注意すべきです。

金属間化合物に窒素を組み込むことは常に困難です。大気中の窒素を使用し、Nb、Ta(アルドリッチ製品番号262846、545007)またはHfを炭素とともに遊星ミル内でミル粉砕することによって、炭窒化物を調製しました 17。ミル粉砕容器は、ロータリーバルブとフレキシブルチューブを経由して窒素供給源に恒久的に接続されました。組成は、炭素含有率を調整することによって広範囲に制御できました。

MSRとSHSは関連したプロセスであり、どちらも耐熱化合物の調製に利用されてきました。これらを組み合わせて、機械的に活性化されたSHS(MASHS)と呼ばれるプロセスにすることもできます 18。MASHSでは、粉末成分の混合物をボールミル粉砕によって活性化した後、粉末をプレスしてブロックにし、別のステップで熱的に着火させて反応を開始します。機械的活性化によって着火温度が下がり、燃焼プロセスが安定化するため、従来の方法より均一な生成物が得られます。FeSi2を鉄とけい素(アルドリッチ製品番号215619、267414、475238)粉末の混合物から形成することは興味深い例です。

この反応の断熱温度は約1300 Kに過ぎません。したがって、

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gm

a-

al

dr

ic

h.

co

m/

ja

pa

n

24

従来のSHSもMSRのどちらも可能とは考えられません。実際、いずれも観察されませんでした。ただし、MASHSプロセスを使用し、ボールミル粉砕によって適切な機械的活性化を行えば、系内の反応性が高まって別のステップでSHSが可能になります。

結論MSRは機械的合金化が興味深く変化したものであり、ボールミル粉砕によって促進された化学的転移を理解するのに大いに役立ちました。また、これは単独または他の処理技術と組み合わせ、潜在用途への基礎を形成します。特に、これは耐熱材料の調製に有望です。

参考文献:

(1) Suryanarayana, C. Mechanical Alloying and Milling (Marcel Dekker, New York, 2004.) (2) Boldyrev, V. V. Russ. Chem. Rev. 2006, 75, 177. (3) Takacs, L. Prog. Mater. Sci. 2002, 47, 355. (4) Merzhanov, A. G. Combust. Sci. and Tech. 1994, 98, 307. (5) Koch, C. C. Annu. Rev. Mater. Sci. 1989, 19, 121. (6) Ma, E.; Pagán, J.; Cranford, G.; Atzmon, M. J. Mater. Res. 1993, 8, 1836. (7) McCormick, P. G. Mater. Trans., JIM 1995, 36, 161. (8) Takacs, L.; Baláž, P.; Torosyan, A. J. Mater Sci. 2006, 41, 7033. (9) Courtney, T. H. Mater. Trans. JIM 1995, 36, 110. (10) Susol, M. A. Ball Milling Induced Reactions in the Zn-Sn S System MS Thesis 1995. (11) Riley, D. P.; Kisi, E. H.; Phelan, D. J. Eu. Ceram. Soc. 2006, 26, 1051. (12) Takacs, L.; Soika, V.; Baláž, P. Sol. State Ionics 2001, 141–142, 641. (13) Takacs, L. J. Sol. State Chem. 1996, 125, 75–84. (14) Atzmon, M. Phys. Rev. Lett. 1990, 64, 487. (15) Liu, Z. G.; Guo, J. T.; Hu, Z. Q. Mater. Sci. Eng. 1995, A192–193, 577. (16) Li, S.-B.; Zhai, H.-X. J. Am. Ceram. Soc. 2005, 88, 2092. (17) Cordoba, J. M.; Sayagues, M. J.; Alcala, M. D.; Gotor, F. J. J. Am. Ceram. Soc. 2007, 90, 381. (18) Gras, C.; Zink, N.; Bernard, F.; Gaffet, E. Mater. Sci. Eng. A 2007, 456, 270.

バイナリー系金属合金名称 化学組成 コメント 製品番号

Aluminum-nickel alloy Al, 50% Ni, 50%

fl ammable powder 72240-100G72240-500G

Copper-tin alloy Cu/Sn, 90/10 Spherical powder, −200 mesh 520365-1KG

Iron-nickel alloy Fe0.55Ni0.45 Nanopowder, <100 nm particle size (BET), ;97% 677426-5G

Platinum/iridium alloy (70:30) Pt/Ir, 70/30 Wire, diam. 0.5 mm 357383-440MG357383-2.2G

Sodium-lead alloy Pb/Na, 90/10 Chips, chunks, granules 359165-25G

Titanium-copper alloy Cu, 25% Ti, 75%

Powder, 6–12 µm 403385-50G

機械的合金化

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バイナリー金属化合物:炭化物、りん化物、けい化物金属 化学組成 コメント 製品番号

Carbides

Aluminum (Al) C3Al4 Powder, –325 mesh, cubic phase 241873-25G241873-100G

Chromium (Cr) Cr3C2 Powder, –325 mesh 402680-50G402680-250G

Hafnium (Hf) HfC Powder, –325 mesh 399574-5G399574-25G

Powder, <1.25 µm 594636-25G

Niobium (Nb) NiC Powder, 5 µm 343234-25G

Molybdenum (Mo) Mo2C Powder, –325 mesh 399531-50G399531-250G

Silicon (Si) SiC Powder, 200–450 mesh 378097-250G378097-1KG

Powder, –400 mesh, >90% purity 357391-250G357391-1KG

Powder, <100 nm, surface area 70–90 m2/g 594911-100G594911-250G

Tantalum (Ta) TaC Powder, 5 µm 280801-10G

Titanium (Ti) TiC Powder, –325 mesh 307807-100G307807-500G

Powder, <4 µm 594849-25G594849-100G

Powder, 130 nm particle size (spherical) 636967-25G636967-100G636967-250G

Tungsten (W) WC Powder, 10 µm 241881-100G

Zirconium (Zr) ZrC Powder, 5 µm 336351-50G336351-250G

Phosphides

Calcium (Ca) Ca3P2 99% purity 400971-100G400971-500G

Gallium (Ga) GaP 99.99% purity 521574-2G

Nickel (Ni) Ni2P Powder, –100 mesh,98% purity

372641-10G

Indium (In) InP Pieces, 3–20 mesh,99.998% purity

366870-1G

Iron (P2Fe) P2Fe Powder, –40 mesh,99.5% purity

691593-5G

Iron (P3Fe) P3Fe Powder, –40 mesh,99.5% purity

691658-5G

Silicides

Calcium (Ca) CaSi2 Technical grade 21240-250G-F21240-1KG-F

Chromium (Cr) CrSi2 Powder, –230 mesh,99% purity

372692-25G

Magnesium (Mg) Mg2Si Powder, –20 mesh,99% purity

343196-25G

Niobium (Nb) NbSi2 Powder, –325 mesh 399493-10G

Tungsten (W) WSi2 Powder, –325 mesh99% purity

399442-10G

Vanadium (V) VSi2 Powder, –325 mesh 399450-10G

Zirconium (Zr) ZrSi2 Powder, −325 mesh99% purity

399426-50G

機械的合金化

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米国イリノイ州アーバナにある当社製造施設は、各種ハイテク用途向けの無機物および金属の精製に最大の重点を置いています。当社が金属精製分野で持つ能力により、数通りの製法で世界最高純度のアルカリ土類および希土類金属を製造しています。このような技術を使用して、お客様の研究または商業的なご要望に合わせた合金および他の材料を製造することも可能です。

当社独自の技法によって、極微量の金属不純物のみを含む最高4N(99.99%)のバリウム、カルシウム、ストロンチウム、およびマグネシウムを製造することが可能です。また、4Nを超える純度の希土類金属も製造しています。

イノベーションを実現するシグマ アルドリッチ製造の高純度金属金属 コメント 純度(%) 製品番号

Magnesium (Mg) dendritic pieces, purified by distillation 99.998 (metals) 474754-5G

474754-25G

99.99 (metals) 465992-5G

465992-25G

Calcium (Ca) dendritic pieces, purified by distillation 99.99 (metals) 441872-5G

441872-25G

99.9 (metals) 596566-5G

596566-25G

Strontium (Sr) dendritic pieces, purified by distillation 99.99 (metals) 441899-5G

441899-25G

99.9 (metals) 460346-5G

460346-25G

Barium (Ba) dendritic pieces, purified by distillation 99.99 (metals) 474711-5G

474711-25G

99.9 (metals) 441880-5G

441880-25G

Ultra Pure Metals for High Technology Applications

sigma-aldrich.com

ハイテク用超高純度金属

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高純度希土類金属箔金属 サイズ 純度* 製品番号

Lanthanum (La) 25 mm X 25 mm X 1 mm, ~3.9 g Total REM: 99.5%La/Total REM: 99.9%

694908-1EA

Cerium (Ce) 25 mm X 25 mm X 1 mm, ~4.2 g Total REM: 99.5%Ce/Total REM: 99.9%

693766-1EA

Neodymium (Nd) 25 mm X 25 mm X 1 mm, ~4.4 g Total REM: 99.5%Nd/Total REM: 99.9%

693758-1EA

Samarium (Sm) 25 mm X 25 mm X 1 mm, ~4.9 g Total REM: 99.9%Sm/Total REM: 99.95%

693731-1EA

Gadolinium Gd) 25 mm X 25 mm X 1 mm, ~4.8 g Total REM: 99.5%Gd/Total REM: 99.95%

693723-1EA

Terbium (Tb) 25 mm X 25 mm X 1 mm, ~4.9 g Total REM: 99.5%Tb/Total REM: 99.9%

693715-1EA

Dysprosium (Dy) 25 mm X 25 mm X 1 mm, ~5.6 g Total REM: 99.5%Dy/Total REM: 99.9%

693707-1EA

Holmium Foil (Ho) 25 mm X 25 mm X 1 mm, ~5.5 g Total REM: 99.5%Dy/Total REM: 99.9%

693693-1EA

Erbium (Er) 25 mm X 25 mm X 1 mm, ~5.6 g Total REM: 99.5%Dy/Total REM: 99.9%

693685-1EA

Thulium (Tm) 25 mm X 25 mm X 1 mm, ~5.8 g Total REM: 99.5%Dy/Total REM: 99.95%

693677-1EA

Ytterbium (Yb) 25 mm X 25 mm X 1 mm, ~4.4 g Total REM: 99.5%Dy/Total REM: 99.95%

693669-1EA

Lutetium (Lu) 25 mm X 25 mm X 1 mm, ~6.2 g Total REM: 99.5%Dy/Total REM: 99.9%

693650-1EA

Yttrium (Y) 25 mm X 25 mm X 1 mm, ~2.8 g Total REM: 99.5%Dy/Total REM: 99.9%

693642-1EA

*REM:希土類金属

希土類金属箔は、物理気相成長法(PVD)によるコーティングおよび薄膜生成のための熱および電子線による蒸発プロセスに使用されます。低温電子線技術は、燃料電池や太陽電池パネルなどの用途に特に適しています。希土類金属箔は、揮発性の高い成分(Ca、Mgその他)を含む合金および複合材料の調製にも使用することが可能です。

詳細については、sigma-aldrich.co.jp/aldrich/metalceramicをご覧ください。

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既刊特集内容(カッコ内は号数)

●ナノ材料の応用最前線(2-1)●水素貯蔵材料(2-2)●有機エレクトロニクス(2-3)●先端金属および合金(2-4)●3次元ナノおよびマイクロ構造(3-1)●ナノスケール表面改質(3-2)●生体材料(3-3)●代替エネルギー(3-4)

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SAJ1089 2009.4

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